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遠い記憶  作者: 文音
23/23

19

※ 話数とサブタイトルにある話数とがずれております。

 元々の第1話にあたる部分を、一部加筆いたしました。その結果、他の回にくらべ突出して文字数が多くなりましたので、5回(1-①~1-⑤)に分割しております。

・設定に変更はありません。内容も大筋で変更はありません。

 リプエ神――四月の神。性状もその戦いも苛烈なことで知られる戦男神。

 同じ武神でも守護神としての性格が強い十二月の神――戦女神のドノア神とは、その特質において対極にある存在だ。




 ――――あの、温厚そうだったカストルが、猛々しいリプエ神に仕える神殿騎士……?

 ぼんやりと、昔の記憶にある懐かしい騎士の顔を眺める。

 テッドは額に手を当て、一度大きく頭を振った。



 もしかしたら? とは思っていた。

 だが、まさかこんなにあっさり、レニーが認めるとは思わなかった。

(……いつもながら、なにを考えているんだか? こちらの想定外のことをしてくれる)



「それは、きみも、リプエ神殿騎士団にいたということかい?」

 テッドはつとめて平静を装った。

 そのいっぽうで、リーズルが隣に座るレニーに驚愕の眼差しを向けている。


 神殿騎士を捜していたリーズルも、よもやレニーがその神殿騎士である可能性など思いもよらぬことだったのだろう。

 普通に考えて、騎士に叙されるにはまだ若すぎる年齢であるのに加え、あの言葉遣いだ。


(黙っていれば……)

 いや。彼は黙ってしまったほうが、危険なのではないか?

 そんな気がして、テッドはその想像はそこで打ち切ることにした。



「騎士団とは、仕事上のつきあいがあったんだ。俺はリーズルがお捜しの神殿騎士ではないし、こっちへ来てるっていう騎士の話も聞いたことがないから、お前達の話を聞くだけにとどめてたんだが。まさか、ここでカストルの名前が出てくるとはな。こっちの世界も、案外狭いってか……?」

 テーブルに肩肘をついて、レニーは面白そうにテッドの顔を見やる。


「仕事?」

 テッドの問いに、レニーは今度もあっさりと、だが不穏な回答を寄越してきた。

「そ。人様には表立って言えねえ仕事」


 何を連想したのかリーズルがあからさまに嫌悪感を示したのを見て、レニーがわざとらしく困ったような表情をみせる。

「裏の仕事ったって、いろいろあるんだけどな」


(……では、レニーとカストルはその裏の仕事の関係とやらで繋がりがあったのだろうか?)

 テッドの思考は、レニーの次の台詞で中断された。

 

「なぁ、リーズル。お前さんがこっちへ来る前に調べたのって、神殿騎士についてだけじゃないんだろ?」

「……」

「儀式を執行う神殿の関係者なら、こちらへ渡ることになって一度は調べてみたはずだ。こちらへ渡って、戻って来た者がいないのか? その記録が、どこかに残っていはしないかってな」


 テッドが、はっとしてリーズルを見る。

『こちらへ渡って、戻って来た者?』

 その可能性を、テッドも考えてみたことがある。だが、彼のそんな淡い期待は一顧だにされなかった。あちらの世界でも、こちらの世界でも――――。

 確かに、ドノア神殿長を父に持つリーズルなら、記録をたどることが可能だと思われる。

 テッドは今一度湧き上がってきた期待を胸に、リーズルの言葉を待つ。


 リーズルは鬱鬱とした表情で、絞り出すように呟いた。

「そうした記録は、……ありませんでした。少なくとも調べられた範囲では」

 テッドの落胆は大きかったが、レニーはさしたる感慨もない様子だ。


 そこへレニーが待っていた酒が届いた。レニーはすぐには口をつけず、なみなみと注がれた琥珀色の液体を見ている。


「こんな話を知ってるか? かつて神殿騎士団の長たる立場にいた者が、くじに当たった。そいつは身代わりをたてて逃れようとした。そいつもやっぱり過去の記録を調べて、戻って来た者がいないと知っていたんだ」


 リーズルの顔が青ざめる。

「そんな……。そんなことが、できるはずがありません。そんなことをすれば……」


 レニーも一口酒を含んで頷く。

「ああ。そんな目論見は失敗に終わった。身代わりにされた騎士は、こちらへ渡ることができなかったばかりか、死んだんだ。それだけじゃない。神殿に落雷があるわ、天変地異が起こるわ。結局、身代わりをたてたその男も、時をおかずに亡くなった」


 テッドは呆然と、レニーとリーズルを交互に見やった。


「どうもそれから、らしいな。空席が続いてるのは。長は、というより長だけは、どういうわけだか必ずくじに当たるんだそうだ」


 レニーはグラスを口にあてたまま、上目遣いにテッドを見た。


「身代わりをたてたってことは、向こうの世界での『禁忌』を破る行為だった」


 テッドの心臓の鼓動が止まった。

「…………」

 ややあって再び動き始めたとき、その脈打つ音はテッドの耳にうるさいくらいにこだましていた。



 動揺を隠せないでいるテッドの様子を、レニーは淡々と観察したあと。

 こちらも驚きを露わにしているリーズルに、さらなる質問を浴びせる。


「リーズル。お前さんこちらへ来るとき、神殿長からなにか言われたか? お前が神殿騎士を捜してるのって、ドノア神殿の意向を受けてのことなのか?」


「……あなた! あなた、いったいなんなんです? そんなこと。そんなことまで」


「なにって? お前さん達と同じ。くじに当たってこちらへ渡って来た」





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