冒険稼業1
「まぁまぁデカイな……。」
俺は街の中に入るとその大きさと活気に驚いた。
煉瓦のような石造りの家にバザールのような出店の数々、そこにある商品を人が求める。
白人系、黒人系、白人と黒人の間に生まれたのか褐色系のもの、それから数は少ないが獣人やエルフのような亜人種とありとあらゆる人種がそこに集まっていた。
軽く辺りを見渡しながら人混みの中を歩いていく。
歩きながら気付いたが、何処にギルドの拠点があるのかを俺は知らない。
適当な店で訪ねる。
もちろん、商売の邪魔はしないようにだ。
「すみません、ギルドって何処にありますかね?」
「なんだい? ギルドならこの道をまっすぐ進んだところにある大きな建物だよ。 それであんた果物買ってくかい? うちのは甘くて良いものばかりだよ」
質問に答えながらもちゃっかり商売してくるのは恰幅の良いおばさんだった。
「すみません、お金がないのでギルドで登録してお金が入ったらここにまた来ますね。 お姐さん。」
「ハッハッハッ! また来な。 うまいもんあんたなら安く売ってやるから」
俺のお世辞が気に入ったのか笑いながら見送ってくれるおばさん。
それでも商売のことを忘れはしないのはさすがだと少し苦笑いをしながらギルドへ向かった。
ギルドは言われた通りまっすぐ進んだところにあった。
大きさは今まで見てきた家の4倍はあるかと思う。
中に入ると居酒屋のような区画や武器や回復薬区画、日用品が売ってある区画が在り、受付は中央の区画にあった。
どうやら三階まであるようだ。
石造りなのは他の家と一緒だが一部だけとても大きな木が立っている。
どうやらこの木を中心として建物が成り立っているらしい。
俺は迷いなく受付まで進む。
「こんにちは、迷宮都市ロザリアにようこそ!! 本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付の女の子が元気良く挨拶をする。
と言うかさっきの娘の話でここが迷宮都市ロザリアと言う名前なのを今はじめて知った…………。
「あ、あのー……どのような……。」
一人、放心状態でボーッとしていた俺を受付の女の子は心配そうに見つめ、声をかける。
「あっ、いやっ、すみません考え事をしていたものですから。 今日は冒険者になりたくて来たのですが……登録お願いします。」
「はい、冒険者登録ですね? それでしたらこの書類に名前と年齢それと希望する職業を書いて下さい。 書けないのであれば代筆も行えますが……」
質問に答えるといつも近くにあるのか少し古めかしく見える羊皮紙とペン─羽根つきのやつ─が出された。
それにどうやらこの世界の識字率は高くはないらしい。
まぁ、ファンタジーのなかではありきたりだな。
「これで良いですか? 後、質問なんですがどんな職業があるのですか?」
俺は、ささっと紙に名前と年齢を書きながら職業について質問した。
「はい、大丈夫です。 ……で職業ですか? そうですね──」
俺の質問に受付の女の子は一つ一つ説明してくれた。
初めに職業だが選んだものになれるわけではなく肩書きとしてそう書いてあるだけだったりすることも出来るらしい。
例えば、筋肉自慢が魔力の制御もできないのに魔術師を名乗ることも出来る。
大体の人は、自身の得意なものから選んでいくらしいが。
次に職業自体は自分で希望は出すが決めるのは運命神らしい。
大体は希望する職種になるらしいが例外もあるのだそうだ。
これも例を出すと、勇者や英雄とか呼ばれるクラスの力を持つものに対して大幅に変更になるとかだ。
そんなことを聞いて自身の書類に職業も書き受付の女の子に渡す。
「では、内容を確認します。 ヨズルさん、22歳、希望職業 魔法剣士でよろしいですか?」
年齢についてはこの辺りから数えなくなったからここでキープとしてある。
100歳超えとか書いたところで信じられないでしょ?
別に自分がおじいちゃんなのを認めたくないわけじゃないよ?
そんなことを考えながら受付の女の子の言葉に首肯で返す。
「では、ギルドカードを発行するまでの間お待ち下さい。」
受付の女の子が手のひらで示す方向にはテーブルと椅子があり、ここで待っていろと言うことなのだと察し座る。
「ヨズルさん 発行し終えました。 こちらがギルドカードになります。 ヨズルさんは初心者ですのでFランクになります。
10分ほど待っていると終わったようでカードが渡され、冒険者においての説明を簡単に受ける。
ランクはF~SSSのランクである。
Fは初心者Cで一人前Aで猛者Sから上は天才や化物なのだそうだ。
SS辺りからは動く核兵器か何かだと思ってくれたら良い。
すべて話終えると少し息をつく。
「どうしますか? このままクエストをしますか?」
首を少し傾げながら聞く受付の女の子。
か、可愛いっ……!? この時はじめてしっかりと受付の女の子の顔を見た。
髪の色は赤色の混じった茶髪、瞳の色はライトグリーンで目は大きく吸い込まれそうだった。
座っているため分からないが身長は150あるかないか位だと思う。
保護欲を起こさせるような可愛い系の女の子だ。
「いっいや、素材があるから買い取って貰えないかな?」
ふぅ……少し動揺したが何とか平常心に戻すことができた。
「どのようなものか御出し頂けますか?」
受付の女の子がそう言うのでアイテムボックスからグリムパンサーや森で倒したモンスターの素材を出す。
「えっ……?」
受付の女の子の反応が驚愕というものになっている。
マズイ気がする。
「これは前に死んでいたモンスターの素材を村から持ってきただけです。」
「あっ、……そっ、そうですよね!! 私ったらグリムパンサーやタイラントベアーが初心者の方に倒せるわけないですもんね。」
俺の言い訳を信じる受付の女の子。
鑑定してもらうと金貨20枚ほどの額で売れた。
まだ昼過ぎであり、宿を探すには早すぎるためクエストを受けることにする。
「薬草の採取ですね? 資料がありますので必要であれば二階の突き当たりまで進んだ所に資料室がありますのでそこでお確かめください。」
「ありがとうございます。 あっ、……えーとー」
そういえば、名前を聞いていなかったと言うことに気付いた。
「名前を言うのを忘れてました。 ヨズルさんの担当となるエクリアです。」
受付の女の子─エクリア─が名前を名乗った。
「ありがとうございます。エクリアさん。」
そう言いながら、ギルドを出る。
薬草の採取のために今日来た道を戻りながらおばさんのところで果物を買う。
俺は、食べ歩きながら門を出るのだった。
こんにちは七八転です。
冒険出るまでが長いですがこれからちょっとずつ戦闘やらキャラやら追加していこうと思ってますのでよろしくお願いします。