そして、人になる
俺は気付くと意識だけだった。
意識と言っても霊的なものだと思ってほしい。
光る玉のようなものになっているようだった。
周りを見てみると、乳白色の景色しかない。
視界が暗転する前に確認できたことは、どうやら神の力が働いていたということだ。
この世界にはいくつかの神がいる。
どの神も魔力の波長は似通っている。
これは加護持ちの敵が大体同じ波長の魔力を出していたことから想像したことだが……。
だが、今この場所には俺以外いないのか人の姿すらなくまた気配もない。
どうしたものかと頭を悩ませていると突如起こった。
「「「「……裁きをっ!!」」」」
頭のなかに直接響く声に俺を転生させた神の声はなかったことに少し安堵した。
そんなことを思っていると、急激に意識が引き戻される感覚になる。
頭のなかで何が『裁き』なのか教える気もないのかっ!!と複数いたであろう神に心で叫ぶ。
意識が引き戻されるなか、こんなことは日本では許されないんだぞとか法的に裁く場合は相手にも確認してからだろうがなど伝わらないであろう事を考えていく。
少しすると乳白色の景色は真っ暗になり意識が神の間──名前は分からないため勝ってにつけた──から遠退いていくのを感じそれと同時に意識がまた薄れていく。
目が覚める。
辺りは乳白色の景色ではなく、いつも通りの場所である。
灯りは松明の火が少しある薄暗く、四方を石積の壁で囲まれ、霧がたつほど魔力の多い人が20人ほど入れる大きさの部屋がいつも俺のいる場所である。
神の『裁き』という言葉がどういう意味なのかは分からないが自身に異常がないか確認しようと視線自分の体に下げた。
その瞬間感じたのは驚愕の一言につきる。
「……体がある……肉がついてる?」
突然受肉して疑問形になってしまっているがそれほどの衝撃だった。
今自分がどのようになっているかステータス画面を開く。
名無し レベル1
種族 人間
固有能力
・起源捕食
・念話
・成長加速
種族能力
・不死者
・ 不死者の王
・ 剣王 レベル10
・ 剣術 レベル10
・ 賢者 レベル10
・ 魔術 レベル10
etc
どうやら能力自体に変化はないようだ。
所々名前が変わったりしているが効果は前と変わらない。
それに種族能力すら引き継いでいる。
能力引き継ぎでニューゲームしてるみたいな感覚である。
「どう考えてもチートだろ……これ」
考えていたことが口に出る。
能力以外のステータスもほぼ一緒である。
これがチートじゃないわけがない。
精神的に異常がないか何かされていないか能力を使い確かめる。
能力の中に『真実の魔眼』というものがある。
これは自身の身に起きたことを記憶することができ、いつでも見る事ができるという効果がある。
それによると一度魔法を弾いているようだった。
弾いた魔法の効果は、全て0にして種族を変えると言うものだった。
「あー、これだな裁きってのは……」
自分の口から渇いた笑いが出る。
だが、内心では脂汗をかいていた。
種族や力は神によって書き換えが可能であるということに。
ただ、一度は跳ね返せたのだからこれからそこに注意しておけば問題ないかと思考を切り替える。
今はそんなことよりも大事な事がある。
顔が気になるのだ。
だって100年たっても高校生だもん。
思春期真っ只中だったDKだよ?
イケメンかイケメンじゃないかは心の持ちように関わる。
そんなことを考えながら、土魔法で金属片を出し、水魔法で研磨し、光魔法で反射するか確認して簡易な鏡を作る。
作り終えるとすぐに顔まで持っていき確かめる。
「まぁ……なんだ……これ人で通るのか?」
自身の顔を見ると髪の色は闇のような真っ黒、肌の色は病的にというほどではないが白い。
そして、特徴的なのは目だ。
目の色が紅いのである。
形は一般的なものだ。だが、目の色は紅くそして少し暗い。
まるで、ヴァンパイアのような相貌である。
顔自体はブサイクではないと思う。
まぁ、人間とステータスに出ているのだから大丈夫だと思うことにする。
次に考えるのは服装だ。
今の状態はローブを着ているだけである。
すなわち下はなにも履いていない。
これは不味いと今まで来た奴らの服の一部を拝借する。
茶色のブーツを履き黒みがかった茶色のズボンにそれに近い色をしたシャツ、その上から赤黒い革鎧を着て、今まで身に付けていたローブを上着として着た。
下着はさすがに借りる気には慣れずいまだにノーパンのままだが
近くの街まで降りれば何とかなるだろうと部屋を出る。
降りるついでに、自分が今どれだけ動けるかを試すため霧がかった森のなかに入っていくのだった。
こんにちは七八転びです。
週一で書いていきたいですが上手くいきません。
読んでくださっている人には気長に待っていただけると有難いです。
これからチートな主人公にどんどん頑張ってもらいますのでよろしくお願いします。




