私は攻略対象外です。
久しぶりにモブを更新。数年ぶりです。よろしくお願いします。
星宮遥は悩んでいた。
『星をめぐるディスティニー』の主人公である、透がうっとおしいのである。
「ねぇ、葵に夢中な王子に横恋慕なんてやめて俺にしなよ。」
そう言って、対して面識もない私に向かって声をかけてきたのだ。もちろん、遥の方は統括部として彼のことは詳しく知っているんだけれども...。
それからは、王子ルートへと入って行きつつある葵の詰めをする為に行動を起こそうとしているところを邪魔されているのだ。
「なぁ、幼馴染の俺は葵をよく知っているんだ。葵なら王妃としてもやっていけるはずだよ。」
そう言って私に無駄にキラキラした笑顔を向けるのだ、10年以上会ってなかった幼馴染の何がわかるっていうんだろう。本当に邪魔しないでほしい。
『委員長、始さん向かわせますね。』
髪の毛で隠してあるイヤホンから声が聞こえて数秒後、背の高い彼が後ろに立つ気配がする。
「透君、私の婚約者に何か用かな?」
「始さん...」
「桜森せんせ、生徒と不純な交際は先生としてどうかと思うけど?遥ちゃんも同じ学生同士の方がいいよね。」
この男は何を言っているのか理解できない。
『委員長、顔、かお』
慌てて顔を引き締める。思わず呆れた顔が出てたみたい。モブとして役に徹しねば。
「親たちが決めた婚約とは言え、不純交遊とは心外だよ。君と違って私は遥の気持ちを尊重している。教師の身だが、婚約者として君が見過ごせなくてね。」
始先生のナイスアシストに心でグッジョブと送り、この件が片付いたら上司に臨時報酬が出る様申請しておきます。と大変感謝したのだけど、
「そんな遥を僕は助けたいんだ、親達の恋愛に縛られる必要なんてない。」
そう言って、私の両手を握ってくる。
あまりの話の通じない気持ち悪さに手を払い、踵をかえして小走りでその場から私は逃げた。
「僕は君をわかってるから」
そう背中越しに声をかけて来る言葉にぞっとしながら。
風紀委員室兼統括部部室に逃げ込んだ私は、ソファに深いため息とともに座り込む。そんな私に後輩の明がお茶を差し出してくれた。
「遥先輩お疲れ様です。私、あんな男に熱を上げてる妹が見てられないんですが...。」
「ごめんね。私の何がダメだったのか思いつかないけど失態だわ。」
「いや、あれは真性のバカだと思いますけど。」
「ゲームの世界だと思うなら攻略対象外だとわかるでしょう。なのになんであの男は私に寄って来るのかしら。」
その言葉に、ちょうど私の代わりにイベントをこなして教室に戻って来た私の取り巻き1の小夜が、
「ゲームによく似た現実の世界だからキャラクターの心の傷を癒せば対象外でも仲良くなれるか、当時のネットの噂を真に受けて遥先輩が隠れキャラと思われてるかですね。」
そんなことがあったのか、こういう時は自らに前世とやらの記憶が無いのが悔しくてたまらなくなる。
「間違いなく後者ですよ。私今だに、遥先輩がモブだって信じられませんからね。」
俗に言う悪役令嬢枠はモブだと思うんだけど。
「その顔は悪役令嬢はモブでしょって顔をしてますね、遥様。遥様のやってることは悪役からはほど遠いですからね。いつから遥様は悪役令嬢でしたっけ?」
口調は優しいのにどげがっ。
「遥先輩は主人公の好感度のバロメーターになるキャラとか説明うけてましたね。「星ラビ3」も「星デス」両方にいるとか愛されキャラですよね〜。」
明ちゃんたら、なんて優しいのかしら。可愛い後輩は持つべきね。それにしても、小夜ったらひどい。
「遥様、訴えかけても無理ですよ。それにしても例の主人公をどうにかしなければなりませんね。」
そう話し合ってみたものの、あらゆるモブのツテを使って透に出会わない様逃げるしか方法がなく、「私は攻略対象じゃないです〜」と叫びたくなる自らを律しながら、星宮遥はモブ生活をこなしていくのだった。
明「先生と本当に結婚するんですか?」
遥「どうなんでしょうか?私は考えたこともないですわ。」
始「俺は遠慮したい、あの部長が義父とかおそろしすぎる。」
小夜「旦那様にそうお伝えしておきますね。」
始「ひっ」