少しずつ縮まる距離
第4話をお読みいただきありがとうございます。
今回は、美咲と湊の距離が少しだけ近づくお話です。
ゆっくりと進む二人の関係を、モカとノアの姿と一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
翌朝。
目覚まし時計が鳴るより少し早く、美咲は目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、部屋をやさしく照らしている。
時計を見ると、まだ午前五時五十分。
なぜか、すっかり目が冴えていた。
「まだ早いな……」
そうつぶやきながらも、不思議と眠気はない。
昨日、公園で別れるときに思わず口にした言葉が頭をよぎる。
「また会えるかな」
たった一言。
それだけなのに、昨夜は何度も思い返してしまった。
今日も会える保証なんてない。
同じ時間に散歩をしていると言っていたけれど、仕事の都合や予定が変わる日だってあるはずだ。
期待しすぎるのはよくない。
そう思う一方で、心のどこかでは会えることを願っている自分がいた。
美咲は小さく息をつくと、ベッドから起き上がった。
顔を洗い、着替えを済ませてリビングへ向かう。
すると、モカはすでに起きていて、美咲の姿を見るなり勢いよくしっぽを振り、「ワンッ!」と元気よく鳴きながら駆け寄ってきた。
「おはよう、モカ」
頭をやさしく撫でると、モカは嬉しそうに鼻を鳴らす。
「今日もお散歩に行こうか」
その言葉を聞いた瞬間、モカは待ちきれない様子で玄関へ走っていった。
「そんなに急がなくても大丈夫だよ」
思わず笑みがこぼれる。
リードをつける間も、モカは何度も振り返りながら、美咲を急かすようにしっぽを振っていた。
玄関を開けると、ひんやりとした朝の空気が頬をなでる。
美咲はゆっくりと深呼吸をした。
静かな住宅街には、小鳥のさえずりだけが心地よく響いている。
いつもの散歩道を歩く。
昨日と変わらない景色。
それなのに、今日は少しだけ胸が高鳴っていた。
「会えたらいいな……」
無意識につぶやくと、その声に応えるようにモカが「ワン」と短く鳴いた。
「ふふっ。モカも会いたいの?」
美咲が笑いかけると、モカは嬉しそうにしっぽを振った。
やがて公園が見えてくる。
朝日に照らされた芝生には、露がきらきらと輝いていた。
いつものベンチ。
大きな木。
そして――。
「あ、おはようございます」
聞き慣れたやさしい声に、美咲は思わず顔を上げる。
「あ……おはようございます」
そこには、ノアを連れた湊が立っていた。
自然と笑みがこぼれる。
「また会えましたね」
湊が穏やかに微笑む。
「はい。よかったです」
そう答えた途端、美咲は少し照れたように笑った。
「すみません。なんだか変なことを言っちゃいました」
「いえ。実は僕も、今日会えたらいいなって思っていたんです」
「えっ……」
一瞬、時間が止まったような気がした。
胸がどくんと高鳴る。
そんな二人の気持ちなど気にも留めず、モカとノアは嬉しそうに駆け寄り、元気いっぱいにじゃれ合い始めた。
「本当に仲良しですね」
「そうですね。飼い主より仲がいいかもしれません」
その一言に、美咲は思わず笑みをこぼす。
緊張していた空気が、少しずつやわらいでいった。
「今日は少し時間がありますから、一緒に公園を歩きませんか?」
湊が少し遠慮がちに尋ねる。
突然の誘いに驚きながらも、美咲の胸は嬉しさでいっぱいになった。
「ぜひ」
その一言で、二人はゆっくりと歩き始める。
少し前では、モカとノアが仲良く並んで歩いていた。
「モカは何歳なんですか?」
「四歳です。甘えん坊なんですけど、人も犬も大好きなんですよ」
「ノアは三歳です。家では結構やんちゃなんです」
「全然そうは見えません」
「外では少しだけ、いい子を演じてるんですよ」
その言葉に、美咲は思わず吹き出した。
「犬も演技するんですか?」
「たぶん、します」
二人は顔を見合わせ、声を上げて笑う。
自然に笑い合える時間が、美咲にはとても心地よかった。
気がつけば、公園を半周していた。
第4話を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
少しずつ距離を縮めていく美咲と湊、そして仲良しなモカとノアを書いていて、とても楽しかったです。
これから二人の関係がどのように変化していくのか、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
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次回もよろしくお願いいたします!




