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『リードの先に、君がいた。』 ―犬がつないだ、はじめての恋―  作者: 月乃しおり


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3/3

少しずつ縮まる距離

第4話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、美咲と湊の距離が少しだけ近づくお話です。

ゆっくりと進む二人の関係を、モカとノアの姿と一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

翌朝。


目覚まし時計が鳴るより少し早く、美咲は目を覚ました。


カーテンの隙間から差し込む朝日が、部屋をやさしく照らしている。


時計を見ると、まだ午前五時五十分。


なぜか、すっかり目が冴えていた。


「まだ早いな……」


そうつぶやきながらも、不思議と眠気はない。


昨日、公園で別れるときに思わず口にした言葉が頭をよぎる。


「また会えるかな」


たった一言。


それだけなのに、昨夜は何度も思い返してしまった。


今日も会える保証なんてない。


同じ時間に散歩をしていると言っていたけれど、仕事の都合や予定が変わる日だってあるはずだ。


期待しすぎるのはよくない。


そう思う一方で、心のどこかでは会えることを願っている自分がいた。


美咲は小さく息をつくと、ベッドから起き上がった。


顔を洗い、着替えを済ませてリビングへ向かう。


すると、モカはすでに起きていて、美咲の姿を見るなり勢いよくしっぽを振り、「ワンッ!」と元気よく鳴きながら駆け寄ってきた。


「おはよう、モカ」


頭をやさしく撫でると、モカは嬉しそうに鼻を鳴らす。


「今日もお散歩に行こうか」


その言葉を聞いた瞬間、モカは待ちきれない様子で玄関へ走っていった。


「そんなに急がなくても大丈夫だよ」


思わず笑みがこぼれる。


リードをつける間も、モカは何度も振り返りながら、美咲を急かすようにしっぽを振っていた。


玄関を開けると、ひんやりとした朝の空気が頬をなでる。


美咲はゆっくりと深呼吸をした。


静かな住宅街には、小鳥のさえずりだけが心地よく響いている。


いつもの散歩道を歩く。


昨日と変わらない景色。


それなのに、今日は少しだけ胸が高鳴っていた。


「会えたらいいな……」


無意識につぶやくと、その声に応えるようにモカが「ワン」と短く鳴いた。


「ふふっ。モカも会いたいの?」


美咲が笑いかけると、モカは嬉しそうにしっぽを振った。


やがて公園が見えてくる。


朝日に照らされた芝生には、露がきらきらと輝いていた。


いつものベンチ。


大きな木。


そして――。


「あ、おはようございます」


聞き慣れたやさしい声に、美咲は思わず顔を上げる。


「あ……おはようございます」


そこには、ノアを連れた湊が立っていた。


自然と笑みがこぼれる。


「また会えましたね」


湊が穏やかに微笑む。


「はい。よかったです」


そう答えた途端、美咲は少し照れたように笑った。


「すみません。なんだか変なことを言っちゃいました」


「いえ。実は僕も、今日会えたらいいなって思っていたんです」


「えっ……」


一瞬、時間が止まったような気がした。


胸がどくんと高鳴る。


そんな二人の気持ちなど気にも留めず、モカとノアは嬉しそうに駆け寄り、元気いっぱいにじゃれ合い始めた。


「本当に仲良しですね」


「そうですね。飼い主より仲がいいかもしれません」


その一言に、美咲は思わず笑みをこぼす。


緊張していた空気が、少しずつやわらいでいった。


「今日は少し時間がありますから、一緒に公園を歩きませんか?」


湊が少し遠慮がちに尋ねる。


突然の誘いに驚きながらも、美咲の胸は嬉しさでいっぱいになった。


「ぜひ」


その一言で、二人はゆっくりと歩き始める。


少し前では、モカとノアが仲良く並んで歩いていた。


「モカは何歳なんですか?」


「四歳です。甘えん坊なんですけど、人も犬も大好きなんですよ」


「ノアは三歳です。家では結構やんちゃなんです」


「全然そうは見えません」


「外では少しだけ、いい子を演じてるんですよ」


その言葉に、美咲は思わず吹き出した。


「犬も演技するんですか?」


「たぶん、します」


二人は顔を見合わせ、声を上げて笑う。


自然に笑い合える時間が、美咲にはとても心地よかった。


気がつけば、公園を半周していた。

第4話を最後までお読みいただき、ありがとうございました!


少しずつ距離を縮めていく美咲と湊、そして仲良しなモカとノアを書いていて、とても楽しかったです。


これから二人の関係がどのように変化していくのか、温かく見守っていただけたら嬉しいです。


「面白かった」「続きが気になる」と感じていただけましたら、ブックマークや評価、ご感想をいただけると今後の執筆の励みになります。


次回もよろしくお願いいたします!

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