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『リードの先に、君がいた。』 ―犬がつないだ、はじめての恋―  作者: 月乃しおり


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はじめての朝

はじめまして。

『リードの先に、君がいた。』を読んでいただき、ありがとうございます。犬がつないだ、優しくて少しじれったい恋物語です。楽しんでいただけたら嬉しいです。

第1話 はじめての朝


 朝六時。


 目覚まし時計が優しく鳴り、美咲はゆっくりと目を開けた。


「おはよう、モカ」


 ベッドの横では、トイプードルのモカが小さくしっぽを振っている。


 その愛らしい姿を見るだけで、眠気はどこかへ消えてしまう。


「お散歩、行こうか」


 その一言を聞いたモカは、「わんっ」と嬉しそうに鳴き、玄関へ駆け出した。


「そんなに急がなくても大丈夫だよ」


 美咲は笑いながらリードをつける。


 モカは待ちきれない様子で、その場をくるくる回っていた。


 外へ出ると、朝の空気は少しひんやりとしていて心地いい。


 鳥のさえずりが聞こえ、風が木々の葉を優しく揺らしている。


 仕事へ向かう前のこの時間は、美咲にとって一日の中で一番好きな時間だった。


 花屋で働く毎日は忙しい。


 だけど、モカと一緒に歩く朝だけは、何も考えずに笑っていられる。


「今日はいい天気だね」


 モカは嬉しそうに歩き、公園へ向かった。


 公園には色とりどりの花が咲き、朝露をまとった芝生が朝日にきらきらと輝いている。


 美咲は大きく深呼吸をした。


「やっぱり、この公園が好き」


 そのときだった。


 モカが急に立ち止まり、何かを見つけたように耳をぴんと立てる。


「どうしたの?」


 視線の先には、一頭の大きなゴールデン・レトリバー。


 穏やかな表情で歩くその犬の隣には、一人の男性がいた。


 白いシャツに、黒いパンツ。


 爽やかな笑顔が朝日に照らされている。


 モカは嬉しそうにしっぽを振り、その犬へ近づいていく。


「あっ、モカ!」


 慌てて美咲が声をかける。


 けれど、大きな犬は優しくしっぽを振り返し、モカの匂いをそっと嗅いだ。


 二匹はすぐに仲良くなり、楽しそうに並んで歩き始める。


「あはは。気が合うみたいですね」


 男性が優しく笑った。


 その笑顔に、美咲の胸は少しだけ高鳴る。


「すみません。うちの子、人懐っこくて……」


「大丈夫ですよ。ノアも嬉しそうですから」


 男性はゴールデン・レトリバーの頭を優しく撫でた。


「ノアっていうんですね」


「はい。この子はノアです」


 美咲もモカを見つめながら微笑む。


「うちの子はモカです」


「かわいい名前ですね」


 たったそれだけの会話なのに、不思議と心が温かくなった。


「僕は湊です」


 男性が軽く会釈をする。


「私は美咲です」


 二人は目を合わせ、小さく笑った。


 それが、二人のはじめての朝だった。


 そして、この出会いが――。


 美咲の毎日を少しずつ変えていくことを、まだ誰も知らなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

第1話はいかがでしたか?次回は、美咲と湊がもう一度出会います。よろしければ、次回も読みに来ていただけると嬉しいです。

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