友達
剣道というのは、高校生の試合が一番熱い。動きが活発ですからね。ゴツイ!!
見ていてこちらがドキドキハラハラの玉竜旗はいいですね。
やっぱり、剣道は精神にくるものがある。
分かる人にしか分かんないかなぁ(-_-;)
肩を上下させながらゼイゼイ言わせながら膝に手を当て俯いている大男は誰だろうかと俊光は思い出そうとするが全く覚えが無い。
「本当に分からないのですか?」
「ああ、全くわからんな。」
リーナとやり取りしている姿を見ながら、はじめに抱いていた透原俊光という人物に対する評価が薄気味の悪い陰気な奴から案外まともな奴なのかと認識に変わり始めている要とは関係なく、疲れから復活した大男、司朗にはうらやま滅ぶべしのピンク色の景色に耐えられなかった。
「リア充滅ぶべし、玉砕覚悟!!」
周囲にあれだけ彼女募集中と言ってはいるが、告白だけは一回もしたこともされたこともない至って普通の高校生ライフの司朗は暴れ牛を沸騰させるような勢いで要と大政を振りほどき巨体には似合わない速度で俊光に向かって行く。
「透原覚悟ぉぉぉぉおおお!?、お、お、ぉぉぉ、ぐっ!?」
司朗が俊光に当たる直前、俊光がゆっくりとした冷静な動きで司朗の後頭部に力を加減した手刀を入れた。
司朗は、華麗に俊光に避けられたことが分かると後ろに衝撃があり意識が飛びそうになったが、ここでやらねばなんとなるという無駄な根性で耐えきる。
「ほう...」
「だから、やめろって司朗」
感嘆の声を上げる俊光になおも襲い掛かる司朗。要は、それを止めようとして司朗に関節技を極め抑え込む。
「いて、ててててててててててて!!やめろ、やめて!?、折れる、折れますから!?」
「はぁ、だったら一旦落ち着け、でなければ腕をあらぬ方向に曲げるぞ。」
「はは、はいはいはい!!します、しますから!?」
そろそろ自分のペースを崩されて、もう我慢の限界の要は司朗にトーンがオクターブ下がった口調で強硬手段に打って出た。
「ふう、散々な目にあったぜ。」
腕の痛みという意味で我慢の限界になりそうな司朗は痛みと要の脅迫に落ち着き、冷や汗を拭いながら一息つく。
「おい、お前が暴走したのが原因だろ。」
いつになく不機嫌な要はそろそろコイツに世の中の常識というものをキッチリと教えてやろうかと真剣に考えた。
「ところで、あなた方は俊光様にどのようなご用件で?」
話が違う方向に向かいそうになったが、リーナがことの本筋を問う。
瞬間、美少女の声を聞き一人の男が立ち上がる。
「ああ、申し訳ございません麗しの方よ、これも貴女を守るためなのです。」
「はぁ、答えになっておりませんが?」
無駄にかっこつけた司朗にひくリーナに目を向けられた要と大政はイケメンを装う司朗の近くにいることが恥ずかしいと思いながらも、キッチリとフォローをする。
「ええっと、透原くんとは同じクラスで、自己紹介でも暗かったから...」
「そうだ。だから、あんたらと喋っていることが意外だったんだ。」
「それも、この男の人が暴れる原因とは関係ないのですが?」
「いや~、彼、司朗はそれを見てやきもち焼いちゃったんだよ」
話が収束しないことに簡潔に述べろというリーナに大政が思いっきりぶちまけた。
「やきもち、ですか?」
「そうだ。透原があんたら美少女と話してるのが羨ましかったんだコイツは。」
不思議な単語が出てきたことに首をかしげるリーナに要はリーナに無視をされて落ち込んでいる司朗を掴みながら頷いた。
「嫉妬で暴走するとは、醜い。」
「あんた、結構えげつねぇな...。」
リーナの辛辣な言葉に、びくっと司朗は反応をする相当傷ついたようだ。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。服部リーナと申します。」
「......佐藤香織。」
「とう「お前は知ってるよ!!」」
「古谷要だ。」
「火檜大政です、よろしくお願いします。佐藤さん、服部さん、それと透原くんも。」
「......」
「コイツは加藤司朗だ。見ての通り、馬鹿だ。」
「よろしくお願いします、古谷さん、火檜さん、加藤さん。」
話が切り替わり、自己紹介と言う形に。そのことで、さっきまであった少し嫌な雰囲気もなくなった。
そのことに、感化されてか要にしても、大政にしても顔がはれている。どうやら、色々と俊光たちに迷惑をかけてしまっていると当の本人でもないのに気に病んでいたようだ、まぁ確かに初日から些細なことが原因で美少女との関係がギスギスしたものになるというのは嫌なものだが。
「お前たちは、私のクラスメイトだったのか。」
まるでぶち壊すかのような発言をする俊光だが、これは致し方が無い。何故なら彼は遅刻してしまったせいで自己紹介の時にほとんど聞けてないからだ。自業自得ともいえるが。
「ああ、確か透原は遅刻していたからあまり聞けてないかもしれないからしょうがないか。」
「そういえば、透原くん自己紹介の時に、いないと思ったら、いきなり現れてあの時は驚いたな~。」
要の言葉に同調して大政も和らいだ表情で話し出した。どうやら、調子が戻ってきたようだ。
何故か俊光は嫌な感じがした。
「俊光様、遅れた、とはどういうことでしょう?」
ニッコリと笑顔で聞いてくるリーナだが、とてつもなく怒っている感じがする、否、怒っているのだろう。側にいる香織は首を横に振って俊光に諦めてという表情だ顔は笑っているが。
「すまない。」
俊光の潔い返事で高慢な物言いだが、声色には何処か申し訳なさが感じられたリーナは仕方がないとばかりにため息を吐いた。俊光の態度が面白可愛くて笑っていたので本気で怒っていたわけではなさそうだ。
「俊光様、もしかして女性に捕まえられていたんですか?」
「色男。」
冗談を言ってくる二人に困り果てる俊光の姿はとてもクラスの時とは違うと要も大政も思った。
「そうだな、生徒会長には会ったな。」
「え、生徒会長!?、どうしてですか?」
「クラスの場所を教えてもらったんだ。」
俊光は、キスの件で少し悩んでいた生徒会長、雪江のことがとっさに思い浮かんで口に出してしまい失言してしまったが、嘘半分真実半分のことを言いなんとか切り抜けた。
「親切な方なんですね。」
「生徒会長、女性?」
「ああ、女性だ。」
この会話についていけない二人、要と大政はぽつんとして暇だったので、いるはずの司朗がいなくなっているのにいち早く気付いた。
「うお、女かよ!?どんな娘だ、透原、どんな娘。」
俊光に馴れ馴れしく肩を組む司朗は、俊光に生徒会長がどんな人物であるかと言うのをしつこく聞いてきた。存外に俊光も司朗を嫌っていないのかそのまま状態で話す。
「ああ....凛々しい人かな。容姿の話をしているなら美人だな。」
「かぁ、マジか、マジか、お前凄いな、なんでそんなに女運がいいんだよ。妬むのが馬鹿に見えるぜ。」
いっそ清清しい程の開き直りに要は、司朗は司朗だなと至って当然のことを思った。
「確か、学雪江生徒会長でしたっけ?」
大政が俊光に質問気味に話しかけてきた、そろそろ取り残されるような会話の形は嫌なのだろう、少し強引な切り口になってしまった。
「...そうだ、と思う。」
「なんで疑問形なんだよ?」
「....ぼんやりとしか覚えてないからな。」
「人の名前を覚えるのが苦手なんですね。」
自然な形で突っ込みを入れる要も話題に入ってきた。俊光のボケたような態度に滑稽ささえ感じられるほど緊張と言うものが解きほぐれた大政はくすくすと笑っている。
「なんだか、ワタシたちのほうがのけ者にされちゃいなったね。男の子同士の方が良いのかしら?」
「俊光様、楽しそう。」
「あれだけ、目立たない、関わらない、とか思っている人がね。やっぱり、まだ高校生だものね。」
「考えなんて、一時にしか意味をなさない。意志は別にしても。」
リーナと香織はちょっと離れた位置から楽しそうに会話をしている俊光をほほえましく見ながら桜木と竜之介からの手紙を見た。
「俊光は、人嫌いの傾きがある。桜木の者、家族には優しくもなるが、他人になるときわめて冷淡になることが多い。これからは、異国との交流だってある、俊光には執事として立派になってもらいたい。どうか、俊光の人嫌いを少しでもなくしてほしい。か、二人とも本当に俊光様が大切なのね。」
「けど、今見た範囲、俊光様にその様子は無し。」
「そうね。誰とでも普通に喋っているようにも見えるんだけど。あまり、仲よくはしてないわね。」
「キャサリンとは仲良さそう。」
「ははははは...。それ、俊光様には言わない方がいいわよ。」
「分かってる。」
二人には俊光がとても人嫌いと呼ばれるいわれはあまりないように見える。
人嫌いと言うよりも人見知りなのではというのが二人の結論。
彼女たちのこの見解が正しいかどうかは、この学園生活で分かっていくだろう。
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