こうしてギルドに加入した
謎のお嬢ちゃんと手をつないだまま、1件の家に案内される。
昨日行った南門とは反対方向のはずだから、たぶんトレッカースの北の方。
「・・・ここ。」
促されるままに家に入ると、そこには6人の男女が居た。
「おかえり、予言者。」
金髪で羽が生えててクチバシまで生えたメガネの女性がお嬢ちゃんに声をかける。
お嬢ちゃんは予言者っていうのか。
「・・・ただいま。」
お嬢ちゃんは聞こえるかどうかの小さな声で返事をした。
「そいつが8人目か?」
こんどはゴツい蟲人のオッサンが見た目通りの大声をかける。
モチーフは何なんだろう?
「そう。この人が8人目。」
「ふむ、この青年が・・・」
不躾に俺を覗き込んできたのは、スカイヤーの男。
「・・・わたしの予言は外れない。
・・・だから間違いない。
・・・この人が8人目。」
「えっと、訳も分からず連れてこられたんだが
俺に用があるのはアンタ方なのか?」
とりあえず、質問してみる。
代表者なのか、スカイヤーが返事した。
「そうでもあるし、違うとも言える。」
なんだそりゃ。
「君がここに来るのは必然だ。
君はオンリージョブだろう?」
「今のところはそうらしいが、
違うかもしれないぜ?
明日になったら、いや
今、誰かが俺と同じジョブに転職してる最中かもしれない。」
ジョブが何かは言わずに誤魔化す。
が、気づかれたようだ。
「誤魔化さなくていい。
ここに居るのは、皆オンリージョブだ。
あぁ、自己紹介が遅れたね。
吾輩は通称:ドクターだ。
気軽にドクターと呼んでくれたまえ。」
笑いながら竜殺ししてたヤツかよ!?
「じゃあ、俺も。
ジョブは召喚士で通称はない。
昨日始めたばかりのド素人だ。
で、なんでここに連れてこられたのか教えてもらえるよな、ドクター?」
「ふむ。
オンリージョブについて、君はどれくらい知っている?」
「転職条件はよく分からんが、このゲームでたった1人だけのジョブ。
それしか分からん。」
「そう、このハルゼルトの中でたった1人だけの職。
そこなのだよ、まさに。」
過剰な演技のように、天を仰ぐかの如く手を広げてドクターはしゃべりだす。
「吾輩は翔剣士になりたかった。
しかし、前提となる戦士が表示されず、
転職時に提示された職業はドクターのみ。
他の者も同様だ。
たった1人きりゆえ、転職可能なのか、
それとも、最上位職なのか、
それすらも分からず!!」
ドクターが大声を上げる。
「ある日吾輩は偶然、仕立屋と出会った。
当時の仕立屋も自身がオンリージョブということが分からず
転職条件で悩んでいた!!」
黒い肌の女の子が頷く。
「さらに経って、今度は大親分とも出会う機会があった。
そして、吾輩は思った。
オンリージョブとは、各種族の中で1人だけが成れるジョブではないかと!!」
ドクターの話はまだ続く。
「仕立屋、大親分と再会した時、不意に閃いた。
オンリージョブだけが集まった時。
その時こそ、新たな道が開かれるのではないかと!!」
天を仰いでいたドクターがクルリとこっちを向く。
「故に吾輩はオンリージョブの者を集めた。」
他の6人も頷く。
「預言者が、他のプレイヤーを知ることができると知って
吾輩は確信した。
他のオンリージョブを集めること。
それが我々の転職条件であると。
ゲームに意味のないプログラムなどありえない!!」
やっべ、ドクターの目がマジだ。
断ったら瞬殺されるぜ。
「そ、そうか・・・
そういうことなら協力させてもらおう。
俺は職業召喚士。
召喚士と呼んでくれ。」
ドクターが自分をドクターと言い、
他のプレイヤーのこともオンリージョブの名前で呼んでいることから
ここでは、オンリージョブの名で呼ぶのが普通なのだろうと判断する。
「そうか、召喚士の決断に感謝する。
改めて自己紹介しょう。
吾輩はドクター。
それから、君を案内したのが預言者。」
お嬢ちゃんが小さく頷く。
「時計回りに、大親分。」
フォレスターらしき耳が尖った男性が軽く手を振る。
「破壊僧。」
蟲人のオッサン。
「調律師。」
予言者くらいの小さな男性。アイアナーかな?
「仕立屋。」
さっき頷いていた黒い肌の女の子。
「最後に、彼女は編集者。」
最後はメガネの女性。
クチバシは邪魔にならないんだろうか?
「以上7人。召喚士を入れて8人。
これからよろしく頼む。」
そう言って、ドクターが何か操作すると
俺の目の前にウィンドウが開かれる。
<ギルド加入:ピンクボム/ Yes No>
Yesしか触れないよな。
そう思いながら、Yesに触れる。
「これで君も今日から、オンリージョブ専用ギルド:ピンクボムの一員だ。」
「ところで、この名前って・・・」
「不満かね?
預言者が名付け親なのだが。」
「いや、なんでピンクなんだろうと思っただけで、
不満なわけじゃない。」
「メンバーを集めるのに、一番役に立っておるのは彼女だ。
同時に、最大の出資者でもある。
通常であれば、出資者がギルドマスターを務めるものだが
彼女は幼いので、代行として吾輩がギルドマスターを務めておる。
立場だけなら彼女の意向は無視できぬ。
彼女がこの名前が良いと言うので、この名前にした。
ついでに言うなら、この建物も彼女の私物である。」
すげぇ・・・
坊主丸儲けじゃなく、予言者丸儲けかよ。
どうやって儲けたんだ?
「さて、召喚士。
君の武器は本だな?
既に出来ておるぞ。
編集者。」
「はいはい、準備はばっちり。
仕掛けもばっちり。
結構満足した一品よ。
加入祝いだから、お代は不要よ。」
ドクターの声に
1冊の本を手に編集者が近寄ってくる。
<アイテム譲渡:ゆかりん/ Yes No>
どうやら編集者の名前は ゆかりん のようだ。
Yesに触ると、ウィンドウが消える。
「効果は装備してのお楽しみ♪」
早速装備しよう。
「【アイテム・オープン】」
アイテム欄を開いて増えた本を探す。
あった。
召喚士専用の本(攻撃+10/30 全ステータス+30 全属性抵抗+50% 物理ダメージ50%軽減)
ダメージ50%カットに全ステータス+30て、
序盤で手に入れるにはチートだろ・・・
劇的ビフォァーアフター
装備前
名前:ユウ
種族:??? 職業:召喚士Lv8 称号:なし
Lv:13
最大HP:45 最大MP:73
攻撃:物理/魔法:09/10
防御:物理/魔法:10/11
体力:16 魔力:30
腕力:16 知力:16
魅力:16 敏捷:16 残りPP40
↓
装備後
名前:ユウ
種族:??? 職業:召喚士Lv8 称号:なし
Lv:13
最大HP:105 最大MP:133
攻撃:物理/魔法:33/53
防御:物理/魔法:23/24
体力:46 魔力:60
腕力:46 知力:46
魅力:46 敏捷:46 残りPP40
ピンクボムのチートはまだまだ続く・・・