第70話 彼女の継承者 第1話 『光莉の探索』
その問いが、彼女の中にずっと残り続けた。
そして二十二年後、光莉は二十二歳になった。
東京のワンルームマンション。
窓の外には、かつて両親が暮らしたのと同じ種類の夜景が広がっている。無数の光。それぞれの下で誰かが生きている。
彼女は実家の整理で出てきた古いデータストレージを、膝の上に置いていた。母から「捨てていい」と言われたものだ。でも、捨てる前に中身を見てみようと思ったのは、単なる好奇心だった。
そこには、知らない両親がいた。
二十年前のデジタルアーカイブ。
SNSの断片。
匿名アカウントの投稿記録。
そして――母が密かに書き続けていた、誰にも見せなかったノートのデータ。
読めば読むほど、わからなくなる。
父・タクが抱えていた「見られたい」という願望。
母・ヒトミが隠していた「受け入れるふり」の苦しみ。
ジュンという女性が綴っていた「観察」の記録。
コウスケという元夫の、存在感のない影。
これが、私の親?
光莉は混乱した。
困惑した。そして――怖くなった。
知りたい。でも、知りたくない。
わかるべきだ。でも、わかったら終わりだ。
彼女は決断した。
統合社会分析AI「アーカイヴ」にアクセスする。このAIは、過去の全デジタル情報にアクセスし、特定の個人に関する客観的レポートを生成する能力を持つ。プライバシー法制の例外措置として、子孫による「過去の検証」目的での利用が認められている。
震える指で、両親の名前と、見つけた断片的なキーワードをインプットする。
送信。
数秒後、レポートが生成され始めた。




