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第63話 彼女の傍観者―もう一つの視線― 第9話 黒幕幻想
やがて、さらなる出来事が起きた。
純の小説『彼女の計画』が話題になったことは、後輩の口から聞いていた。ヒット作品として雑誌でも取り上げられていた。
純とタッグを組んでいた沙織というイラストレーターの連載が始まったことも、何かの記事で読んだ。
それぞれ、多少の炎上騒ぎもあったようだ。
康介はそれらを見ていて、思った。
「これは、俺が見ていたからだ。」
· 俺が純の鍵アカを見ていなければ、彼女は書き続けなかったかもしれない。
· 俺が「見る」という行為を続けていなければ、この世界はこんな風に回らなかったかもしれない。
彼は自分が「黒幕」であるかのような錯覚に陥り始めた。
でも、それは錯覚だった。
彼は何もしていない。
操作もしていない。
誘導もしていない。
ただ——見ていただけだ。
でも、その「見ていただけ」が、彼を最も深い闇に落とし込んでいた。




