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第112話 彼女の傍観者 ―拓の窓― 第10話 光莉の冊子を読んで

継承の形


光莉の冊子を読んだ。


娘が、俺の「わからない」を、こんなにも深く理解していた。俺は何も説明しなかった。でも、それでよかったんだ。光莉は、自分で考えて、自分で答えを出した。それが、彼女の「継承」だった。


冊子のページをめくるたびに、自分の知らない自分が現れた。純が書いた「拓」。瞳が日記に描いた「拓」。康介が見ていた「拓」。Eがメモに残した「拓」。それぞれの視線が、それぞれの形で俺を形作っていた。それらはどれも正確で、どれも少しずつズレていた。そのズレこそが、俺という人間の輪郭だったのかもしれない。


冊子を閉じる。表紙には、沙織が描いた似顔絵。拓と瞳と光莉。その周りに、かすかに見える影――康介、純、E、沙織自身。彼女たちも、どこかで俺たちを見ていた。見られていたことに気づかないまま、俺はその視線に支えられていた。みんな、それぞれの場所で、それぞれの「見る」を選んだ。俺も、自分の「わからない」を選んだ。それでよかった。今も、そう思っている。


でも――「わからない」と言い続けることが、ゴールじゃない。その先に、何があるのか。それを、考えなければならない。


光莉が教えてくれた。「わからないから考える」ということの大切さを。俺も、考えることをやめてはいけない。「わからない」と言った後で、それでもなお、何を選ぶのか。


拓は、窓の外を見た。都会の夜景が広がっている。無数の光が、それぞれの場所で誰かを照らしている。その光の一つ一つが、誰かの「視線」だった。誰かを見て、誰かに見られる。その連鎖が、この街を作っている。


ふと、思った。


――会いたいな。瞳に。純に。あの場所で。

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