4話 やっぱりここでも買い物
どちらかというと幕間的なあれ?
伏線といった伏線とかはないけど、まあそのうちストーリーに関わるかもしれない話。
魔法のことを考えているうちに寝落ちして、気付けば日付が変わっていた。それに、景色が変わっている。それはもういい景色だ。
「おはようございます、お嬢様」
やっぱりセナの膝で寝るのは心地いいね。それに、目を開けば布越しの太ももの感触に加えて大きな山も見える。それはもう絶景だ。少々妬ましい。
それはそうと、今私はどこにいるのだろう。なんとなく馬車の中というのはわかるけど。
「お嬢様、そろそろ到着ですよ」
到着? そういえば今日からは王都にある別荘で過ごすのか。
あの別荘、パパから話を聞いた限りだとただの豪華な倉庫になっているみたいだが大丈夫だろうか。というか「あったら便利だろ?」なんて言って軽く別荘を建てるなんてさすがは貴族だ。これで好きなものを買いなさいと小銭入れいっぱいの金貨を受け取ったが、あれってもしかしてはした金だったりするのだろうか。貴族の経済事情にはまだ疎いけど、ただとんでもないことは理解した。
「お嬢様、到着しました」
さて、屋敷はどんなものだろうか。
「うわ……」
思わず声が出てしまった。
別荘、というか正直私にはこれがテーマパークのエリアの一つにしか見えない。庭の中にある噴水も、そこで男性がプロポーズしている姿が容易に想像できる。
「いらっしゃいませ、シエラお嬢様」
庭のすごさに唖然としていると、執事らしき渋いおじ様が出迎えに来た。なかなかのイケオジではないか。スーツから拳銃の一丁くらいは出てきそうだ。
「お久しぶりです、グランハイド先生」
「お久しぶりですね、セナ。しかし、私はもう先生ではありません」
「先生だったの?」
「いえいえ、昔の話ですよ」
昔の話か。セナって小さい頃はどんな子だったんだろう。ちょっと聞いてみたいけど、グランハイドも教えてくれないんだろうな。
「さて、それでは部屋までご案内いたします。シエラお嬢様とセナは同室にしてありますが、問題ありませんか?」
「ええ、問題ありません」
「承知いたしました。では、参りましょうか」
やっぱりセナと同室なんだ。まあその方が落ち着くからいいけど。ただ、どうも子ども扱いされているみたいで少し気になる。いやまあ今は六歳だから間違ってはいないけど。
「こちらです」
「おー、なんか高貴な部屋だね」
私の絵画や高そうな置物を取っ払ってシンプルに改造した部屋とは大違いで、まさに貴族の部屋と言った感じだ。というか、ここにあるものって私が邪魔って言ったものでは。
一番目立つ大きな絵画、あれは確か数ヵ月前にパパが記念とか言って描かせたものだ。多少は美化されているだろうが、なかなかにいい出来だ。他にもパパ、ママそしてなぜかセナの絵まである。なんでセナを描いたんだろう。
「ねえセナ、なんでセナの絵があるの?」
「あれはグランハイド先生が描いたものです。先生なった記念にと」
「すごい、絵も描けるんだ……」
まさかグランハイドさん絵も描けるなんて。それも、普通に画家としてやっていけそうなクオリティだし。私の周りはなぜこうもトンデモスペックの人ばかりなのか。
「絵は趣味ですがね、昔から嗜んでいましたので」
「これで、趣味……」
「先生は何でも出来てしまいますからね」
「ははっ、そうでもありませんよ。料理などはセナの足元にも及びませんから」
それはただセナのレベルが高すぎるだけという可能性も。
「まあ確かに人よりは少し、できることは多いですがね」
どうも嫌味に聞こえないというか、不快感が全くない。さすがはイケオジだ。
「さて、それでは私は庭でゆっくりしておりますので、何かあればお呼びください」
「はーい」
少し話したら、グランハイドは庭に休憩しに行った。
これでセナと二人きりになったし、昨日買った服を試着してみよう。
ドレスはいつも通りセナに脱がせてもらう。意外と着るのが大変だからね。
ちなみに、下着はドロワーズのみだ。改めて服を脱いで自分の身体を見ると、やはり小さい。ママはなかなかいい体をしているし、十七にもなればもっと成長しているだろうか。
まあそもそもまだ六歳なんだからこのサイズなのは当たり前だけどね。
さて、ずっと裸でいるのもはしたないしそろそろ着よう。
やっぱりまずはこの世界での可愛いパンツってのを体験してみたい。
デザイン的にはキャラものではなく、高校生とかが履いていそうなものだ。そうそう、こういうのが欲しかった。
「背伸びしたい年頃……ではないですよね」
「違うよ! ただほら、女の子的には可愛いのがいいなってね?」
「しかし、下着など見せる機会なんてないのでは?」
確かにそうだ。私はパンツを見せびらかしながら街を練り歩く変態ではないし、夜押し倒す相手がいあるわけでもない。しかし!
「見えないところのおしゃれも大切なんだよ」
「そういうものなのですか」
「そういうものなの」
まあ私の周りに見せる予定もないのにそこまでこだわっていた子はいなかったけど。ちなみに私自身は可愛いものを身に着けるのは好きだったから普通に下着にもこだわっていた。なお見せたことは一切ない。
そして、可愛い下着を身に着けたら次は服。
「お、これ可愛い」
残念なことに親目線の可愛いにしか思えないが。うーん、やっぱりこの身体でミニスカートは可愛いけどどうも違う気がする。
次、子供向けの魔法のローブ。
魔法のローブといっても見た目だけだが、なかなかかわいい、
「これは……」
………………どう見ても小学校のハロウィンイベントで仮葬している小学生だ。
あれ、もしかして、可愛くても思ったようにならないのでは?
いや、まだ可能性はある。次。
「村娘風ですか、貴族としてはどうかと思いますが、お忍びで出るにはいいかもしれませんね」
なるほど、これはいいかもしれない。少し地味目なディアンドルに似た服なのだが、コスプレ感はあまりない。何ならこのまま村に行っても初めて見た人からすれば村の看板娘にしか見えないだろう。
数十分後、一通りの服を着終えた。どれも可愛いし、いろいろ組み合わせてセルフ着せ替え人形をしたが、なんというか、違った。
村娘風な恰好はしっくり来たけど、他が完全にハロウィンの仮装。
多分もうちょっと成長したからだならこれほどの問題はなかったんだろうけど、この身体じゃあね。まあまだ六歳だもの。
「お嬢様、気が済みましたか?」
「うん、満足。でももうちょっと大人になってからのほうがよかったかなって」
「確かに、どの服も可愛かったですが、お嬢様の考える可愛さとは違いましたね」
セナの言う通り、私の思った可愛さとは違った。けど、パパは喜ぶんだろうなぁ。彼、びっくりするくらい親ばかだし。
忙しいにもかかわらず毎日のように部屋に来ては抱き着いてくるし、嫌ではないけど毎日毎日一緒に風呂に入ろうなんて言ってくるし、ママに怒られたにも関わらずこっそりお小遣いもくれるし。そんなパパに見せたら大変そうだ。
けど、何か交渉するときに使えるかもしれないし、一応そういう時に使うとしよう。あとは……まあ可愛いしたまに着るくらいでいいか。ちょっともったいなかったかも。
パンツ云々とかよくわからなくて調べてるうちに検索履歴が大変なことになった