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天真爛漫おてんば娘は異世界を自由気ままに満喫したい  作者: cvおるたん塩
第二章 アキツ旅行編
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23話 山の長

お久しぶりですわねおほほ

 先の魔族との戦闘から四日、ギルド直々に依頼を受けた私たちは茜山のふもとで探索を始める準備をしていた。

 あの時負傷した人たちもしっかり調子を取り戻し、セナも壮馬も万全の状態だ。前回は戦闘になってしまったが、今度こそ調査としてなるべく戦闘行為は避けたいところだ。

 前回と違って各パーティーで別行動になるので、もし調査対象に遭遇して戦闘になったらどこかのパーティーが壊滅するという事もあり得る。

 準備を終え、私たちは山へと足を踏み入れた。

 しっかりと道は整備されているし、恐らく寄り道しながら歩いて四~五時間程度で山頂にたどり着くだろう。


「登山客の気配はあるけど、他は特にないから安全だと思う」

「じゃあとりあえず今日は登山を楽しむわよ!」

「任務ってこと、忘れないようにな」

「はーい」


 任務とはいえ、魔物がいないのなら気楽に行っても大丈夫だろう。

 登山客がいるくらいならなおさらだ。もし立ち入り禁止エリアがあって、そこに入る時は警戒したほうがよさそうだが、まあ任務だし、人がいたらこの山の鬼のことを聞けばそれでいいだろう。


「でも登山か、五年ぶりだな」

「壮馬、登山したことあるの?」

「ああ、昔な。愛宕山ってとこに上ったんだ」


 愛宕山……どこかで聞いたことがある気がする。しかし、なぜ知っているのか、それだけが記憶から抜け落ちている。


「シエラ?」

「ううん、何でもないわ。さ、行きましょ」

 

 まあ思い出せないものは思い出せないし、気にせず山頂を目指そう。



「そうまー、おんぶー……」

 そしておよそ一時間、たいした情報もなくひたすら山を登り続けて足が痛くなってきた。

「はいはい。ほれ、乗りな」

「勇者、あまりシエラを甘やかさないでくださいね」

「まだ七歳なんだし、これくらいいいだろ?」

「確かにシエラはまだ子供ですが、これから冒険をするのです。これくらいで自分で出来なければやっていけません。休んだらちゃんと自分で歩いてくださいね?」

「はーい」


 セナは基本的には厳しいけど、なんだかんだ言って甘やかしてくれる。

 相馬とセナでバランスが取れているというか、兄と姉というよりはこういう時だけは親のようにも感じてしまう。

 相馬の背中で存分に休憩して、私はまた自分で歩くことにした。

 三十分程度だったが、そこそこ進んだと思う。

 今のところ鬼の気配はなく、近くにいる登山客の和気あいあいとした声と鳥のさえずりくらいしか聞こえない。


「鬼、いる……」


 そんな調子で一時間ほど歩いたところで、ようやくニーナが小鬼らしき気配を察知した。

 しかし、敵意は全くないらしい。


「少し偵察に行ってきます。ここで待っていてください」


 気配のある方に、セナが様子を見に行った。

 鬼の気配がしたのはすぐ近くの様だが、戦闘をしているような音も聞こえないのでおそらく何もなかったか、もしくはセナが瞬殺したか。


「戻りました。確かに小鬼がいましたが、何やら木の実を集めていましたね。私に気付いてもそのまま落ちている木の実を拾っていたので害はないかと」


 そもそも戦闘にすらならなかったらしい。

 それはセナが格上だと思ったから何もしなかったのか、そもそも本当に敵意がなかったのか。

 逃げなかった辺り敵意がない上にこちらを敵として認識していないのだろう。しかし、それならなぜ人里に降りて来て人を襲うのかがわからない。


「私も見に行ってみますね」


 そう言ってアリアもいい、すぐに帰って来た。


「見てください。これを貰いました」

「これは……磨り潰せば調味料になるものですね。たまたま友好的だったということでしょうか?」

「どうでしょう。ほかの鬼も見ないと何とも……」

「ま、とりあえず上がってみようぜ」


 全く警戒していない様子で戦闘を進む相馬について行って、さらに二時間ほど歩いた。

 見事に鬼に襲われることはなく、それどころか調味料になる木の実や果物をいくつか貰って、完全にピクニック気分だ。


「ニーナ、それ一口ちょうだい?」

「はい。美味しいよ」

「はむっ……んぅ~、これすごい甘いわね!」


 リンゴっぽい見た目だが、味はどちらかというと桃っぽい。

 鬼もこういう味が好みなのだろうか。

 進んでいくうちに、ますますわからなくなってきた。

 私とニーナは危ないからと行けなかったが、セナの話だと大型の鬼が昼寝をしていたり、至って平和だったらしい。

 結局そのまま私たちは山頂に到着した。


「な、なんだこよこれ……」


 さっきまでの友好的な鬼が嘘だったかのように、武装した鬼が山頂に居る人々を虐殺している。

 道中見つけた鬼は武装していなかったらしいので、隠していたか、そもそも全くの別の鬼か。

 しかし、今はそんなことを考えている余裕はなさそうだ。


「相馬、行くわよ!」


 剣を抜いて、人を襲う鬼の首を切っていく。

 圧倒的に鬼の数が多いのに魔法で殲滅すれば人を巻き込んでしまうので、どうしても助けきれない。

 目の前でどんどん人が死んでいく。

 何とか抵抗で来ている人もいるが、ほとんどが抵抗する間もなく棍棒で殴られ、刃毀れした剣で切り付けられ悲鳴を上げながら死んでいく。

 正直目を逸らしたい。何ならこの場から離れたい。しかし、これでも私たちは所謂勇者パーティーだ。

 極力早く、制御できる速さで鬼を斬る。

 強化魔法を習得したおかげで、一分かからずこの場にいる鬼は殲滅できたが、私たちが着く前からこの状況だったらしく、助かった人は経ったの五人だった。


「結界が張られてる。けど、全然気づかなかった……」

「誰が仕掛けたかはわかりませんが、どうやら発生源はあの小屋の様ですね」


 アリアが生存者を回復している間に、ニーナとセナとこの辺りの調査をする。

 結界の中心はどうやら少し離れたところにある小屋らしい。

 少し離れたところにあり、もう人が住んでいる気配もないし、

 セナを先頭に、小屋の中を覗いてみる。

 熱い布で窓からの光が遮られているのでよく見えないが、少し香ばしい匂いがする。


「この家、人の気配がないのにいい匂いがする」

「さっき来る途中にもらった木の実を使った料理でしょうか……」


 普段から料理をしてくれているセナは、匂いですぐに気づいたようだ。


「鬼がここに住んでたってこと?」

「拠点にしている可能性はありますね」


 確認しようとセナが魔法で明かりをつけると、中は綺麗に掃除されており、食べかけの肉や誰かが脱いだローブ、鬼が持っていたものとは違ってしっかりと研がれた剣がある。


「ついさっきまで誰かいたようですね」

「あそこにいた鬼じゃないの?」

「鬼に武器を研いだ人料理をするほどの知恵はありません」

「じゃあ——」

「魔族の気配がする……それに、すごい強い気配も。でもこの気配、知ってる気がする……」


 言われて気付いたが、確かにそうだ。

 知っている気配がする。それに、私の中の魔力に似た魔力を持っているような——


「誰じゃ?」


 なんとなく、聞き覚えのある声だ。


「シエラ、さっきの気配の人……すごい強そうな……」


 ニーナの声が震えている。

 普段冷静なセナも、魔法を発動しようとしているあたり相当警戒しているようだ。

 しかし、どうも私には危険な気がしない。


「もしかして、魔族を斬った人?」


 知った気配が誰の物か気付いたのか、ニーナが近づいて小柄な、強い気配を放っているほうの誰かに近づいて聞いた。


「……おお、貴様ら、あの遺跡にいた冒険者か!」

「なっ——」


 もし彼女らがあの魔族を倒した人だとすれば、私たちは確実にここで全滅する。


 今でも敵意がないと信じたいが、正直不安だ。


「生きておったか。ということは、ここに来たのは鬼の調査か何かじゃろう? まさか、こんなところで再開するとはのぅ」


 やはり、敵意はないのか?


「しかし、なぜ子にいるのじゃ? あの鬼と人の死体……まさか貴様らか」

「え、ええ、そうよ」

「そうかそうか。我の鬼が迷惑をかけたようじゃな」

「あなたの鬼……」


 つまり、この少女が親玉で指示をしたということか? しかし、口ぶりからして何か人に危害を加えろと指示をしたわけではなさそうだ。


「そうじゃ。と言っても、勝手に付き従っているだけじゃが」

「とりあえず、そのフードを外して顔を見せてください。顔のわからない相手の言うことなど信じるに値しません」


 警戒はしながらもセナは強気に出ている。


「おっと、そうじゃったな」


 少女と、隣でずっと黙っていた少し背の高いもう一人の誰かはフードを外して顔を見せた。

 今まで喋っていた小柄な少女は赤い髪に鬼のような角を持っている。そして、隣の少し背の高い少女は真っ白な髪に赤い瞳。この特徴は紛れもなく吸血鬼だ。

 ニーナの行っていた魔族の気配というのは、この吸血鬼の少女の事だろう。しかし、どうも他人ではない気がする。


「……その魔族、シエラを助けた人と同じ気配がする」

「……あれは吸血鬼の力でしたか。シエラを助けていただいて、ありがとうございました」


 少女は微笑みながら、首を軽く横に振った。


「すまんな。エリカは喋れないのじゃ」

「そうでしたか。それであの時も……しかし、助けていただいたのは感謝しますが、吸血鬼の血を飲んだということは、シエラが配下になってしまったのでは?」


吸血鬼の少女——エリカは否定するように首を振った。


「眷属の証もないし問題ないじゃろう。まあなっておったらエリカが直してくれるのじゃ」

「そうですか。それは失礼しました。それで、あなたたちはいったい何者なのですか?」

「我はただの鬼人族じゃ。もとはイデアの民であったが、今ではこの山に居座るだけの年よりじゃ。こっちのエリカは吸血鬼で元奴隷じゃ。我の身の回りの世話をしてくれておる」

「では人里に降りてくる鬼は?」

「あれはもとからこの山に住まう鬼じゃな。我の名を使って好き放題して、迷惑なのじゃ」

「あなたの手ではどうしようもないのですか?」

「同族殺しは禁忌じゃからな。しかし、人が殺す分には目を瞑る故、好きにするといい」


 エリカも隣でこくこくと頷いている。

 つまり、長であるアカネは実は無関係で、自称部下の悪鬼が人里で悪さをしているだけ。そういうことだろうか。


「鬼に命令を聞くだけの知恵があればいいのじゃが……」


 アカネもアカネで苦労しているのかもしれない。


「では木の実を集めていた無害な鬼は?」

「あれは知能が発達した上位個体じゃ。無差別に人を襲うこともないし、安全じゃぞ」

「それで……」


 だから敵意がないどころか色々くれたのか。

 となれば、問題は知能が低い鬼だ。


「ま、対策は後にして、今は少し休むのじゃ。食料も余っているし、なにか振舞うぞ」

「いいの⁉」


 昼食が果物だけだったので、ちょうどお腹が空いていたところだ。


「シエラ、もう少し遠慮して……」

「気にするな。迷惑料のようなものじゃ。外の二人も連れて来て、ここでゆっくり休むのじゃ」

「……では、お言葉に甘えさせてもらいます」


 ニーナが相馬とアリアを呼んで、小屋で少し遅めの昼食をとることになった。

 鬼と魔族、人の敵ではあるが、二人とも友好的だったのですぐに仲良くなり、パーティーでも開いているのかというくらいには盛り上がた。

 言葉を発せないエリカも可愛らしい笑顔を浮かべて嬉しそうにしていたし、アカネも酒を飲みながらちょっとしたセリフで大笑いして、本当に楽しそうだ。

 ちなみに私は、ずっと食べることに集中して、その姿をまたアカネに笑われていた。


お久しぶりです(/・ω・)/

あれだけ書いておいてモチベ低下して、その時期に別作品が伸びたのでそっちに集中していましたがこっちも更新再開します!

これからもまた読んでいただけると嬉しいです!

現在4作ほど同時進行で執筆するくらいにはモチベが高いのでガンガン書きますわよ!

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