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Side ディリオン
いつも通りたまっている書類と格闘していると、ふいにコンコンと扉を叩く音が響いた。
「失礼する、先生」
そんな声がして杖で扉を開くとやっぱりそこには次期王と内定している我が教え子であるシリウスかいた。
「こんにちは、どうしたんだい?君がこんな朝早くに訪ねにくるなんて」
「いえ、先生の元へ私の婚約者が訪ねに来る予定でして…」
あぁ、と私は思う。
面倒くさいなぁ…、訪ねに来るのって<黒き白百合>だよねぇ。権力のままにシリウスの婚約者までこぎつけたっていう我が儘令嬢。
今頃になって私に目をつけたのかねぇ?ま、一応この国の英雄だし、こういう令嬢が来ることは覚悟してたけど。この何百年そういう子が来なかったというわけではない。だが…、
私がなにも反応を示さないからか、シリウスは不安気に見つめてきた。
私はにっこりと笑う。
「あぁ、大丈夫だよ。これでもこの国の建国の頃より生きている身だからねぇ」
「すみません、もしもご迷惑をおかけしたら…」
いや、普段は誰にだって寛容な君がユリエス嬢の悪口言っているの知っているぞ?
だからこそ朝早くから私に話に来たのかもしれないが。
そして、本人もできれば会いたくないのだろう。
「まぁ、彼女も何か話したいことがあってわざわざ君にお願いしたんだろう。さすがに彼女も私に無礼をはたらくことは無いと思うさ」
「左様ですか…、」
シリウスは心配そうに目をふせて「では、失礼します」と言って部屋から出ていった。
「はぁ、」
思わずため息が出る。
今代の王は私に仕事をたくさん押し付ける。まぁ、私は有能だからね。仕方ないのだろうけど。
こんな老いぼれに仕事を任せてさー…酷いよね?
仕事が山のようにあるというのに、さらには公爵令嬢で未来の王妃の相手をするなんて。
無下にはできない分、どんな要求をしてくるのか怖い。
本当、面倒くさいなぁ…。
私は再度ため息をもらした。
▪▪▪▪▪▪▪
Side アンリエッタ
みなさーん!待ちに待ったディリオンとの面会日でーす!!いえーい!!!!
なんかテンション高い?ええ、高いでしょうとも!
なんせ、昔の仲間に会えるんだもの。
まぁ、本音を言ってしまうとディリオンが私がアリアだと気づくことができるのか遊んでみるのが目的なんだけれども!
気づくかしらー?
ふふ、本当に楽しみね!
⎯などと考えていると、私を乗せた馬車は王城に着いた。
なんと、ディリオンは今お城に住み込みで働いているらしい。国の英雄で、かなり偉い役職についているそうだ。
さらには今代までの王の教育を行ってきたのだとか。
あら、お世話になったわね。
つまりは、まぁ。ディリオンはこの国でかなり重要な人物だということだ。
私みたいに伝説として、ではなく。
ガタッと揺れて馬車が止まる。
「お嬢様、到着しました」
従者の声が聞こえて扉が開く。
馬車から降りると、
あ…!!!!
目の前には大きな白い城がそびえ立っていた。
(懐かしい。あの頃と変わっていないのね。)
改めて、アリアとしてこの目で城を見たからだろうか、とても懐かしく感じた。
故郷にやっと帰ってきた、そんな気分だ。
魔王との戦いが終わって帰ってきた時とはまた違うドキドキがあった。
そして、ここは私の死に場所。
たくさんの人に囲まれて眠った場所。
変な気持ち。
ディリオンに会いに行こう、私の足は自然と速くなっていった。
▪▪▪▪▪▪▪
「こちらでございます」と、城に勤めるメイドさんにディリオンとの面会室まで案内された。
あれ?ここって昔は第二図書室だったところだわ。内装はリフォームしたのかしら?
この扉の向こうにはディリオンがいる。
実際にそんな状況になるとなんだか不安になってきた。
私は小さく深呼吸をして心を落ち着かせる。
(すー、はー、すー、はー、)
よし!
すると、タイミングよくメイドさんはコンコンと扉を叩いた。
「失礼します、お客様が参られました」
「あぁ、入っていいよ」
部屋の奥から懐かしい声が聞こえてきた。
(ディリオンだわ!懐かしい!!)
私は部屋に入り、一礼する。
顔をあげたらきっとディリオンの懐かしい姿が目に入るのだろう。
ドクドクドク、、、
私は緊張しながらそれでも声をつむぐ。そして、笑顔で顔をあげた。
「お初にお目にかかりますわ。ユリエス公爵家長女のアンリエッタ・ユリエスですわ。」
「はじめまして、ユリエス嬢。私がディリオン、生きる伝説とも呼ばれているね」
と、笑顔で応対してくれるディリオンがいた。
いやー、本当久しぶりね!
ちょっと老けたかしら…?
さぁ、ちょっぴりディリオンをからかってみますかっと。
ブクマいただけたら嬉しいです!
(恋愛要素はもうしばらくお待ちください。)