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JKが神さまとか、幼馴染みが悪魔とか聞いちゃいない。  作者: 双葉
―最終章―神さまと悪魔の真ん中
20/21

ディスク18「蘇る存在」

俺は夢を見ていた。誰かの記憶。誰かの視点。


少年『お前にはちゃんと知って欲しい、またいつになるかわからないけど。連絡する』


少女『うん、わかった』


場所は夕暮れの公園、交通量も多くなる時間。少年は少女の方を見ながら、手を振りながら走る。


そこで映画のようにフィルムが変わる。場面は夏、蝉が泣きうるさい季節。少年は少し成長し身長も少し伸びていた。少年はあの少女を待つために公園のベンチで座っていた。


30分、1時間。そして横断歩道の信号待ちをしていた少女を見つけた少年は待っていられず。走り出す


少年『久しぶりぃ!!』


少年は信号を見ていなかった。まだ歩道側の信号は赤、それを見てなかった結果。


少女『来ちゃダメぇ!!!』


少年『……え?』


クラクションを鳴らしながらブレーキをかけるトラックは止まりきれず。少年は気がつくとコンクリートに叩きつけられ、血だまりが出来ていた。


ドライバー『お、おい!!しっかりしろぉ!?誰か救急車!!救急車呼んでくれぇ!!』


少女は慌てて少年の元へ。


少女『…!!…!!しっかりして!ダメだよ!死んじゃ嫌だ!!』


少女は少年を抱きしめる。少年の血が少女の服や顔に血がついても構わず、必死に呼びかける。周りにも何があったの?とばかりに人が集まる。


少女『やだやだやだやだ!!!死んじゃ嫌だ!!』


少年は息をしていない。あの当たり方だ、即死に違いない。だが少女は受け入れたくなかった。だから――


少女『大丈夫……今助けてあげるからね』


少女は少年の唇にキスをする。すると少女と少年は光に包まれる、しばらくして救急車がやって来て。騒がしく少年は救急車に運ばれていった。




薫「…………夢か、あの女の子。誰なんだろ」


昨日真子には『今は気にしないとか』言ってたような気がするのにな。俺は起き上がり部屋を見渡す。


薫「なんだ、アイツいないのか。」


皐月は部屋には居なかった。あんな夢を見たんだ、気分が悪くなるのも無理はない。でもこれでわかった、俺はあの少女に恋をしていたんだ。なら、尚更誰かを知りたい。


俺は着替えを済ませて、部屋を出た。あの時皐月や黛から聞いた『神や悪魔で、思いが強ければ蘇生はできる。しかし記憶は失う』


薫「魔子か?アイツなら幼なじみだ、当時好きになっていたかもしれない。でも沙玖夜の可能性がある。」


沙玖夜も俺と同い年くらいの少年を蘇生したらしい。だがその少年は亡くなったと行っていた気がする。


薫「皐月は男だから有り得ないだろうな、うん。だけど名前入りのマフラーや傘をアイツは持っている。それに皐月の場合は寒い季節だったはずだ、なぜ皆昔の俺と接点があるんだ?」


魔子は幼なじみだ。皐月や沙玖夜は学園で初めて知り合ったばかりだ、考えれば考えるほどわからなくなる。寮の廊下を歩いていると


魔子「薫、起きたんだね?」


薫「あぁおはよ。なぁ、お前に聞きたいことがあるんだよ。」


俺は思い切って話をしてみる。今日夢を見たことを、そもそも魔子は俺が一度死んだことを知っているんだろうか?構わず話をした


魔子「………薫。少し思い出し始めたんだね」


薫「どういうことだよ?というか、お前知ってるのか!?」


魔子は静かに目をつむる。ゆっくりと話しをする


魔子「ならもう話をしてもいいかな。薫を蘇生したのは、私なの。」


俺はその言葉を聞いて、一瞬真っ白になるが。次の言葉で俺は


魔子「だって、薫別に好きな子がいるって聞いてて。まだ告白もしていないのに死んじゃったら意味ないじゃない。だから私は薫を蘇生する代わりに薫のその時の、事故を起こした年の記憶を消したの」


待て、魔子が蘇生したのはわかった。だが俺が好きな相手はお前じゃなかったのか?


魔子「あの公園で待ち合わせしてたのも、好きな女の子はこの子だって教えてくれるはずだったんだよ?」


なんだか、俺も徐々に思い出し始めた。暑い夏に魔子を呼び出すのと、もう一人女の子を呼び出していたが先に魔子が来た。だがあの後もその女の子は来なかったらしい。


薫「そうだったのか。でも、まだわからないことがある。皐月から聞いた話なんだが、俺は冬に事故を起こしたとか言っていた。マフラーや傘をアイツは持っているみたいなんだ。」


魔子はその話を聞くと目を見開く。


魔子「へ?それは有り得ないよ、だって蘇生してから春先まで薫は目が覚めることはなかったんだよ?」


薫「嫌でも、名前入りって言っていたぞ。俺の」


魔子は急に顔から焦りが出る。


魔子「ほ、他に何か言ってなかった?!薫思い出して!」


俺は目を閉じて、思い出す。皐月があの時話してくれたこと。


皐月『一人ぼっちで、もう寒さで死ぬんじゃないかって。そう思った時に君が来てくれた。まるで神様みたいだった、でも君は事故に合った。救ってくれた君を殺した神様をボクは許さない。』


薫「救ってくれた君を殺した神様をボクは許さない…」


皐月『神は悪魔に取って敵も同然。学園だからって負けたくないのさ。』


薫「神は悪魔に取って敵も同然……ま、待てなんで沙玖夜が……な!?」


頭に当時の記憶が溢れるように蘇る。湧き水が溢れるように。


魔子「薫が好きな女の子って、沙玖夜だったんだよ。留学してて日本に帰ってきてから薫と知り合って、三人でよく遊んだりしてた。」


薫「そうだったのか。でも皐月は冬に事故を起こしたって言っていたぞ。」


魔子「それは皐月くんが見た夢なんじゃないかな。」


薫「夢?なんで夢なのに俺のマフラーや傘を持ってるんだ?」


魔子「悪魔は時に現実に近い夢を見るの。そのマフラーも傘も実物を見たわけじゃないよね?悪魔は人を騙したり、遊んだりするのが昔からあるから。でも今の悪魔は大分変わった、だから皐月くんはたまたま薫という新しい友達を見て。こうあったら良いのにってなったのかも。」


少しずつだがわかってきた。俺は沙玖夜が好きで、魔子に教えるために公園で待っていたが沙玖夜はまだ現れなかった。先に魔子が来たから慌てて魔子の元へ走るが事故を起こし、魔子が蘇生して、運ばれていった。そして沙玖夜は来なかった。この学園に来て皐月は悪魔の本能が働き、俺と遊ぼうとした。


薫「あは、あはは。そうか、そうだったのか。俺が全て皆を引っ張り回していたのかもな。………ごめん」


魔子「何を言ってるの、私はずっと薫の味方!気にしていないよ!」


俺は玄関へ歩き出す。


魔子「どこいくの?!」


薫「決まっているだろう。沙玖夜のとこさ、アイツがずっと待ってたなら、早く行ってやらないと」


魔子「そうだよね、うん。わかったよ……」


薫「俺は神とか悪魔ってのは信じたくないけど、お前みたいな悪魔になら。騙されても良いって思った、じゃあいくわ」


俺は玄関へ走り出した。振り向かずに、ただ走る



魔子「……ばかだなぁ薫は。悪魔はイタズラとか騙したりするけど。大好きだから、イタズラしちゃうんだよ………がんばれ、薫」



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