00 終わりの始まり
「パティエンス。君を愛する事は、もう、ない」
男は目の前の女へ告げた。
男の烟るような青い瞳に、黄金の髪がかかる。
「ディルクルム陛下、理由を伺っても?」
真紅の瞳を見開き、女は白銀の髪を揺らした
「……」
男は俯き応えはない。
「その人形のせいですか?」
男の後ろに瞼を伏せ、音もなく控えるモノに目をやる。
「……そうだ」
「左様でございますか。承知致しました」
絞り出されすように紡がれた声に、女は優雅に屈膝礼を返す。
男は逃げるように退室し、残ったのは風にそよぐ木々の音のみであった。
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【 王国マグノリア縁起】
黒き海を渡り聖なる乙女が指し示すは
雪降るごとく波打つ花の大地
『我等此の地にて栄えん』
初代国王オルトゥス宣誓す
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王国マグノリアは国を失い船で海を渡って来た流浪の民が興した国だ。
聖女ソフィアに神託が降りたこの地を王都とした。
聖女は後に初代国王オルトゥスに娶られ王妃となった。
国王と手を携え、王国民と共に開闢したという。
この国に住まう者ならば貴族、平民問わず子供なら必ず教えられる話だ。
それから千年。
ひと月後に開かれる建国祭は千年目という記念の年。
通年よりはるかに大きな催しが予定されている。
昨年、第六十三代国王クレプスクルムが崩御した。
それ故、新国王ディルクルムの戴冠の儀を合わせて執り行われる。
そんな王都はいつもより気忙しい。
マグノリア王国は温暖で冬の厳しさはさほどでもない。
それでも緑が一斉に芽吹くこの時期は、唯でさえ心を浮き立たせる。
祭りの開催とも相まって、人々の興奮は渦を巻き上昇するかのようだった。




