新キャラ】天才設計者レグルス。命すら「コスト」と断じる少年の前に現れた黒き影
金貨の音。それがこの部屋の唯一の基準。
少年レグルスにとって、世界はすべて「計算式」でできていました。
命の価値、裏切りのリスク、信頼のコスト。
感情を排除し、完璧な直線を描くように利益を積み上げてきた彼にとって、例外は許されない「ノイズ」に過ぎません。
しかし、その静寂な支配領域に、ノックもなく現れたのは――。
「計算、できない」
合理の化身であるレグルスが、初めて目にした「式が成立しない存在」。
ルナリエとの邂逅が、少年の完璧な世界を静かに歪ませ始めます。
金貨が、乾いた音を立てて机に転がった。
その音だけで、部屋の空気が止まる。
重厚な机の向こう側。
少年――レグルスは椅子に浅く腰掛け、並べられた金貨を退屈そうに眺めていた。
「……で?」
軽い声。
目の前の男は、喉を鳴らす。
「そ、その……娘が……さらわれて……助けていただきたく……」
「理由は?」
即答だった。
男は一瞬言葉を失う。
「り、理由って……金なら出します……!」
袋が机に置かれる。
だがレグルスは見もしない。
「足りないね」
「なっ……!?」
「それで動く人、他にもいるでしょ」
金貨を一枚、指で弾く。
カラン、と乾いた音。
「ボクがやる理由、ないよ」
⸻
「人の命ですよ……!?」
男の声が震える。
レグルスはきょとんとした顔をした。
「命ってさ」
金貨を持ち上げる。
「これと、何が違うの?」
「……は?」
「役に立つなら残るし、立たないなら消える」
机に置く。
「それだけでしょ?」
男の顔が歪む。
「ふざけるな……!」
「ふざけてないよ」
あっさりと返す。
「ちゃんと”計算”してる」
男は袋を掴み、荒く扉を開けて出ていった。
重い音が残る。
静寂。
「相変わらずね」
壁際から声がした。
ダークエルフの女――ヴェラが腕を組んでいる。
「助けられた案件だったじゃない」
「そうかもね」
「じゃあなんでやらないの?」
レグルスは机の上の金貨を一枚ずつ揃え始める。
「崩れるから」
「……何が?」
「基準」
顔も上げずに言う。
「一回でも例外を許すと、全部が崩れる」
「今回は娘、次は家族、その次はボクの気分」
「終わらなくなる」
ヴェラは目を細めた。
「誰も信じてないのね」
「必要ない」
即答。
「信頼はコストだよ」
「裏切りのリスクがある」
「だったら最初からいらない」
「最低ね」
「褒めてる?」
⸻
その時。
扉がノックもなく開く。
「レグルス」
入ってきたのは巨体のオーク――ガルドだった。
息が荒い。
「終わったぞ」
「報告」
「相手は全部倒した」
「こっちは三人やられた」
「効率悪いね」
「は?」
ガルドが眉をひそめる。
「仕方ねぇだろ……相手は――」
「言い訳いらない」
即座に遮る。
「次は減らして」
ガルドはしばらく黙った後、ため息をついた。
「……わかったよ」
「お前、ほんと変わらねぇな」
「変える必要ないし」
レグルスは最後の金貨を揃え終える。
完璧な直線。
歪みのない列。
⸻
その時だった。
空気が変わる。
扉の外に、“誰か”が立っている。
「入っていいよ」
扉が静かに開いた。
そこにいたのは――
黒いドレスの女。
赤い瞳。
揺れない視線。
レグルスは初めて、わずかに目を細めた。
「……ふーん」
金貨を見る。
そして、女を見る。
「計算、できない」
ぽつりと呟く。
値段がつけられないのではない。
そもそも、式が成立しない。
「貴様がレグルスか」
女の声は静かだった。
「そうだよ」
「観察していた」
「奴隷領域での構造構築、通貨運用、外出権の設計――全て把握済みだ」
レグルスは少しだけ首を傾げる。
「見てたんだ」
「評価に値する」
間。
「貴様は”設計者”だ」
ヴェラが目を見開く。
ガルドが息を呑む。
レグルスは少し笑った。
「うん、そうだよ」
「だが」
女は一歩踏み出す。
「設計者は、測られる側でもある」
空気が変わる。
レグルスの指が止まる。
「……ボクを?」
「その通りだ」
「どうやって?」
女は静かに答えた。
「不要だ」
「既に答えは出ている」
一拍。
「もう答えは出ている」
レグルスは初めて、少しだけ息を吐いた。
「……変だね」
金貨の列を見る。
完璧だったはずのそれが――
ほんのわずかに、歪んでいる気がした。
「面白い」
小さく呟く。
⸻
それを聞いていたガルドが、ぼそりと漏らす。
「……なんだよ、あの女」
ヴェラは目を細めた。
「厄介な人が来たわね」
だがレグルスは違った。
「いいね」
初めて。
楽しそうに笑った。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
新キャラクター、レグルスが登場しました。
彼は以前の設定にもあった「奴隷領域での構造構築」などを手掛ける、まさに組織の「脳」となるキャラクターです。
ヴェラ(ダークエルフ)やガルド(オーク)といった個性的な配下を従えながらも、誰一人信じていないという徹底した合理主義。
そんな彼が、ルナリエに「貴様は設計者だ」と定義され、逆に「測られる側」に回った瞬間の高揚感……。
完璧だったはずの金貨の列が少しだけ歪んで見える描写に、彼の心の揺れを込めてみました。
「面白い」
そう笑ったレグルスが、ルナリエの陣営にどのような変革をもたらすのか。
そして、ルナリエが彼に下した「答え」とは何なのか。
新生魔王軍のメンバーが着々と揃ってきました!
「レグルスのキャラが好き!」「ルナリエの強者感がたまらない!」という方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします!




