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裏切られた勇者は”剣神”に至る ~魔力ゼロの落伍者が、魔法の世界そのものを斬り裂く~  作者: 青茶とうご
第二部:魔王の娘と新生魔王軍

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新キャラ】天才設計者レグルス。命すら「コスト」と断じる少年の前に現れた黒き影

金貨の音。それがこの部屋の唯一の基準。

少年レグルスにとって、世界はすべて「計算式」でできていました。

命の価値、裏切りのリスク、信頼のコスト。

感情を排除し、完璧な直線を描くように利益を積み上げてきた彼にとって、例外は許されない「ノイズ」に過ぎません。

しかし、その静寂な支配領域に、ノックもなく現れたのは――。

「計算、できない」

合理の化身であるレグルスが、初めて目にした「式が成立しない存在」。

ルナリエとの邂逅が、少年の完璧な世界を静かに歪ませ始めます。

 金貨が、乾いた音を立てて机に転がった。

 その音だけで、部屋の空気が止まる。

 重厚な机の向こう側。

 少年――レグルスは椅子に浅く腰掛け、並べられた金貨を退屈そうに眺めていた。

「……で?」

 軽い声。

 目の前の男は、喉を鳴らす。

「そ、その……娘が……さらわれて……助けていただきたく……」

「理由は?」

 即答だった。

 男は一瞬言葉を失う。

「り、理由って……金なら出します……!」

 袋が机に置かれる。

 だがレグルスは見もしない。

「足りないね」

「なっ……!?」

「それで動く人、他にもいるでしょ」

 金貨を一枚、指で弾く。

 カラン、と乾いた音。

「ボクがやる理由、ないよ」

「人の命ですよ……!?」

 男の声が震える。

 レグルスはきょとんとした顔をした。

「命ってさ」

 金貨を持ち上げる。

「これと、何が違うの?」

「……は?」

「役に立つなら残るし、立たないなら消える」

 机に置く。

「それだけでしょ?」

 男の顔が歪む。

「ふざけるな……!」

「ふざけてないよ」

 あっさりと返す。

「ちゃんと”計算”してる」

 男は袋を掴み、荒く扉を開けて出ていった。

 重い音が残る。

 静寂。

「相変わらずね」

 壁際から声がした。

 ダークエルフの女――ヴェラが腕を組んでいる。

「助けられた案件だったじゃない」

「そうかもね」

「じゃあなんでやらないの?」

 レグルスは机の上の金貨を一枚ずつ揃え始める。

「崩れるから」

「……何が?」

「基準」

 顔も上げずに言う。

「一回でも例外を許すと、全部が崩れる」

「今回は娘、次は家族、その次はボクの気分」

「終わらなくなる」

 ヴェラは目を細めた。

「誰も信じてないのね」

「必要ない」

 即答。

「信頼はコストだよ」

「裏切りのリスクがある」

「だったら最初からいらない」

「最低ね」

「褒めてる?」

 その時。

 扉がノックもなく開く。

「レグルス」

 入ってきたのは巨体のオーク――ガルドだった。

 息が荒い。

「終わったぞ」

「報告」

「相手は全部倒した」

「こっちは三人やられた」

「効率悪いね」

「は?」

 ガルドが眉をひそめる。

「仕方ねぇだろ……相手は――」

「言い訳いらない」

 即座に遮る。

「次は減らして」

 ガルドはしばらく黙った後、ため息をついた。

「……わかったよ」

「お前、ほんと変わらねぇな」

「変える必要ないし」

 レグルスは最後の金貨を揃え終える。

 完璧な直線。

 歪みのない列。

 その時だった。

 空気が変わる。

 扉の外に、“誰か”が立っている。

「入っていいよ」

 扉が静かに開いた。

 そこにいたのは――

 黒いドレスの女。

 赤い瞳。

 揺れない視線。

 レグルスは初めて、わずかに目を細めた。

「……ふーん」

 金貨を見る。

 そして、女を見る。

「計算、できない」

 ぽつりと呟く。

 値段がつけられないのではない。

 そもそも、式が成立しない。

「貴様がレグルスか」

 女の声は静かだった。

「そうだよ」

「観察していた」

「奴隷領域での構造構築、通貨運用、外出権の設計――全て把握済みだ」

 レグルスは少しだけ首を傾げる。

「見てたんだ」

「評価に値する」

 間。

「貴様は”設計者”だ」

 ヴェラが目を見開く。

 ガルドが息を呑む。

 レグルスは少し笑った。

「うん、そうだよ」

「だが」

 女は一歩踏み出す。

「設計者は、測られる側でもある」

 空気が変わる。

 レグルスの指が止まる。

「……ボクを?」

「その通りだ」

「どうやって?」

 女は静かに答えた。

「不要だ」

「既に答えは出ている」

 一拍。

「もう答えは出ている」

 レグルスは初めて、少しだけ息を吐いた。

「……変だね」

 金貨の列を見る。

 完璧だったはずのそれが――

 ほんのわずかに、歪んでいる気がした。

「面白い」

 小さく呟く。

 それを聞いていたガルドが、ぼそりと漏らす。

「……なんだよ、あの女」

 ヴェラは目を細めた。

「厄介な人が来たわね」

 だがレグルスは違った。

「いいね」

 初めて。

 楽しそうに笑った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

新キャラクター、レグルスが登場しました。

彼は以前の設定にもあった「奴隷領域での構造構築」などを手掛ける、まさに組織の「脳」となるキャラクターです。

ヴェラ(ダークエルフ)やガルド(オーク)といった個性的な配下を従えながらも、誰一人信じていないという徹底した合理主義。

そんな彼が、ルナリエに「貴様は設計者だ」と定義され、逆に「測られる側」に回った瞬間の高揚感……。

完璧だったはずの金貨の列が少しだけ歪んで見える描写に、彼の心の揺れを込めてみました。

「面白い」

そう笑ったレグルスが、ルナリエの陣営にどのような変革をもたらすのか。

そして、ルナリエが彼に下した「答え」とは何なのか。

新生魔王軍のメンバーが着々と揃ってきました!

「レグルスのキャラが好き!」「ルナリエの強者感がたまらない!」という方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします!

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