第91話 罠
「おう、稲田。悪いな。ちょっと話があるんだが」
小川と共に見慣れない3人の男子が現れた。小川を先頭に3人が真後ろを歩く。
愛羅は小川とSNSメッセージを介し、集合場所を決定した。話し合いをするためだ。小川が妙なことを言い出したその理由を聞くためでもあった。
「え・・。誰よあんた達?」
愛羅の目が点になった。表情もきつく固まった。急展開だった。
「・・・すまん愛羅。俺1人じゃないんだ」
小川は情けない顔を示した。完全に負け顔だ。
「どういうこと?詳しく説明してよ」
意味がわからない。愛羅の正直な気持ちだろう。起因しておそらく混乱すらも起こす。
しかし、小川は俯きながら黙秘をキープする。
「その件は俺から説明するよ」
リーダー格の男子が代わりに返答した。
愛羅は特に不満を漏らさない。そんな余裕など皆無だ。
「俺達は増本さんと与田さんのファンみたいなものだ。そして、増本さんにピンチが訪れ、与田さんが拡散した、ある男子と稲田が話す録音データを耳にした。その結果、小川と稲田。お前らが問題の人物だと特定できた。それで本日接触した」
リーダー格の男子は淡々と自己紹介をし、ここまでの経緯を述べた。特に表情を変化させずに。
女子の前なため、さすがに小川の時のように声を荒げたりはしない。冷静な態度を示す。
「増本と与田のファン?問題の人物?意味がわからない。どうして、そのあんたらがあたし達に目を付けるのよ?」
愛羅が徐々に調子を取り戻した。普段の調子に若干戻った。
「その答えは単純だ。俺達は増本さんと与田さんの平和を望むからだ。彼女達の害ある人物やものはすべて排除する。なぁお前ら」
うんうんと、残りの2人は呼応して頷いた。
「だから、お前達がこれ以上愚かな行為をしないために説得しにきた。現に小川はもう金輪際増本さんに危害を加えないと約束してくれた。そうだよな?小川」
ポン。
リーダー格の男子は小川の左肩に手を置いた。この行為と言葉には唯ならぬ圧力が存在した。
小川はわかりやすく肩を揺らした。陽キャに絡まれた陰キャのように。
「あ、あぁ。そうだよ」
小川は愛羅の顔を窺いながら、たどたどしく答えた。完全に萎縮する。
「彼氏はこの状態だ。稲田はどうだ?」
男子3人は小川を置き去りにし、愛羅に詰め寄る。
「な、なによ気安く近寄らないでくれる・・・」
愛羅は強気を貫く。
だが、身体は正直だ。
恐怖からか。身体は後ろにたじろぐ。
自然と壁際まで追い込まれる。愛羅の背中が高い壁に密着した。
「大人しく俺達の言う通りにしてくれるよな?彼氏君の小川みたいに」
3人の男子は愛羅を上から見下ろした。彼らの距離感は数メートルから数10センチに移行した。
男子3人の表情は非常に迫力があり、凄みも同伴する。
「っ。な、なによ。どうしてこうなるのよ」
愛羅は唇を震わせながら、か弱い不満を口にした。せめてもの抵抗だった。




