79話 彼女持ちの男子からの告白
「ごめんねいきなり呼び出して」
万人受けしそうな茶髪のイケメン小川が羽矢に軽い謝罪を述べる。
「それは全然構わない。それで用件はなんだ?わざわざ体育館まで呼び出して」
羽矢はこの後の展開があらかじめわかっているような口ぶりだ。
「せっかちだね。それとも何度も同じ経験をしているからかな」
小川は美しく笑う。自然と絵になる。
「単刀直入に行くよ。僕は君の美貌に惚れた。だから俺と付き合ってくれないか」
小川は自信たっぷりな顔で羽矢に告白する。告白をする口調は優しく穏やかなものだった。
羽矢はあからさまにうんざりした表情を示す。
またこれか、といった形で呆れた顔を示す。
「悪いが告白を受け取ることはできない」
羽矢は遠慮した様子もなくバッサリ告白を断る。彼女は何度も告白された経験があるため断るのは慣れている。
「え!?どうして?別に彼氏がいるわけでもないだろう?」
小川は必死な顔で食い気味に聞く。
羽矢は小川の言葉に反応して嫌そうな顔を露見させる。振った直後こういったことを聞く男子が過去に何人もいた。
「ああ確かにいない。だが明確な理由は存在する。好きではないからだ」
羽矢はオブラートに包まずストレートに振った理由を告げる。
「それに告白してきた当人について何も知らないからな」
羽矢は追い討ちを掛けるように追加で浮かんだ理由も告げる。
「そんなこと言わずにさぁ……」
なおも諦めない小川。彼は見た目とは裏腹にしつこい性格をしていた。
「そう言われても無理なものは無理だ。私は君に興味がない」
羽矢はそう言い放つなり踵を返して歩を進める。
「くっ」
小川は羽矢の後ろ姿を見つめながら悔しそうに両拳を握った。
次の日。現在、2時間目終了後の休み時間。
羽矢は2時間目に使用した教科書やノートを机に仕舞う。その一方、相変わらず周囲は騒がしい。
ガラ〜〜。
そんな空間にドアが勢いよく開け放たれる音が響き渡る。
その音に敏感に反応して多くの生徒が音のした方向に視線を走らせる。
そこには金髪で化粧の濃いギャルが立つ。胸は小さいが顔はまあまあ整っている。
「増本羽矢っていうのいる?」
ギャルは不機嫌そうに周囲に視線を行き届ける。まるで対象者をいち早く発見するように。その視線と迫力に驚く生徒も幾つかある。
「増本羽矢は私だが」
羽矢は控えめに手を挙げる。
「あんたが増本羽矢か・・・」
ギャルは敵対心剥き出しで羽矢を睨みつける。
「ちょっと廊下に来て。話すことがある」
ギャルはそう言い残すと教室の戸を雑に閉め退出する。
羽矢は少し考える素振りを見せた後、席を立ち無言のまま歩き出す。戸をゆっくり開けると廊下に身を置くギャルと目が合う。
羽矢はギャルを視界に映しながら優しく教室の戸を閉めた。




