61話 始まり
休み時間。
学級委員の山田は教室内をあちこちと移動していた。
彼女はつい先ほどトイレから戻って来たばかりだった。
「私の筆箱知らない?」
山田は常に休み時間の中で話す親しい友人に声を掛ける。
「えっ、知らないよ。どうしたの?もしかしてなくしちゃったの?」
「うん。しっかり机の上に置いておいたんだけど」
山田はちらっと自席を一瞥する。
しかし、机の上には何も存在しない。
3分ほど前には確かにあったプラッチック製の筆箱は見られない。
「後少しで授業が始まるから。この辺で一旦、探すのはやめた方がいいと思うよ。次の時間、私も探すの協力するから」
山田の友人はそのようにアドバイスした後、自身の筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出す。
「はい!次の時間はこれ使って」
友人は山田にシャーペンと消しゴムを差し出す。
「あ、ありがとう。助かる・・・」
山田は若干、申し訳なさそうにそれらを受け取り、自席に座る。
それから何事も無かったかのように、いつも通り授業が開始される。
山田は授業を集中して聞きながらも、机やカバンの中を探索する。
だが、お目当ての筆箱には辿り着けない。
そうこうしている内にあっさりと授業は終了する。
山田は教員が教室から退出すると、早速筆箱を探しに取り掛かる。
友人の協力もあり、筆箱は3分ほどで見つかった。
なぜかは知らないが、山田の筆箱は彼女のロッカーの奥にあった。
山田はロッカーに仕舞った覚えなどなかったが、友人に勧められて探した結果、筆箱が発見された。
山田は筆箱を発見した直後、安堵した表情を浮かべたが、すぐに不思議な出来事に首を傾げた。
なぜなら、自身がロッカーに筆箱を仕舞うなど絶対にありえないためだ。
その後、山田は警戒した面持ちで学校生活を過ごす。
しかし、筆箱と同様に他の私物が消えるような出来事は生まれなかった。
放課後に突入し、前日と同様に文化祭の準備が教室内で実施された。
一輝や松本は昨日と同じで、カフェのアイデア出しに参加している。
山田は様々なグループに顔を出しながら、文化祭の準備が円滑に進むように努めた。
彼女の努力もあり、文化祭の準備の進捗は順調であった。
18時が近づくと、山田は教室の戸締りを女子生徒3人に任せ、友人と一緒に昇降口に向かった。
山田は普段通り靴箱から学校規定のローファーを取り出そうとする。
だが、不幸にもそれは叶わなかった。
山田のローファーが靴箱内に存在していないのだ。
「あれ?私のローファーがない。どうしよう……」
山田は衝撃の現実に思わず呟く。
目の前に起こる現実が信じられなかった。
「え!?本当に!?」
嫌な予感がしたのだろうか。友人は慌てた様子で山田の靴箱を覗く。
「・・・。ねぇ、午前中の筆箱の件もそうだけど。普通じゃないよ。もしかして聡美ちゃん嫌がらせを受けてるんじゃない?」
友人は意味深な面持ちで山田をじっと見つめる。
「そんなことって・・あるわけ・・・」
山田の言葉が途中で区切れた。はっきりと友人の推測を否定できない。
流石におかしいと思ったのだろう。
自身が仕舞うはずのない場所に筆箱があり、現時点ではローファーも消えた。
これを他者からの嫌がらせでなければ、どう説明すればよいのだろうか。
山田の額に嫌な汗が浮かび、左頬に1滴の冷や汗が垂れる。顔は引きつって固まっている。
そのため、山田らしくないぎこちない表情である。
友人は心配そうに山田に視線を向けていた。
⭐️⭐️⭐️
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