39話 ボコボコ
「航平!またなー!」
「おう!」
週末の20時。この日、航平はクラスの友人達と朝から晩まで遊んでいた。ご飯を食べたり、スポッチャで遊んだりした。カラオケにも行ったし、ダーツもした。
航平はここ最近、毎日のように友人達と遊んでいた。白雪が学校に来なくなり、以前よりも居心地が悪くはなったが、ボッチにはなっていなかった。友人達は変わらずに航平と接してくれた。
「あーー。楽しかった」
航平は帰路に着きながら、笑顔をこぼした。
今日一日を振り返ってみて、心の底から楽しいと思ったのだ。そして同時に思った。
(俺……こんなに笑ったの久々だ)
いつもなら疲れたと思うようなことも、今日は楽しかった。明日もまた遊びたいと思った。これも友人達のおかげだった。
「おうおう!ご機嫌な様子だな。他人を盛大に傷つけたくせによ・・・」
男性が後ろから声を掛けると、反応を待たずに服の後ろ部分を掴み、全力で航平の顔を殴った。
「がっ・・・」
航平は顔を押さえながら、よろめく。
「おいおい。たった1発でそのざまかよ」
男性は痛がる様子など無視して、航平の髪を強引に掴む。次は腹部に拳を入れ、近くの公園の地面に向けて航平を叩きつける。
その結果、航平は一切抵抗できず、顔が地面に衝突する。
「うぐぅ……」
航平は苦しそうに声を上げる。
「どうした?弱いな!」
男性は見下しながら、嘲笑う。
「だ、誰だ・・・お前は」
航平は顔を歪めながらも、立ち上がり視界を確保する。視界が徐々に明瞭になる。
「あ、あなたは!?」
航平は男性の顔を正確に視認するなり、驚きの声をあげた。
「ようやく気づいたか!おせえよ。第1声で気付けよクソ野郎」
男性は舌打ちをした後、顔をしかめる。
「どうして。どうして。千里のお兄さんが」
航平は身体をガタガタと震わせながら、小刻みに言葉を紡ぐ。
そう。先ほど、航平に暴力を振るった男性の名前は白雪千寿。航平が以前付き合っていた白雪千里の実兄である。
「おいおい。そんなに怯えんなよ。まぁ無理もないか。俺はあの千里の兄貴だからな。妹を傷つけた男がお前なんだからそれは怖いだろうな」
白雪の兄は笑みを全く作らずに、冷酷な表情をキープしている。
「さて、なんで俺がここにいるのかわかるよな?」
白雪の兄はゆっくりと歩き出す。一歩ずつ確実に航平の元へ近づいていく。
「待ってくれ!!話を聞いてくれ!!お願いします!!」
航平は必死の形相で訴える。白雪の兄がこれからする行動を容易に想像できたのだろう。だが、その願いが届くことはない。
「悪いけど。俺もそこまで優しくないんでね」
白雪の兄は歩みを止めず、航平との距離を縮めていく。
「頼む!!!許してくれぇ。いや、ください・・」
「嫌だね。覚悟しろよ。お前は俺の可愛い妹を傷つけた上、不登校にまで追い込んだんだからな」
白雪の兄は拳をポキポキと何度も鳴らす。
それから、腕を大きく振り上げる。そして勢いよく、航平の顔面に向かって殴りかかった。
それからというものの、航平は一方的にボコボコにされた。不幸にも、近くに人が通過する偶然もなかったため、白雪の兄に思う存分やられた。
航平は抵抗しようとしたが、相手は大人で体格もいいため、どうすることもできなかった。
「おい。まだ終わってねえぞ」
白雪の兄は倒れたまま動けない航平に対して、容赦なく蹴りを入れる。
「あ、あああ……」
航平は痛みで悶えることしかできない。
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