33話 変化
航平のクソな性格が露わになって1週間が経過した。
航平は多くの生徒から冷ややかな視線を受けながらも、毎日休まず学校に登校していた。
航平は不登校を希望したそうだが、両親が断固として許してくれなかったそうだ。
そのため、航平は親しい男子生徒達と常に行動しながらも、非常に居心地の悪い学校生活を送っていた。
今では誰も航平に羨望の眼差しを向けない。女子達がかっこいいとか口にしたり、声を掛けてくることも皆無だ。
航平が以前に比べて学校生活を謳歌できていないのは明白だった。
「俺ってどこで失敗したんだろうな・・・」
航平は廊下を歩きながら、誰にも聞こえない声でボソッとつぶやいた。
一方、白雪はショックから立ち直れていないのか。ここ1週間、学校に姿を見せていない。
航平も連絡を取ることすらもしていない。そのため、白雪が学校に来ず、何をしているかどうかを知る者はいない。
時は過ぎ、放課後。
一輝は莉菜の教室に姿を見せた。ここ1週間、一輝は放課後に莉菜の教室に足を運んでいた。
一輝は航平から莉菜を守るために一時期頭を悩ませていた。どうすれば、航平を莉菜から遠ざけられるかを必死に考えていた。だが、最終的に答えは出ないままだった。
しかし、事態は予想外な出来事を引き起こした。
何者かが航平と白雪との会話を録音し、その内容をSNSを用いて拡散したのだ。
その効果は非常に大きく、西城高校のほとんどの生徒達に航平のクソな性格が認知された。航平が学校内でもかなり知名度のある生徒だったため、拡散される範囲もスピードも異常だった。
だが、一輝は可能性が低いと見積りつつも、未だに航平が莉菜に対して執拗なアピールを行うのではないかと、心配になる。そのため、放課後に教室に出向き、莉菜の置かれた状況を確認する。
「莉菜、今日も大丈夫だった?」
「うん!大丈夫だよ!」
莉菜は笑顔で答える。
その笑顔を見て、一輝はホッとする。
「最近よく放課後に来てくれる。どうして来てくれるの?」
莉菜は帰りの支度をする手を止める。座っているため、自然と上目遣いになる。
一輝と莉菜が数秒間ほど見つめ合う形になる。
「それは・・・」
一輝は動揺を隠せない。まさか理由を話すわけにはいかないからだ。『幼馴染だし、心配だから』という理由はあまりにも口に出すのには恥ずかしい。
「あ、ごめんね。困らせちゃったよね」
莉菜は一輝の困ったような表情を察し、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。
「う、ううん。全然大丈夫だよ」
一輝は焦りながらも首を横に振る。
「な、なら、よかった」
莉菜がぎこちなく再び帰りの支度を始める。
そんな莉菜の様子を見た一輝はあることを思いつく。一輝はそんな莉菜の様子に少なからず罪悪感を覚える。
「ねぇ、莉菜」
「な、何?」
莉菜がぴくっと驚いた素振りを見せる。
「さっきの問いに対する答えなんだけど。しょうもないかもしれないし、余計なお世話かもしれないけど。俺は莉菜が心配なんだ。だから、ここ1週間、放課後に足を運んでいるんだよ」
一輝はあからさまに目を逸らしながらも、勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。同時に恥ずかしさが盛大に押し寄せる。
「・・・」
莉菜から反応はない。莉菜はしばらく沈黙する。そして、時間が経つごとにどんどん顔が赤く染まっていく。
「えっ。あっ。そうなんだ・・・」
ようやく口を開いた莉菜は俯いた状態であり、声も震えている。まるで壊れた機械みたいだった。
「どうしたの?大丈夫!莉菜!!」
一輝は心配そうに莉菜の肩を揺すった。
その直後、莉菜の顔はより一層赤くなってしまう。
「だ、大丈夫だよ!!ありがとうね。かず君!」
莉菜は勢いよく立ち上がり、スクールバッグを手に取ると教室から逃げるように出て行った。
教室に取り残された一輝はその状況を理解できないまま、呆然と立ち尽くすしかなかった。
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