27話 積極性
「ねぇねぇ!航平!!一緒に帰ろ!!」
ある3年の教室。白雪が航平の席に出向いて上機嫌な様子で声を掛けた。
「悪い。今日は一緒に帰れないんだ。ちょっと用事があるんだ」
航平は帰りの支度を済ませ、席から立ち上がる。
「えぇ〜〜。なんで〜」
白雪はあからさまに悲しそうに瞳を潤ませた。
「そんな悲しそうな顔を見せるなよ。別に俺達別れるわけじゃないんだから!」
航平は笑顔を作り、白雪の頭を優しく撫でた。
「でも、今日一緒に帰れないんだけでも寂しいよ・・・」
白雪は不満そうに頬を膨らませた。
「ごめんな。また今度、埋め合わせはするからさ。今日はいいか?」
航平は諭すような目で白雪を慰める。
「・・・うん。わかった・・・」
白雪は渋々といった形で受け入れた。
「ということで。もういいか?そろそろ俺は行くわ!」
航平は1度、白雪に向けて手を振ると、そそくさと教室を退出した。
「よぉ!与田!!」
航平は莉菜のクラスに到着すると、即座に莉菜の席に向かった。
莉菜はまず驚きの表情を示した後、不快そうに眉間に皺を寄せた。
「あれって、3年の鳴本先輩だよね?」
「うん。見て!かっこいいよね〜〜」
「おいおい。超イケメンが俺達の教室に来てるじゃねぇか」
「それにしても、あの先輩って彼女いるよな。それなのに、どうして与田さんにわざわざ会いに来たんだろ?」
突然の航平の登場により、クラス内は爆発的に騒がしくなった。
ただでさえ、放課後突入直後は騒がしいのだが、それとは段違いなレベルで今の教室には喧騒な空気が流れていた。
「周囲は騒がしいな。やっぱり人気者は大変だな」
航平は共感を求めるように莉菜に言葉を掛けた。
「そうですか。確かに大変だとは思います。でも、私はもう慣れてますので」
莉菜は以前と変わらず冷たい対応を取った。今すぐにでも、この場から離れてほしいことを訴えるような口調だった。
「そんな冷たくしないでくれよ。俺のメンタルが少しばかりへこむからさ」
航平は笑いながら、胸を軽く押さえる仕草を披露した。
「嘘っぽいですね?それに、なんで私に構うんですか?」
莉菜は鬱陶しそうに軽く航平を睨んだ。
「あん?前に伝えたろ。俺はお前を逃さないって。だから、俺はお前と付き合えるまでアピールし続けるぞ?」
航平は周囲には聞こえない小さな声で自身の意志を口にした。
「ふざけないでください。私は絶対にあなたと付き合いませんから」
莉菜は呆れた顔で勢い良く立ち上がり、教室の戸に向けて動く。
莉菜の行動に教室に身を置く生徒達が敏感に反応する。
しかし、航平はなぜか追いかけようとせず、薄く笑みを浮かべながら、莉菜の後ろ姿を眺めているだけだった。
莉菜が廊下に足を踏み入れても、航平は未だに教室にいた。
一方、気になって密かに航平を追跡していた白雪は驚きを隠せなかった。
白雪は航平と別れた後、すぐに後方を追った。そのため、航平が莉菜のクラスに入室したり、莉菜とご機嫌に話すシーンも見てしまった。
白雪はぶるぶる身体を震わせながら、教室で佇む航平を視界の中に捕まえることしかできなかった。
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