12話 久しぶりに一緒に登校
「本当に久しぶりに一緒に登校するね」
「確かにな。高校1年生の最初の頃以来か」
一輝と莉菜は並びながら住宅地を進む。一輝はリュックを背負い、莉菜はスクールバッグを手に持つ。
「本当だね。それにしても、かず君の家って学校に近いよね。だって、10分ほどで到着するんだもんね」
莉菜は上品に口元に手を添え、笑顔をこぼす。
「あぁ。そうだな。そこを狙って受験を受けたんだからな」
一輝は莉菜に目を向けず、前方に視線をキープする。
住宅地を進め、徐々に学校に近づくと、西城高校の制服を着た生徒がちらほらと姿を見せた。
「うぉ!与田さんだ。朝から与田さんにお目にかかれるとは幸せだ!」
「うわ〜。相変わらず、美しい!同じ人間とは思えない〜」
「それにしても、隣にいる奴は誰なんだ?見覚えがないぞ」
「それにしても、隣にいる奴、羨ましすぎる〜〜」
莉菜を見た生徒が口々に言葉を発する。その中には嫉妬を抱く人間も少なくなかった。
「あぁ〜。目立ってきたぞ・・・」
一輝は目を細めながら、唇を尖らせた。
「本当だね。どうして、こんなにも目立っちゃうのかな。みんな暇なのかな?」
莉菜は困ったような表情を浮かべた。
「それは、少なからず、莉菜が原因だろ」
「あははっ。やっぱりそうだよね」
莉菜は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、仕方ない。昔からだろ」
一輝は周囲をぐるっと見渡した。ほとんどの生徒が莉菜に目を向けていた。
「それにしても、どうして莉菜は高校1年生の途中で朝、俺の家を訪れなくなったんだ?」
一輝は昔から気になっていたことを口にした。莉菜が自宅に来てから、聞こうと思っていた内容だ。
「それはね。え〜っとね」
莉菜は俯きながら、居心地の悪そうな顔を作った。一輝とは決して目を合わせずにいた。
「まぁ。いいや。言いにくいことならいいよ。無理に聞くのは論外だしな」
一輝は莉菜の心境を察し、一瞥してから、リラックスするように頭の後ろで両手を組んだ。
「ごめんね。疑問に答えられなくて」
莉菜は申し訳なさそうな顔を示した。
「いいよ。人間、隠すべきことは1つや2つあるものだと思ってるから、それに、俺は幼馴染だから、莉菜の行動を尊重するよ」
「・・・ありがとう。・・かずくん」
莉菜は頬を赤く染めながら、お礼を口にした。
その後、一輝と莉菜はお互いに沈黙しながら、1度だけ目を合わせ、西城高校の正門を通過した。
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