10話 あのとき見ていた2人
一輝が嘘告白をされた放課後、羽矢は偶然、体育館裏の近くに足を運んでいた。特に理由は無く、気軽に校内を散歩していたら、辿り着いていた。
「うん?」
羽矢はある光景を目にして、眉をひそめる。なぜなら、体育館裏には親友である一輝と面識のない松本がいたからだ。ちなみに、彼らと羽矢の距離はある程度離れていたため、気付かれることはなかった。
突如、松本による告白が行われた。
羽矢は松本の声にぴくっと反応する。
「朝元の奴、告白されてるのか。さて、どうするんだ」
羽矢はワクワクしながら事の進行を見届ける。
一輝は即座に告白を了承した。一輝の声には嬉しさが籠っていた。
「なんだ。案外、あっさり了承したな・・・」
羽矢はズキっと心に痛みを覚えた。羽矢はこの痛みの原因がわからなかった。
すると、片山を含んだ男子生徒達がご機嫌な様子で松本の告白現場に現れた。一輝は戸惑いを隠せない。
そこから、怒涛の勢いで嘘告白である事実が片山によって暴露される。
男子生徒達は一輝の表情が悲しいものに変わるごとに笑い声が増した。
羽矢はそのえげつない光景を目にしながら、徐々に不快感を覚え始め、最終的にはそれが怒りへと変貌した。
片山達が去った後も、とどめを指すように、松本が一輝に追い討ちを仕掛けた。
一輝は松本の口撃を受け切り、最後は力尽きるように地面に両膝を打ちつけた。
松本は一輝を心底見下した目で一瞥し、その場から消える。
「ひどい・・・許さない」
羽矢の怒りは最高潮に達していた。普段、握ることがない手の拳がこれでもかというほど力を帯びる。
羽矢は嘘告白の主犯である片山と松本に恥をかかせてやろうと強く決意する。自分自身の強みを最大限に使って、最大の恥をお見舞いしてやろうとも強く抱く。
そして、今後、自分の気持ちに正直になることにした。一輝に対する気持ちはこの怒りが証明しているから。
一方、別の場所に羽矢と同じような感情を抱いた人物がもう1人。、
その人物は羽矢の反対エリアに身を置いた莉菜であった。
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