仮結婚生活2
夕食時――思いがけない来客者がカンムの室を訪ねてきた。まったくの予想外だ。
「なんで、あなたが私の部屋にくるのよ! 新手の嫌がらせね。さっから窓の近くの椅子に座ってくつろいでいるし」
ユジンを指さし、わなわなと肩を震えながら追い出したくなる衝動をなんとか抑えている。しかし、ユジンは心外だとカンムが怒っていても出ていく様子がない。
「嫌がらせなんてするわけないだろ。そんなことするぐらいなら始めから部屋にこないさ。食事は一人でするものではないぞ。だから一緒に食べよう」
侍女たちはテーブルに様々な料理をかまわず運んでいく。しかも、しかもご丁寧にユジンの分まで並べていく。
「僕の分は向かい側じゃなくて、カンムの隣においてほしいのだけどお願いできる?」
「はい、でも…………」
侍女は頼まれ事をしてもよいのか、不安そうにカンムを見る。
カンムは何がいいたいのか大体予想がつき、今侍女が欲しいだろうと思う答えをいってあげる。
「……いいわ。そうしてあげてくれる?」
了承を得られ「かしこまりました」と、侍女は皿の場所をかえた。
ユジンは招いた客人であり言うことをすんなり聞いてもいいのだが、この部屋はカンムの自室なのだ。
カンムの了承を得なければいけないのではないかと、悩んでいたようだ。
「心配しなくても、ただ隣に座るだけで触れないよ。安心して。それに、わざわざ惚れた人を怖がらせようなんて思うわけ無いだろう」
「気にしてないわよ。――今からユジン殿を女って思い込むからしばらく黙っていてくれる?」
目を閉じて、すっと息を吸い込む。小声で、ぶつぶつと呟きだした。
「この部屋には男はいないわ。居るのは、女の子。女よ。コミナムではないわ。コミニョよ」
「ごめんね。独り言に口挟みたくはないのだけど、『コミナム』ってなに?」
知らないのと驚いてユジンをみた。途端に得意げに説明をしだす。
「花より美しい男という意味よ。漢字で書くと花美男と書くの。そのまま読んだだけよ。コミニョは女性のことを指しているの。花より美しい女という意味。コミニョは大歓迎!!」
「なんだ、僕は違うぞ! 言っちゃ悪いけど、この顔を嫌ってるとか思わないの? この顔のせいで女性たちからは避けられるし、言い寄ってくるのは男ばかりだ。なよなよしてるって勘違いされるから鍛えるんだけど、筋肉がつきにくくて」
「いいえ、こんな綺麗な顔のなにが不服って言うの!? 私と交換でもしてみたらありがたさに気づくってもんよ! それこそ贅沢なんだから。顔は個性でしょ」
「カンムこそ何を言うんだ!! こんなに可愛いのに交換してもいいだなんて……。僕の顔褒めてくれてくれたのはじめてだよ」
ユジンは本当に嬉しいみたいだ。まじまじとユジンを見た。