第陸幕の陸
親の心子知らず、子の心親知らず。
アイリスがジョージと出会った頃、空手部の居残り練習に付き合い帰宅が遅れた蓮は……。
「遅くなっちまったな……。もうあおいも帰ってるころだし急がないと」
早足で帰る蓮に、一人の女性が声をかける。
「あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい」
明らかに非常事態が起きていると感じた蓮は、自分の帰宅を後回しにして女性から事情を聴く。彼女は息子がなかなか帰ってこないことを心配して外に出てきたという。この一家はここ最近引っ越してきたばかりで、まだ町の構造を把握しきっておらず道に迷った可能性があるため一緒に探してほしいと言うのだ。
「わかりました、一緒に探します! お母さん、息子さん……ジョージ君はどこに行くって言ってました?」
「確か、大きな公園に行くって……」
「じゃあ行ってみましょう」
蓮と母親は大きな公園へと急ぐ。彼らの目的地では、アイリスとジョージがベンチに座って少年たちがサッカーをしているのを見ていた。彼らはジョージのクラスメイトだというが、ジョージは浮かない顔をしていた。
「ジョージくん、一緒にやらないの?」
ジョージは黙ったまま答えようとしない。そこに……!
「George!!」
ジョージの母がジョージを見つけるや否や大急ぎで走ってきて、ジョージの腕をつかむ。サッカーをしていた少年たちはジョージの母の叫びを聞いて試合が中断、一斉に視線がジョージの方に向かいひそひそ話を始める。
「あれ、確か転校生の外国人だよな……」
「すげえ母ちゃんだな……」
視線とひそひそ話をしている姿に恥ずかしさを隠せないジョージ。
「お、お母さん……」
明らかに嫌そうな顔をしているジョージ。
「お母さん、やめてください!」
蓮がジョージの母を止めようとするが、完全に頭に血が上っている彼女は蓮を払いのける。だが、隙を作ることはできたようで彼は母から逃げることに成功する。二人は急いでジョージを追いかける。
ジョージとその母の姿が見えなくなったころ、アイリスのもとに少年たちが集まってくる。
「お姉ちゃん、あいつの友達なの?」
「一応そうなるのかな? でもどうして?」
不思議そうな顔をしたアイリスに、少年たちは質問の理由を答える。
「あいつ、サッカーすげーうまいのに俺たちの仲間になってくれないんだ」
「あいつがいれば隣のクラスや他の学校と試合しても勝てると思ったから誘ってるのに……」
彼らの話によれば、先日体育の授業でサッカーがあり、その際にジョージがいたチームは彼の活躍が光っていたことからぜひとも彼を仲間にしたいと思っているのだが、誘っても色よい返事が一度も来たことがないという。この話を聞いたアイリスは、自分の小学生の頃のことを思い出していた。
子どものことを想うからこその親の行動、でもそれ、自分がコントロールするためになっていませんか?




