第陸幕の肆
趣味に年齢は無関係。
「どうしたの?」
少年は外国人に話しかけられたと勘違いし、ほっとした表情を見せながら英語で返答する。
「I wanna go home」
学校で習った知識の英語のため言いたいことが理解できたアイリスは、日本語で回答する。
「家に帰りたいのね? 大丈夫、お姉ちゃんが一緒に探してあげる!」
アイリスが日本語を喋れたことに驚く少年だったが、そこからは打ち解けて日本語で会話を始める。少年の名前はジョージ吉井、10歳。アイリスと同じイギリス人とのハーフであるが、父の仕事の関係で日本暮らしが長く日本語も堪能な彼は最近このあたりに引っ越してきたばかりで、まだ慣れていない町で道に迷い、携帯の充電も切れて親に連絡もできず困っていたのだ。
「え、お姉ちゃんって昔少年サッカーの選手だったの!?」
「中学までね。怪我しちゃったから今はやってないの」
家を探しながら会話をしていく中で、ジョージも転校前に少年サッカーのジュニアチームに所属していたことから、共通の話題であるサッカーの談議で盛り上がっていた。
「ジョージ君の好きな選手って誰?」
「僕はシルビコットの大崎選手! 半端ないよね!」
「シルビコット!? 私シルビコットのサポーターなの!」
シルビコットとは東京都を本拠地とするサッカークラブである「シルビコット東京」のことで、アイリスはこのクラブチームの熱狂的なサポーターである。
「「せーのっ! 大崎半端ないってー!!」」
大崎選手を称賛する際のお決まりの台詞を一緒に叫ぶアイリスとジョージ。その後もさっきまで心配でたまらず不安な表情を浮かべていたのが嘘のように元気に話す彼をまるで弟を見守る姉のような視線を交えながら、アイリスは話に花を咲かせていた。
ネタが古い?そんなの関係ねぇ!




