第壱幕の漆
本格的に現代に舞台が移りました。もっとも、一歩踏み出した程度ですが……。
それから一夜明け、翌朝。
不思議な夢を見た1人である赤いロングヘアの少女が目を覚ます。寝ぼけ眼をこすり、学校へ行く支度を始める。すると、インターホンが鳴る。
「さくらー、ぐずぐずしてると置いてくよー?」
インターホンで名を呼ばれた彼女の名は、火宮さくら。今日から高校2年生になるごく普通の女子高生である。強いて違うところをあげるとすれば、自分が住んでいる町である花ヶ咲が大好きなことと日本という国とその文化が大好きなこと、そして祖父が神主をしていることだろうか。さくらは大急ぎで制服に着替え、歯を磨き、顔を洗い、髪を整え、朝食を食べる。そしてドアを開けてインターホンの向かいにいる声の主のもとへと向かう。
「あおい、蓮、お待たせ! おはよ! お母さん、行ってきまーす!」
「遅いぞ!」
「さ、早くしないと! 今日から新年度だし、最初から遅刻はできないよ!」
さくらは家の前で待っていてくれていた隣の家に住んでいる幼馴染で、大親友の水崎あおいと、その双子の兄であり、水崎蓮にあいさつし、会話をしながら一緒に通っている「彩羽高校」へと向かう。その最中、さくらは昨夜見た夢について切り出す。
「そういえばさ、昨日の夜変な夢見たんだよね。なんか女の子が出てきてー、東京が狙われてるとかいうの」
「ははは、なんだよそれ。宇宙人か何かが侵略にでも来るのかよ」
一笑に付す蓮に対して、あおいはその言葉に耳を疑ってから口を開く。
「えっ!? ……もしかしてそれ、着物の女の子が出てきてカケラがどうって言ってなかった!?」
あおいからのまさかの返答にびっくりするさくらだったが、ひとまず首を縦に振る。その後も彼女の問いに答えようとしたら目が覚めたこと、夢に出た少女が白い着物を着ていたことなど、共通点を洗い出していった結果、2人はお互いが見た夢が全く同じものであることを確信した。一方、夢の当事者ではない蓮は女子二人の話を聞けば聞くほどにこんなマンガみたいな偶然が果たして現実にも起こりうるものなのかとただただ不思議に感じることしかできなかった。
さくらたちは気づいていなかったが、登校する3人を見つめる小さな目が物陰から光っていた。これこそが彼女たちが、これからこの東京を舞台に日本、そして世界を揺るがすことになる戦いに巻き込まれる運命の始まりになることは、まだ誰も知る由もなかった。
主人公は火宮さくらさんです。天真爛漫な今時の女の子がどう世界に関わっていくでしょうか?




