第参幕の拾伍
脅威は追い払いましたがまだ部活の人数不足は解決していません。果たして、入部してくれるのか?
「ぐぐぐ……! この借りは倍にして返してやるからなー!!」
敗者の空しき叫びが響く。その情けない姿を、校舎の屋上でティーガーとプチッツァがあざ笑うかのように見つめていた。
「人のこと空飛ぶしか能がないって言ってたくせに、自分が能無しだってこと証明してんじゃん、バーカ」
「3人目の振袖小町まで誕生させちまうなんて、あいつがやったことは完全に藪蛇だったな。それにしても、俺に倒されて苦しんでるさくら、この世のものとは思えないくらいにかわいいだろうなぁ……。その日が楽しみになってきたぜ……!」
組織内において彼らだけの秘密ができた2人はまったく違った思惑と視線を向けていたが、セルペンテが姿を消した直後にはティーガーも屋上から去っていったのとは違い、プチッツァは翼を広げてからしばらく空に留まっていた。
騒動の収束とともに、今回の被害者である目黒と、セルペンテに服を奪われてしまった配達員が目を覚ます。
「うーん、今まで寝てたのかな……? でもなんか、久々に部活に顔を出したくなったな。次の活動日は、他のみんなに任せてみるかな」
立ち上がった目黒は、軽くストレッチをしてから悩みの振り切れたすっきりとした表情で、その場で正拳突きをする。
配達員は、自分がワゴンの運転席に座って下着姿で眠っていたこと、本来自分が配達するはずだった荷物が届けられていたことを証明する伝票がワゴンのフロントガラスに貼られていること、そして自分が着ていたはずの服が膝の上に折りたたまれた状態で置かれていたことに何があったのか混乱するが、時計が表示している時間とスマホに入った大量の着信に気づき、急いで服を着てワゴンを発進させた。
「おーい! みんな大丈夫だったー?」
元の姿に戻ったさくらたちのもとに、校舎からかんなが走ってくる。イナリは見つからないようにすぐさま物陰に隠れる。
「うん、振袖小町が助けてくれたからね!」
笑いながらピースサインをして自分たちは無事であることをかんなにアピールするさくら。
「だよね! 避難誘導でそれどころじゃなかったから、あたしも本物見てみたかったなー」
がっかりするかんな。するとアイリスが口を開く。
「またいつか、きっと会えるよ。だって振袖小町はわた……はひふふほ!?」
慌ててアイリスの口をふさぐあおい。
「……? あおいっち、どしたの?」
「なんでもない。気にしないで。アイリスが言う通り、かんなもきっと会えるよ」
「俺たちだって会えたんだからな!」
「……? まいっか。次こそは振袖小町に会えますように!」
なんとかその場をごまかすことに成功し、振袖小町の正体が自分たちであることは秘密であることをアイリスに耳打ちしてから、口をふさいでいた手を外す。
「ぷはあ! ……あ、そうだ。火宮さん、小町部の件だけど……」
「ん?」
意味深な切り出し方をして口を開くアイリス。
「さっき断っておいてなんだけど、やっぱり前言撤回してもいいかな? 私も、小町部に入部しても……いい?」
頭を下げて頼むアイリス。その返答は……。
「もちろん大歓迎! 部員としても、友達としても、これからよろしくね、土屋さん、ううん、アイリスちゃん!」
さくらはアイリスに向けて右手を差し伸べる。あおい、蓮、かんなも彼女が入部することに異論はない。
「……うん! こちらこそよろしくね、さくらちゃん、あおいちゃん、蓮くん、かんなちゃん!」
アイリスは新たな部活の仲間として温かく迎えられ、既存の部員たちとがっちりと固い握手を交わす。これにて小町部の部員は五人となったため、生徒会への申請及び承認が終わり次第活動が開始できることとなった。
部員が一人増えました。つまり、新たな仲間ができました。赤、青、黄、座りがいいですね。もう一色くらいあるともっと華やぎそうです。




