第壱幕の参
江戸時代の振袖小町は正義の味方、支援者ももちろんいます。そして敵も……。
逃げた別の魔物を追って走ると、今度は裏路地で少年が魔物に襲われていた。
「怖いよー! 振袖小町、助けてー!」
少年の怯える声に小さくうなずくと、右の拳を地面に叩きつける。
すると叩きつけた部分から地割れが起こり、魔物たちは次々と地割れの中に吸い込まれていく。一匹残らず魔物を吸い込んでいった地割れは、拳を地面から離すと同時に元通りに戻っていく。中から魔物が戻ってくる気配は一切なかった。
「もう大丈夫です!」
「ありがとう! 頑張ってね!」
少年の声援を背に、残った魔物を探すために走り出した振袖小町は、呉服屋の前で店の看板娘が魔物に囲まれているのを目撃する。
「今助けます!」
振袖小町は両手を前に突き出して掌を開き、突風を起こして魔物に浴びせる。その風が吹き止むと、右手には弓が、左手には数本の緑色に輝く矢があった。
すかさず高く飛び上がり、上空から突風でひるんだ魔物たちに向かって一体ずつ確実に矢を放ち狙い撃つ。短い滞空時間の中で出された矢をすべて放ち、彼女が地面に降り立った頃には、呉服屋の娘を襲っていた魔物たちは全滅していた。
「あ、ありがとうございます!」
呉服屋の娘はお礼を言って頭を下げる。軽く会釈してから、振袖小町は男が率いる群れを探し、追い続ける。
男が率いている群れが向かった先は神社であった。そこは、身寄りがいない振袖小町が育った場所でもあった。門前には一人の中年の宮司と、振袖小町よりは少しばかり年上と思われる少年が立ちふさがった。
「ここは通さん!」
「あんたの下らねえ野望、絶対に叶えさせない!」
宮司は振袖小町にとってはいわば育ての親である。少年もまた幼いころに身寄りを亡くしたためこの神社で育った。彼女にとってかけがえのない家族であり、兄のように慕っていた存在でもあった。
「ふん、老いぼれと小僧などに何ができる! かかれ!!」
男の声を合図に、一斉に魔物たちが襲い掛かる。足止めをする二人だったが、彼らは魔物たちと戦う力を持たないただの人間、たかが棒や木刀では時間稼ぎをするのが関の山であった。
「我が野望、ここで叶えさせてもらう!」
「そうはさせん! お主は間違っておる!」
男が繰り出す猛攻に力尽きるのももはや時間の問題となった矢先、振袖小町が駆けつける。
「和尚さん! 兄さん! 早く逃げて!」
宮司と少年は避難を促されるも、その場を動かなかった。男は魔物たちを従えて振袖小町に襲い掛かる。しかし、彼女は水を両手から出してそれを槍の形に練り上げる。そしてその槍を使い、目にもとまらぬ速さで魔物たちを一匹残らず串刺しにしていった。
ここからどう現代につながるか、乞うご期待!




