第壱幕の弐
ひとまず続きです。毎日投稿、続けるぞ!
「振袖小町ー!」
「振袖小町、頑張れー!」
そう呼ばれた彼女は、真っ先に襲い掛かってきた魔物をまるで舞っているかのように、そして華やかになぎ倒していく。彼女にとってはこんなものは朝飯前であった。
別の魔物が家屋の屋根に上っていったのを見つけるや否や、すぐさま軽やかに屋根に跳び乗り、屋根の上を走りながら魔物を追う。屋根の上で待ち受けていた魔物を倒すと、残りの魔物たちは蜘蛛の子を散らすかのようにそれぞれ五つの方向へと群れを成して動き出した。そのうちの一つは男が率いて移動を始める。
一つの魔物の群れを袋小路に追い詰めた彼女は、右手から炎を放つ。それは徐々に刀の形になっていく。刀身に炎を帯びたその刀は、紙を切るかのごとく魔物たちをいとも簡単に一刀両断する。
感覚を研ぎ澄ませて逃げ隠れる魔物たちの気配を察し、別の群れを追いかける。すると橋の上で赤ん坊を抱きかかえた若い夫婦を襲っている別の群れと遭遇する。夫婦は橋の縁にまで追い詰められ、川に落下してしまう寸前のところまで追い詰められていた。川に落ちればひとたまりもなく、言葉通りの崖っぷちである。
「私たちはどうなっても構いません、どうかこの子だけは……」
女の必死の懇願も、言葉の通じない魔物にとっては知ったことではなく、魔物の群れはさらに進軍する。ついに男女の足が橋から離れ、落下してしまった。夫婦が死を覚悟し運命を共にしようとした、その時だった。
「うわああああ!! ……あれ……生きてる……!?」
夫婦と赤ん坊が川に着水する直前、振袖小町が川の水をゲル状に変化させ、それをクッションにして着水を防いだのだ。ゲル状になった川の水に跳ね返された男女は、振袖小町が立っていた橋の入り口に着地する。着地した際の地面も振袖小町がマットのように柔らかく変化させていたため、無傷だった。赤ん坊は、川に落下しそうになった時ですらも女が抱きしめて決して離さず、女が着地に成功したときも彼女の腕の中で微笑んでいた。振袖小町は女から母の愛の強さを感じ取っていた。
「逃げてください!」
「ありがとうございます!」
「このご恩、忘れません!」
自分の命を助けてくれたのが振袖小町だと気づいた夫婦は、心からの感謝の言葉を命の恩人に贈り、避難を開始する。
夫婦を魔物から引き離した振袖小町は、かの牛若丸を彷彿とさせるかのごとく軽やかに攻め、魔物の攻撃に対しても危なげなく避けていく。
徒手空拳による攻撃で魔物を弱らせ、振袖小町はその場で一回転すると、彼女の周りには無数の鋼の刃が浮かび上がっていた。それを魔物に向けて放ち、次々と切り刻んでいく。群れにいた魔物たちは一匹残らず刃の錆となった。
これから数日は過去編が続きます。ここもお楽しみください。




