第参幕の陸
アイリスの心情、揺れ動いてます。
自信満々で出撃したセルペンテは、道中で別の振袖のカケラを拾い、ズボンの後ろポケットに入れる。それからしばらくして、目的地である学校の前に到着していた。その学校こそ、さくらたちが通っている彩羽高校であった。だがここでひとつの問題が発生した。セルペンテがこのまま校内に入ろうとしても、不審者として入り口で止められてしまい中に入ることができない。どう中に入るかを模索していた時だった。
一台の宅配便のワゴンが校門の前に止まる。その運転席から配達員の青年が降りてきた。セルペンテはニヤリと笑った。
「あのー、すみませーん」
「はい……ぐはっ!」
後ろから普通に声をかけると見せかけて、振り返った瞬間に手に仕込んだ毒を配達員に浴びせて気絶させる。そしてワゴンの運転席に彼を押し込んでから、帽子と制服、そして荷物を奪い取って配達員に変装したのだ。
「悪ぃなぁ、配達の兄ちゃん。あんたに恨みはねえが、ちょっとだけ協力してもらうぜ」
何事もなかったかのように配達員として校門にある受付で守衛に荷物をどこに持っていけばいいか聞き、潜入に成功する。
桃香から送り出されて職員室を出た小町部の部員たちは、部活に入ってくれそうな生徒に心当たりがあるかそれぞれ思い出す。結果として全員一致で同じ人物が思い浮かんだためその人物がいる場所へと向かう。
「土屋さん!」
生徒会室に再び向かった4人。そこには、資料を整理していたアイリスだけでなく、眼鏡をかけた上級生の生徒会長、目黒が帰ってきていた。
「小町部の皆さん。部員と顧問は見つかった?」
返事としてさくらは申請書を見せる。が、部員がまだ見つかってないことにアイリスが気付くや否や、さくらは提案する。
「ね、土屋さんも一緒に小町部やろうよ! だってさっきすっごい楽しそうだったから!」
「土屋さん、私からもお願いします!」
頭を下げるさくら、あおい、蓮、かんな。しかし返事は……。
「気持ちは嬉しいんだけど……申し訳ないけど、お断りします。だって生徒会の方が忙しいし……。ごめんなさい」
こちらも頭を下げて断るアイリス。その瞬間、外から吹いてくる風で申請書が裏返しになった。生徒会長が拾ってさくらに渡し、部員たちはまた生徒会室を出発した。
配達員として事務室に荷物を渡したセルペンテは、本来の目的である振袖のカケラを探すべく散策を始める。その際に一人の小柄な女子生徒が彼とすれ違う。女子生徒は足を止め、彼の不審さに疑問を持つ。
「あの人、フィクションだと明らかに怪しい人って感じだよね……ん? なんだろこれ?」
少女はセルペンテのズボンのポケットから落ちた結晶体を拾い、届けようとしたが落とし主はすでにその場におらず、やむを得ずそのまま持ち帰る形で学校を出ていった。
さくらたちが生徒会室を後にしてからしばらく経ち、校庭ではサッカー部が練習試合を始めていた。始まった途端、強豪校から編入してきた実力者が無双状態になっていた。
「お前らこんなもんか? 大した事ねえな!」
サッカーにあるまじきスタンドプレーとリスペクトに欠ける発言にアイリスが不快感を覚える中、目黒が不意に声をかける。
「土屋さん、ちょっといいかな?」
振り向くアイリス。
「お節介かもしれないけど、僕は土屋さんが本当に彼女たちの部活に入りたくないとは思えない。短い時間しか見てないのに言うのもおかしいけど、彼女たちと一緒にいる土屋さん、すっごく楽しそうだったし、自分が本当にやりたいことをやるのが一番だと思うよ。実際に僕だって、今やりたいことがほかにもあるし……」
思いがけない言葉に、アイリスはうっすらと目に涙を浮かべて返事をする。彼女の視線は左膝に着けているサポーターに向かっていた。
「……そう、見えますよね。自分でもわかってます。でも、私が本当に心の底からやりたいって思ってることは、もう二度と……昔のようにやることができないんです。……ちょっと外の空気吸ってきますね」
怪我で才能が断たれる、スポーツの悲しき宿命。(身近に実例有り)
出オチで終了、モブの悲しき宿命。




