第弐幕の陸
前回より続く過去の回想になります。
「わっ! いたたた……」
男子たちの卑劣な行為と、足首を押さえて痛がる蓮の姿に、さくらは男子たちに感じていた気持ちが爆発する。
「蓮、大丈夫!? ちょっと! さっきからあんたたち卑怯じゃない!」
「は? 俺たちはスローインの練習をしてただけだし」
「そうだそうだ! わざとじゃないのに悪者扱いされるとかありえないんですけどー!」
卑劣極まりない行為によって、このままではサッカーの素人であるさくらがキーパーをやらざるを得ない状況になる。だが降参するのはあおいに顔向けができないことと同じ、もうダメかと思ったその時だった。
「お待たせ!」
被害に遭ったあおいがガムのついた部分の髪を切って助太刀に現れたのだ。
「蓮! もう大丈夫! 揉め事の原因になったのは私なんだし、私に決着をつけさせて!」
そういってあおいは5巡目のキッカーに名乗り出て、右足をサッカーボールの上に乗せた。
「あ、後からお前が来るなんて聞いてないぞ!」
「そうだそうだ! 卑怯だぞ!」
「「お前らが言うなー!!」」
両軍ともに思わぬ助っ人の参戦だったためあおいの参戦がありかなしかでもめる小学生五人だったが、小学生、しかも女子が蹴るシュートを止められないわけがないと中学生はあおいの参加を許可する。
完全に見くびられた形になったあおいだったが、冷静にボールを蹴る。
「(女子の蹴る球なんてどうせヘロヘロだろう、いつでも止められるわ)」
ど真ん中でどっしりと構えていた中学生だったが、その思惑は見事に外れ、ゴールネットの左側が揺れた。
「こ、こんなのはまぐれだ、ここを決めてサドンデスに持ち込んでやる!」
中学生による威力のあるシュートも、あおいはなんとか止めて辛勝。3対2でさくら、蓮、あおいの勝利である。
約束通り男子からはあおいへの謝罪と、「もう二度と学校で先生の許可なくガムを嚙んだり飴をなめたり、女子をバカにしたりしません」という言質を取ることができた。
夕日が沈んでいく公園で勝利に歓喜する三人。
「私と、蓮と、あおい。私たち無敵、だね!」
「そうだな! 俺たちなら無敵だ! ……ところであおい、髪型変だぞ!」
不格好なアシンメトリーになってしまっているあおいの髪も、終わった今となってはもう笑い話だ。もっとも、あおいの髪の長さが変化していたことから水崎・火宮両家の親から事情聴取が行われ、「喧嘩になったらちゃんと先生に言うこと」と怒られ、今回の騒動をたまたま公園で目撃していた第三者によって先生にこの事件が知られ、後日再び学年集会が開かれて学年単位で先生にも怒られたというオチが付いたのだが。
子ども同士の揉め事は大人によって強制的に鎮静させられるのが世の常、しかしさくらたちは完全燃焼して後腐れがなかったからこんな風に笑い話にできました。




