第弐幕の参
昔ながらのヒーローは単独であらゆるシチュエーションに対応しますが、ここ50年くらいは協力して戦うのがセオリーになってますよね。戦隊って偉大。
普通の人であれば一生のうちでまず経験することはないであろう「巨大な怪物と戦い、町を危機から救う」という大仕事をやってのけてしまったごく普通の女子高生だった少女、火宮さくらは、一夜明けたにもかかわらずいまだに昨日起こった出来事のすべてがいまだに半信半疑であった。
すると、彼女のスマホに祖父である幹夫からイナリを連れて伊吹神社まで来るように電話がかかる。
この日は土曜で休みであることもあり、幹夫の言う通りイナリを連れて伊吹神社に向かうさくら。しかしその後を、二人組が追っていた。
伊吹神社に到着し、巫女に幹夫を呼んでもらう。しばらく経ってから、幹夫が社務所から出てくる。
「お待たせ。今日こうしてさくらを呼んだのは、そこにいるイナリくんと、振袖小町についてだ」
自分が振袖小町であることは話していない、というよりなってから会っていない。なのになぜ知っているのかと一瞬思ったさくらだったが、TVで放送されたニュースの存在がその疑問を打ち砕く。
さくらの後を追っていた二人組は、気づかれないように物陰で話に聞き耳を立てる。
「まず、振袖小町の伝説についてなんだが、あれは全部本当にあった話なんだ。振袖小町の戦いが始まったときに、それを彼女に伝えたのがキツネだったそうなんだ」
振袖小町になる前日の夜に夢で見ていたため、驚く様子のないさくらに逆に驚く幹夫。そこにイナリが口を出す。
「ボクはもう知ってたよ。だってそのキツネはボクらにとっては英雄みたいなものだし、キツネの世界じゃ知らないと恥ずかしいレベルでこの話はめちゃくちゃ有名。というかもはや常識なくらい」
「それから、当時の振袖小町は虹色の着物を着ていた。火、水、土、木、金の五つの力を使えたとされる。さくらはどの力を使えたんだい?」
さくらは自分の戦いを振り返り、開花した際に炎が自分の体を纏うようになっていたことや、聖剣・紅が炎から形成されたことから火だと答える。だが疑問を抱き質問する。
「でも私が着ていた着物は虹色じゃなくて赤かったよ? なんでなんだろ?」
「それはきっと、振袖そのものの力が分散しているからだろう。無数のカケラになって飛散したからね。ちょっと、火以外の力が使えるか今試してみてもらってもいいかい?」
さくらは自分の力を検証すべく、簪を取り出し、叫ぶ。
「開花!」
激しい赤い光に包まれたさくらは振袖小町の姿になる。うすうす勘づいていたこととはいえども、その光景と事実に目玉が飛び出るほどの勢いで二人組は目を見開いて驚く。
「いくよ、出ろ、水!」
右の掌を前にかざして叫ぶさくら。しかしその威勢のいい声に反して、現場は水を打ったかのように静まり返る。そう、どこからも雫の一滴も飛び出さなかった。
「……あれ? だったら他のを! 揺れろ、大地よ!」
念のためそのほかも試してみることになったが、大地はぴくりとも揺れず、風車が回る程度の弱い風すらも吹かず、金属でできた物体の生成もできなかった。
聖剣・紅を包むような燃え盛る火だけは無事に出すことができたため検証は終了、さくらはもとの姿に戻る。
「やっぱり私の力は火だけみたい。でも他の力も使ってみたかったなぁ」
がっかりするさくらに、イナリが案ずることはないと言わんばかりに声をかける。
「でも、火がいるんだから水、土、木、金の力が使える振袖小町もそれぞれいるのかも。そもそもボクらキツネたちが300年以上探しても見つからなかった振袖のカケラが今になって続々と見つかってるんだからさ」
「昔の振袖小町は1人で戦ってたけど、みんなで戦うってのもいいね。なんかヒーローみたいでかっこいい!」
楽しそうにしているさくらをよそに、二人組は次々と知る衝撃の事実に目と耳を疑う。
「でも、その力があることは、間違った使い方をしてはならないってことを忘れてはいけないよ。それから……」
幹夫が続きを話そうとした瞬間、矢も楯もたまらなくなった二人組の片方がさくらに向かってくる。
ある猿顔の一般市民が「1の力を5分割している」という名言を残しましたが、振袖小町はこれに則っています。物理的に分割された力をそれぞれが1つずつ持ち、能力を使っています。




