閑話 メリークリスマス
ギリギリクリスマスにまにあった!
今回は番外編
127
――12の月 24の日
日本では恋人たちにとって大きな意味をもつ日ではあるが、この世界ではどうかというと……実はこっちでも重要な日、つまりクリスマスである。
過去、転移してきたと言われる勇者によって定められた特別な安息日で、恋人たちが祝福される日として浸透していた。キリ○ト……なんの話でございましょう?
25日ではなく24日の夜。それも恋人たちのためのイベント……このいい加減な感じが過去の勇者もまた日本人だったのだということを感じさせる。
「……ぜぇ、ぜぇ。やった、遂に」
「おぉ、まさかここまで苦戦するとは思わなんだ! じゃが、見事! 完全に封印術が作用しておる。腕を揚げたのう、ナツメちゃん!」
今、僕の目の前には黒々と光沢を放つ棺のようなものが鎮座している。
僕とお爺ちゃんがこの日のために作り上げた特製の棺。何ヵ月も法力を込め続け、上級悪魔ですら封じることが可能と、元教皇からお墨付きの自慢の封印棺。
僕の下着を餌に釣り上げ、苦戦の末に、かの淫獣を封じる事に成功した。中からは僕の下着を啜る音が聞こえており、なんとも不快な気持ちになるが、今日は我慢をするしかない。この音がしている間は安全であるという証左でもあるのだから。
「お爺ちゃん、今回の封印はどれくらい持つと思う?」
「そうじゃな、本来であれば自力の解呪など不可能な代物じゃが……まあ二日は持つと思うぞい」
「おっけ! 念には念を入れて、湖の底に沈めておこう」
「……容赦ないのう」
容赦なんてないに決まっている。相手はあの淫獣。百万分の一に薄めたラブコメ成分ですら一キロ先で嗅ぎ分けるというモンスター。更には過去幾度も邪魔されないように封印したのに、大事な場面には必ず駆けつけるバイタリティ。油断なんか少しもできないよ。
「毎回封印するナツメちゃんも大概じゃとおもうがのう……」
「と、とにかく。僕はクリスマスに懸けてるの。今日という今日は秀彦に僕の気持ちを……気持ち……僕の……!?」
(ぶしゅぅっ!)
「想像しただけで真っ赤になって意識を失いおった……」
薄れ行く意識のなかで、呆れるお爺ちゃんの声を聞いたような気がしたけど、ほっといて! 僕、今回こそは本気なんです!!
……――――
昼過ぎの廊下。そこを僕とお爺ちゃんは全力で駆けていく。後ろからマウス君も付いてきているので、すれ違うメイドさん達から小さな悲鳴が上がっている。
「な、なんですぐ起こしてくれなかったの、お爺ちゃん!」
「無茶いわんでくれい! わしゃあ杖なんじゃ、文字通り手も足もでんわい!」
「チッチゥッ!」
理不尽な僕に二人(?)から非難の声が上がる。うう、分かっています。悪いのは僕です。今日という日に舞い上がって勝手に意識を失った愚か者です。
意識を取り戻したとき、時計は既に正午に差し掛かっていた。クリスマスとはいえ、騎士の皆さんは休みなく鍛練をしているはずなので、今日も秀彦は修練所にいるはず……
……だったのだけど。
「……え? 秀彦は今日はいない?」
なんとかお昼前に修練所にたどり着いた僕を待っていたのは、騎士さんから伝えられた絶望的な一言だった。
「申し訳ありません聖女様。普段であればこの時間はヒデヒコ様も我らと共に修練に励んでおられるのですが。本日は野暮用があるので来れないと……」
……なんと間の悪い。いつもは訓練訓練で録に遊んでもくれない癖に。何でクリスマスに限っていないのか。
「何でしたら私から伝言をお伝えしましょうか?」
「あ、ううん。自分で探して直接話します。ありがとうございました。お仕事頑張ってくださいね!」
そういいながら修練所にいる皆さんに疲労回復と範囲回復の法術をかけてからこの場所をあとにした。
「ああ、聖女様……我らのために癒しの法術を」
「なんとお優しい。そして相変わらず可憐だ……俺は国のためではなく聖女様のために戦うぞ」
「貴様! 上官を差し置いてよくも聖女様と会話など!」
「くそ、あの笑顔を至近距離で! 来い! 貴様は今から百人組手だ!」
「ひぃっ!?」
――何やら修練所から聞こえる声が大きくなったような気がするけど、まあいいか。とりあえず今はゴリラの捜索だ。
「ふぅ……相変わらずナツメちゃんは罪造りな娘じゃのう……」
「ん? 何か言った?」
「なーんでもないわい」
「チッチウ!」
またまた二人(?)から責めるような視線を感じる。解せん……
「とにかく目撃情報を探そうか。あんな巨大な生き物だから目撃者も多いでしょ」
「なんちゅう言われようじゃ……」
手近なところで先ずは厨房かな? お腹をすかせた秀彦が、食物を求めて厨房に現れるのは動物行動学会では有名な話だからね。
「――ヒデヒコ様ですか? 今日は見てませんね。といいますか、あの方が厨房に顔を出されることは殆どございませんよ?」
「え!? 食べ物を求めてフラフラ現れたりしないんですか?」
「はは、聖女様は冗談がお上手なのですな。ヒデヒコ様は確かに健啖家では御座いますが、それ以上に紳士であられますからね。つまみ食いのような事はなさいませんよ」
「なん……だと……」
意外な事実に一瞬めまいを覚えてしまった。ド本命の餌場がまさかの空振り……
「そもそも、野暮用で出掛けたというのであれば、城内にはおらんのではないかの?」
「!」
言われてみればそうだ。僕は料理長にお礼をいうと厨房をあとにした。廊下に出た僕は足早に門番をしている衛兵の詰め所に行き、秀彦が外に行ったのかを訪ねてみた。
「――ヒデヒコ様ですか。確かに朝早くに出掛けてらっしゃいましたよ。なんでも受けとるものがあるとかで。恐らく商店街の辺りにおられるのではないかと。夕方ごろ戻るといっておられましたね」
「! やっぱり外に出てたのか。ありがとうございます」
「あ、聖女様! あちゃ、もういっちゃったか」
「おう、今だれか来てたか?」
「ああ、聖女様だよ。なんでもヒデヒコ様を探してたらしいから、外に行ったって教えて差し上げたんだよ」
「……え? お前それはひょっとしたらヤバイんじゃないか?」
「……え?」
……――
「――ところでナツメちゃんや。なんで今日はヒデヒコ殿と事前に約束しておかなかったんじゃ?」
「え、だってこう言うのはサプライズでプレゼントした方がいいかなって」
「そういうのはクリスマスを必ず一緒にすごす間柄ですることじゃと思うがのう。ナツメちゃんとヒデヒコ殿は恋人というわけではないのじゃろ?」
「……え?」
お爺ちゃんの何気ない一言は僕の背中に氷のような冷たさを感じさせた。
「あ、いや。今のはちと意地悪な物言いじゃったのう。大丈夫じゃよ、端から見ても二人はお似合いじゃ」
いや、おじいちゃんの言う通りだ。僕は何を一人で舞い上がっていたんだろう。今は女の子になっているけど、ヒデからしたら僕は元男友達。そもそも向こうに居た頃、二人でクリスマスに過ごしたことなんてなかった。
そんな事を考え出したら嫌な想像がどんどん膨らんで……
「おぉ、噂をすればなんとやらじゃ! あそこにいるのはヒデヒコ殿では!?」
「あ、本当だ。おーい、ひでひ……こ?」
おじいちゃんの声で気がつき前を向くと、そこには最近女の子に人気と噂の宝石店が建っていた。秀彦は丁度その店から出てくるところだった。
……トリーシャちゃんと二人で。
「あ、あ……」
――あ、あれぇ、おかしいな。なんで二人を見ただけでこんなに震えちゃうのかな? 胸もドキドキして、なのに体はどんどんと冷えていく。二人が楽しそうにしているのを見ると、息が苦しい……
「……ハッ……ハァッ」
それに、なんか目も見え辛いな。なんだよ、視界がぐにゃぐにゃだ……
カロンッ
乾いた音が聞こえる。手が震えてお爺ちゃんを手離しちゃったらしい。商店街の雑踏の中でも妙に耳につくその音は、道行く人の視線を集めてしまった。どうやらそれは秀彦達の耳にも届いてしまったらしい。
だめだ、なんでもない振りをしないと。二人の邪魔をしちゃう。でも、そう思えば思うほど、僕の意に反して涙が止まらない。
こっちを見た秀彦は暫く呆けたあと、僕のかおを見て驚いたように目を見張った。
……泣いてるの、気がつかれた!
「……ッッ!」
「ま、待つんじゃナツメちゃん……~~ッ…………ッ!!!」
お爺ちゃんが何かを言っていたけど僕はもう何が何やら分からなくなってしまい、取り出した仮面の力で雑踏へと溶け込んでいった。
――どれだけ走っただろう。気がつくと僕は市街地からは随分離れた牧草地で転んでいた。先日買った可愛らしいファー付きの白い外套が見るも無惨な姿になっている。
どうやら無我夢中で走ってる間に足がもつれて転んでしまったらしい。
「アメ爺ちゃんも落としちゃって……僕なにやってるんだろう……」
こんなボロボロなのに、秀彦にあげるプレゼントは、汚れないように庇ってしまっていた。なんだか滑稽すぎて笑えてきてしまう。
バカなんじゃないだろうか。逆の立場で考えれば分かることじゃないか。秀彦が女の子になって、好きですって言われて受け入れられるのか?
たぶん無理だ。僕は秀彦が大好きだし、ずっと一緒にいたいって思ってる。昔から思ってた。だけど、それはあくまで友人としてだ。
それなのに、何を勘違いしてたのか。そりゃトリーシャちゃんみたいなかわいいメイドさんがそばにいるのに、男友達の女モドキに振り向いてくれるわけないじゃないか。
「あはは、なにやってるんだか……あは、あはははは……は……ふ、ぐぅっ……ッ……! うぅっ」
ダメだ、涙が止まらない。ポロポロポロとなんなんだよ。心はこんなに女々しくなってるのに。女の子扱いしてほしいのに。なんで僕は、男なんかに生まれちゃったんだ……
「チチゥ……」
小さな鳴き声に振り向くと、僕の小さな友達が心配そうに立っていた。
「あは、マウス君は来てくれたんだね。ごめんね、ちょっとだけ泣いたら元気になるから……」
プレゼントの包みを抱き締めて、僕は声を揚げて泣いた。
――暫く泣いて泣いて泣きまくって、流石に泣き疲れたので、足元でずっと見守ってくれていた友達に話しかける。
「突然走っちゃってごめんね。お爺ちゃんにも後で謝らないと。多分秀彦が拾ってくれているだろうから盗難の心配はないと思うけど、落としたままなんて失礼だよね……」
「……たく、そう思うなら町中に捨てていくんじゃねえよ」
後ろから突然かけられた声に振り向くと、目の前にアメ爺ちゃんを突きつけられた。視界一杯にアメジストのオーブが広がっているのでなにも見えないが、声の主は容易に想像がついた。
「ひで……ひこ?」
「他の何に見えてるんだ」
杖を受けとると呆れた顔の秀彦の顔が見える。その顔を見るだけでまた鼻がツンとしてきたけれど、散々泣いてたお陰でなんとかこらえることができた。
「まったくどうしたんだお前。突然泣いて逃げるとか意味がわからん。あーあ、服も泥々じゃねえか。
……立てるか?」
「う、うん……痛っ!?」
「おっと!」
突然の痛みに躓き倒れそうになったところを秀彦が抱き止める。ついさっき失恋したばかりなのに、この状況に胸が早鐘を打つ。
「足捻ってるじゃねえか、背中のれよ」
「え、いいよ。服、汚れちゃう」
「いいから! 頭つかんで引きずるぞ?」
「わ、わかったよ。乱暴だな……」
「よし、ちゃんと捕まってろよ」
「う、うん……」
日も落ちかけた郊外の農場。人気のない畦道に、ジャリジャリと秀彦の足音だけが鳴り続ける……
「……なあ」
「ねえ!」
沈黙に耐えかねて声をかけると、どうやら向こうもまったく同じことを考えていたらしく、同時に話しかけて再び沈黙してしまう。
「ど、どうぞ」
「いや、お前の方こそ」
日本人特有の気まずいやり取りが続き、流石に埒があかないので僕の方から話すことにした。
「あ、あのね。今日は……ごめんね」
「……あ? さっきのいきなり全力疾走とかいう奇行の話か? あれは確かに迷惑だ、二度とするんじゃねえぞ。まったく、異常行動は姉貴だけで満腹なんだわ!」
「そ、それもゴメン。でもそうじゃなくて。僕が変な事したせいで、デートの邪魔しちゃったでしょ? だからゴメン」
「……」
僕の謝罪に流れる沈黙。やっぱ怒ってるのかな。そう思った時だった。
「………………は????」
「へ?」
驚いたようにこっちを見たヒデヒコは、ゴリラがバナナ鉄砲を食らったような顔をしていた。
「なに言ってるんだお前? 買い物は確かに邪魔されたけどな? デー……なに???」
「え?」
あれえ? なんかへんだぞ?
「ねえ、秀彦。一つ確認」
「おう?」
「秀彦はトリーシャさんとお出掛けしてたんだよね?」
「ん、まあそうだな?」
「二人はデートしてたんじゃないの?」
「……はぁっ!? お前そんなこと考えてたのか。違えよ、トリーシャには買い物に付き合ってもらってただけだ」
え? ……え??
「だって、今日はクリスマスだよ? そんな日に態々出掛けるなんて。ただの買い物のわけないじゃない! ヒデの嘘つき!!」
なんでそんな嘘つくんだよ、僕に変な期待をさせないでよ。
「た、ただの買い物って訳じゃねえけどよ……」
「ほらやっぱりそうじゃん! ダメだよ、こういう事ちゃんとしないと! 照れるからって誤魔化してるの見たら、トリーシャちゃん傷つくよ!」
「だー、そういうのじゃねえと言ってるだろうが! そういうデートみたいな話じゃねえんだよ!」
「じゃあ何を買ってたんだよ! 態々クリスマスに二人で買い物なんて普通はしないだろ」
「そ、それは、買いに行ける日が今日しかなかったんだよ!」
「はぁ? それなら他の日でもよかっただろ? なんでクリスマスなんだよ!」
「……う、ぐ。そ、それは」
歯切れが悪くなる秀彦。ほら見たことか。なんでそういう大事なことを誤魔化すんだよ。らしくないぞ。
「くっそ、これじゃあ段取りが……」
「ん? なに」
「あー、もういい! ナツメ、一回降りろ!」
頭をガリガリ掻きながら僕に添えた手を緩め、ゆっくりと地面におろす秀彦。僕を見つめる顔はなんだか真剣で、これから決定的な失恋をすることが分かっているのにドキドキしてしまう。
「ほれ」
懐から出した手を僕の眼前に突き出す秀彦。いきなり顔面を殴られるのかと思った僕が呆けていると、秀彦の顔はみるみる赤く染まり黒目が左右に揺れ始めた。
「だああああ、早く受けとれよ! 間が持たねえだろう!」
「ほぇっ!?」
どうやら突き出された手には何かが握られているらしい。手がでかすぎて、上段正拳突きにしか見えなかったため気がつかなかった……
僕が恐る恐る手を差し出すと、綺麗な小箱が渡される。
「……なにこれ?」
「おま……察しが悪いにも程があるだろ!!」
「怒鳴らないでよ! いきなり渡されても意味わかんないにきまってんだろ!!」
突然怒鳴られたのでこちらもムカっとなって怒鳴り返してしまった。
「さっき自分でいってただろ!? なんでわかんねえんだ!」
「はあ? 何にも言ってないし。ちゃんと言ってくれなきゃ訳が分からないに決まってんだろ!!」
「クリスマスだ! ク・リ・ス・マ・ス!! さっき自分で言ってたのになんでわからねえ!?」
「はあ? クリスマスだからなんだってんだよ!」
「プレゼントに決まってんだろ、このバカ!!」
「バカとはなんだ! このやろ……へ?」
今なんと言いましたか?
「やっと大人しくなりやがったか。この狂犬! なんでプレゼント渡してキレられてんだ俺は……」
クリスマスプレゼント? 僕に? ナンデ……?
「……秀彦は、トリーシャちゃんの事が好きなんじゃないの?」
「だからなんでそう思ったんだよ! トリーシャにはプレゼントの相談しただけだ。さっきも言ったろうが! 今日買いに行ったのは、クリスマスプレゼントだからだ! 明日買いに行けるわけねえだろ!
まったく、お前がいきなり走り出すからトリーシャにも早く追いかけろって怒鳴られたし。なんで俺はこんなに怒られてるんだ……?」
ぶつぶつ文句を言っているけど、僕はそれどころではない。つまりは僕の早とちり……ううん。そこはどうでもいい。いや、どうでもよくはないけどどうでもいい。
渡された小箱をどうすればいいのかも分からず呆然と眺めていると、秀彦がわざとらしい咳払いをした。
「あー、棗さん? そろそろ開けてみちゃくれませんかね? 俺は喧嘩がしたくてそれを渡したわけではなんだが?」
「あ、は、はい……ふぁ!」
言われて小箱を開くと、そこには可愛らしいデザインの指輪が入っていた。
「プレゼントで指輪ってえとなんだか重いって思ったんだけどよ。こっちの世界では世話になった人間に守護石のついた指輪を渡すのは良くある話なんだと。だから……そのなんだ……か、勘違いしないでよね!」
「ぶはっ!ゴリラのツンデレとか誰トクなんだよ!」
「笑うんじゃねえよ!」
あはは、なんだ。全部僕の早とちりだったのか。言い訳しながら照れてる秀彦を見ていたら、無性におかしくて大笑いしちゃった。よし、それじゃあもう少しサプライズをしてもらっちゃおうかな。
「秀彦!」
「な、なんだ?」
「……んっ!」
僕は秀彦に向かって左手を差し出した。
「指輪、ヒデがつけて?」
「ぬあっ!? なにいってやがる!」
「別に変な意味じゃない、親愛の証なんでしょ?」
「そ、それはそうだが……」
「じゃあ、はい!」
「うぐぐ……」
観念した秀彦はブルブル震えながら僕の指に指輪をはめる。
「……中指……か」
「な、なんだよ?」
「べっつにー、じゃあ……はい!」
「うお!?」
僕はこの日のために編んでおいた武器を取りだし、秀彦の首に巻く。
「これは僕からの親愛のやつな! 手編みだから暖かいだろ?」
「お、おう。お前からのもあるのかよ」
「感謝しろよ……へっくち!!」
安心したせいか、急に肌寒さを感じて思わずくしゃみが出る。
「……あ」
「へぇ……道理で冷えると思ったら」
気がつけば辺りには白い結晶が降り注いでいた。
「雪……きれい」
「……おい、呆けてんな! 本降りになる前に帰っぞ!」
もう、このゴリラは……情緒ってものがない!
「てやっ!」
「うお! 背中にはもっと優しくのりやがれ!!」
でもまあ、指輪に免じて許してあげますか……
「秀彦!」
「おん?」
「メリークリスマス!」
「おう! メリークリスマス!」
「メリクリなのじゃ!」
「チッチゥッ!!」
――お爺ちゃん、マウス君……全部聞いてたのね!?
「因みにクリスマスに指輪を贈るのは恋人たち愛の印だったはずじゃがのう?」
「ん、お爺ちゃん何か言った?」
「いや、なんも……はてさて、どっちが考えたのかのう?」
???「ブクブクブク……」
クリスマスプレゼントに感想とレビューくだたい!!




