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【連載版】俺、また馬に生まれました  作者: 猫のアミーゴ


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第5話 飛越

今日は初めて会う人と一緒にお散歩している。

いつもはおっさんが俺の引き綱をもっているのだけど、今日はこのノブさんという人が持っている。


ノブさんは優しい声でずっと俺に話しかけながら歩いている。

「これからよろしくね。スイートポテト、スーやんだったね。」

ノブさんにおっさんは笑顔だったけど、あんちゃんは顔が曇っていた気がする。

人見知りなのかな。それとも馬があわない?


お散歩のあとはノブさんがブラッシングしてくれる。

もしかして、おっさんの助手なのか?おっさん出世したのかなぁ。

だけどその日は、あっさりノブさんは帰っていった。

でも帰る前にリンゴくれた。うまい。悪い人じゃないよね?


今日もノブさんがやってきた。

「おはよう。スーやん」

引き綱をノブさんが持つ。おっさん出世したんだね。ちょっとさみしいよ。

ノブさんはあんちゃんと話しながら俺と一緒に歩き出した。

「アキくん。スイートポテトは、まだ障害に転向するとは限らないよ」

「……」

「僕は荒川先生からスーやんの調教依頼を受けているけど、スーやんに障害が走れるかはまだわからないよ」

「……」

穏やかな声で話すノブさんに対してあんちゃんは無言だった。やっぱり馬あわない??

「君とスーやんのレースも見せてもらった。先生のいうとおりスーやんは頭がいいと思う。奇行もあるけど」

頭いいってほめられた。つづけてノブさんは話す。もっとほめて。

「スタートは抜群、道中もスタミナを消費しないようにしている。あとコーナーにまったくロスがない。」

ノブさんは俺の頭をなでながら続ける。

「レースの上手さでスピード、瞬発力がないのをカバーしている。もしかしたら2勝クラスまではそれでいけるかもしれない。でもそこから先はそれだけじゃ無理だ。」

ノブさんはあんちゃんをじっと見つめた。

「スーやんはまだ成長期だから…」

「その可能性もある。ただ障害ならもっと可能性があると先生は考えられたようだよ。」

「……ノブさんは、スーやんが障害に転向したら騎乗されるのですよね」

二人は仲直りするのかな。友達になるのかなぁ。

「調教するからには初戦までは騎乗するつもりだ。君も知ってるかもしれないが障害を専門にしている騎手は少ない。だから僕がずっとスーやんの専任になれるとは限らない。」

「……オレが障害でもスーやんに乗ることできますか?」

絞りだすようなあんちゃんの声に、ノブさんは困ったような顔で

「平地と障害の両立は可能だけど覚悟がいると思う。それに騎乗は先生と馬主さん次第だよ。」

固まったあんちゃんの肩をノブさんがやさしくポンポンする。

「障害に騎乗する騎手が増えることは歓迎するよ。だけど、障害を走る準備は君もスーやんもまだできてない。僕はその手伝いなんだよ。」

「オレ、先生と話してきます!!!!」

あんちゃんは駆けだしていった。

「青春だねぇ~。」

ノブさんはにやりと笑った。


朝のお散歩が終わり、調教の時間に再びノブさんがやってきた。

「スーやん、僕と一緒に今日は障害の練習をしようね」

おー、もしかして柵飛ぶの?俺飛べるの??

どきどきしながら、引かれていった先には丸太が並んでいた。

「この横木(おうぼく)を跨いで歩くんだよ」

え?飛ばないの?

ノブさんを背中に乗せて、丸太に向かっていく。

んー、足ひっかけそうで歩きにくいなー。

「スーやん、いい感じだよ。もう一回ね」

繰り返し丸太を跨いで歩く。

「今日はこの後、坂路だね」

結局飛んでないけど、こんなので俺飛べるのかなぁ?


だいたい毎日ノブさんがやってくるようになった。

あんちゃんも時々きて俺の調教を見ている。

ジャンプの練習と聞いていたけど、丸太が大きくなっただけで、まだ飛んでない。

でも丸太またぐの得意になったよ。

「スーやん、今日はクロスバーを飛んでみようか、アキくん50cmで準備手伝ってー」

お、今日は飛べるの?ついに飛ぶの?

丸太より高いけどいけそう。あの高さなら頭打たないよね。きっと。

「スーやん、大丈夫いけるよ」

ノブさんに促されて俺は飛んだ!…簡単じゃん。

嬉しくなってノブさんを乗せて何回も飛んだ。

「ふむ。アキくん、僕が調教できないとき。スーやんの調教頼んでいいかな?」

「やります。やらせてください!」

あんちゃんも乗るのかぁ。

「今日はジャンプはここまで、坂路だよ」

ちぇー、もう終わりなのかぁ。飛んだのに。

「アキくん。スーやんのフォームはわりといいけど、飛越力が低いからじっくり鍛えていかないといけないと思う。」

「坂路を中心にバーの高さは上がっていること気づかせないように育てると先生に伝えておくよ」

俺のジャンプほめられてる?飛べたもんねー。


最近、暑くなってきた。

毎日ノブさんとあんちゃんと一緒に俺は飛びまくっていた。

エースがついにG1を勝ったらしい。ダービー馬になったんだって。

G1を取るまでに重賞とG1で2着を3回って聞いてたからエースに勝った馬は俺以外に3頭もいるのかと思ったら、俺以外全部同じ馬だったんだって。

良かったぁ。俺の価値が下がらないで済む。これでリンゴまたもらえるかも。

そして俺きづいちゃったんだ。今日いつもの馬場じゃないところに連れていかれた。

思ったより柵は大きくない気がする。しかもひとつじゃない。

いけそうな気がする。今日はノブさんが乗るみたい。

「スーやん。大丈夫。いけるよ」

ノブさんは俺が覚悟する時間をいつもくれる。ノブさんは無理を言わない。じゃ飛べるんだ。

俺は柵に向かっていった。

柵まであと3歩ってところでスピードを上げて、しっかり前を見る。そして着地。

そのまま続く三つの柵も、同じように飛び越えた。

「スーやん。完璧だよ。忘れないようにもう一回。」

ノブさんは上手くいったときはほめて、繰り返させる。ダメなときは横に枝を置いて、俺がそこを見るように促す。

今のは良かったんだ。

「そろそろ試験を受けれるね」

試験?レースじゃなくて?


最近、調教の終わりにノブさんがくれるおやつはニンジンだったんだけど、今日はリンゴだった。

エース。G1おめでとう。リンゴうまい。

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