第17話 スーやんの夏休み
俺は今、馬運車に乗せられて移動中だ。
おっさんがいない。
このパターンは、カイザーの記憶を思い出す限り、きっとあれだ。
そう。
放牧。
夏のリゾート!!
俺は、目の前にある干し草をがっつり食べながら、小窓から外を眺めた。
馬運車が止まった。休憩かな。
俺は、馬運車から降ろされた。
「スーちゃん、お疲れ様。汗かいてるね。シャワー浴びようね。」
やさしそうなお姉さんが、冷たい水で体を流してくれた。
きれいな馬房に案内される。馬房には、お水と青草が準備されていた。
……放牧だ。パラダイスだ。
俺は初日にもかかわらず、爆睡した。
「スーちゃんは、図太いね。」
翌朝、お姉さんにいわれた。
だって、放牧だよ。
リゾートだよ。
涼しくて寝やすいんだもん。
いいじゃないかぁ。
最初の一週間は、ウォーキングマシンで軽い運動。
あとは涼しい馬房で、ゆったりと過ごした。
牧場の青草がおいしい。もりもり食べちゃう。
……俺、ちょっと丸くなったかも。
「スーちゃん、今日は調教に行こうね」
お姉さん、俺が太ったかもと思ってますね?
……俺は、素直に従った。
1週間ぶりに、思いっきりコースを走る。
背中に乗っているのは、あんちゃんと同じ年齢ぐらいのおにいさんだ。
コースを1周した後は、坂路に向かう。
最初は軽く走り、最後の一本だけ全力だった。
走り終えた後、おにいさんが、ポケットから取り出したクッキーをくれた。
これ、ニンジンとリンゴの味がする!?
初めての味に俺は夢中で咀嚼する。
……
おにいさんをじっと見つめた。
もう一個ほしいなー。ほしいなー。ほしいなー。
「スーちゃん。1個だけだよ」
ダメだった。おっさんも2個目はくれないんだよねー。
じゃ、走りたい。
おにいさんに、走りたいアピールをする。
「申し送り通り、タフだねぇ。スーちゃんは」
うん。俺頑張るよ。
頭の中で、まん丸なエースが思い浮かんだ。
思う存分、坂路を楽しんだ。
きっと、今日もごはんがおいしい。
最後におにいさんは、もう1個クッキーをくれた。
おっさん、元気にしてるかなぁ。
それから3週間ほど、
俺は、新鮮な青草を堪能し、坂路を走りまくり、涼しい馬房でくつろぐ日々を送った。
「スーちゃん。元気でね。」
お姉さんやお兄さんに見送られながら、俺は馬運車に乗せられた。
……俺の夏休みは、終わった。
青草、クッキー、涼しい馬房……さようなら。
俺は、厩舎に帰ってきた。
「スーやん、おかえり」
おっさんが待っていてくれた。
帰ってきた俺の体を、冷たい水で流してくれた。
馬房もきれいに整えられていた。青草はない……。
「今日は特別だよ」
おっさん特製のリンゴ飴をくれた。
おっさん好きー。
残暑が残る馬房で、翌朝まで俺は爆睡した。
翌朝、あんちゃんとノブさんが、やってきた。
「スーやん。ひとまわり、成長したねぇ」
「胸回りがすごいね」
……俺、丸くなったっていわれている???
腹が出てるってこと?!
お散歩中のエースが、近くを通った。
「お、スーやんじゃん。見違えたな」
エースは、やっぱり丸くなっていた……。
俺も丸くなったのかなぁ。
今日から調教、頑張ろう!目指せ!ダイエットだ。
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本人は☆よりリンゴを要求すると思うので。




