ソンナ村人再生
第4話 ソンナ村人再生
鉱石講師が、意外にも畑に詳しかった。
「昔、世話になった家が農家でしてね。」
そう言って、土をひとつかみ掴む。 握り、崩し、そして――口に入れた。
「……よく食べられるな。」
思わず社長が呟く。 講師は真顔のままだった。
「土が悪いですね。」
「それは見れば分かる。だから堆肥を撒いている。」
講師は首を振る。
「まず硬い。水はけが良すぎる。そして――酸性です。」
「酸性……pHか。」
社長の脳裏に数値が浮かぶ。
「貝灰を撒けば改善するか?」
「恐らく、前の領主も試したでしょう。専門家はいたはずですから。」
ぐっと言葉に詰まる。
畑を見渡す。
ひび割れた土。痩せた苗。風に揺れる、力のない葉。
「しかも、あちらは油の池があります。」
視線の先には、黒く光る水たまり。
「粘土質で排水も偏っている。油が混じれば作物は育ちません。」
あの異臭の正体か。
「全部入れ替えるしかないな……。」
社長は低く呟いた。
「重機があれば可能ですが。」
「トラックもショベルもない。人力では無理だ。」
静寂が落ちる。
それでも――村人たちは、この土地で作物を育てようとしてきたのだ。
「……ある意味、凄いな。」
呟きには、わずかな敬意が滲む。
だが――次の瞬間、その表情が変わった。
「だが、やり方が間違っている。」
はっきりと言い切る。
「この土地で農業を続けるのは、消耗戦だ。努力しても報われない。」
村人たちが息を呑む。
「俺は――そんなやり方はさせない。」
一歩、前に出る。
「農業に資金は入れない。」
ざわり、と空気が揺れた。
講師が目を見開く。
「ここは工業村にする。」
迷いはない。
「畑ではなく、工場で食わせる。」
断言だった。
痩せた土地でも、蒸気は裏切らない。
電気は土を選ばない。
「全員、働かせる。全員、食わせる。」
強く言い切る。
「パンネボアンヌのような工業村に変える。」
それは宣言であり――未来の提示だった。
ソンナ村は、もはや農村ではない。
産業で生きる村へ。
その瞬間、村の運命は大きく舵を切った。
この決断が、すべてを変えることになる…。
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