蒸気トラック量産開始2
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第26話 蒸気トラック量産開始2
ヤマタニは事務所の椅子に座り、机を指で叩いた。
トントン……。
熟練者が足りない。
これは今すぐ解決できる問題ではない。
(だが――方法はある。)
ヤマタニは立ち上がった。
「マックス!」
工房へ戻り、親父を呼ぶ。
「はい?」
「シリンダーは全部ここで作ってるのか?」
「そりゃそうですよ。あんなもん他じゃ作れません。」
ヤマタニは首を振る。
「いや――作れる。」
「え?」
「鋳造だけなら、街の鋳物屋でもできる。」
マックスは考え込む。
「……確かに、鋳物まではいけますね。」
「仕上げ削りだけ、ここでやる。」
一拍。
「なるほど……!」
マックスの目が光る。
ヤマタニは続けた。
「鋳造を外に出す。」
「荒削りも外。」
「最後の精密加工だけ、ここでやる。」
指を三つ立てる。
「工程を分ける。」
「そうすりゃ――詰まりは消える。」
マックスはニヤリと笑った。
「社長さん……それ、回りますよ。」
ヤマタニもわずかに笑う。
「産業ってのはな。」
肩をすくめた。
「全部、自分でやるもんじゃない。」
「仕事を分けるんだ。」
「そうすれば――全員が儲かる。」
その日のうちに、街の鋳物屋へ話が通された。
鋳物屋たちは色めき立つ。
鍋や鍬だけだった仕事に、蒸気機関の部品という“新しい需要”が流れ込んできたのだ。
数日後――
荷車が、列をなしてやってくる。
「来たぞ!」
工房の少年たちが叫ぶ。
荷台には、山のようなシリンダー鋳物。
「こんなに……!」
以前とは、比べ物にならない量だった。
マックスが大声を張り上げる。
「野郎ども!」
「削るぞ!!」
ガガガガガガ!!
工房に、轟音が響く。
削る。削る。削る。
だが――止まらない。
素材が尽きないのだ。
次々と運ばれてくる。
回り始めている。
街全体が。
ヤマタニは、その光景を遠くから見ていた。
(回ったな。)
静かに、確信する。
今までは「工場」だった。
だが、違う。
「これは――産業だ。」
鋳物屋が作る。
工房が仕上げる。
組立場が完成させる。
すべてが繋がり、流れている。
「……いいな。」
その目は、すでに先を見ている。
(これで終わりじゃない。)
蒸気トラックは増える。
もっと速く。
もっと多く。
そして――
「街が、金を生み始める。」
その中心にいるのは、自分だ。
ヤマタニは、小さく笑った。
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