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9話 アルナの冒険者登録

 デリントンの街へアルナを案内していく。

壁門の警部兵がいつものように立っている。



「おおーー、今日は帰りが早いな。それに覆面の女性は誰だ? 顔を見せてもらわないと門を通すことはできないぞ」


「私は世界樹の里からきたエルフのアルナ。怪しいものではないわ」


「こちらにも規則がある。覆面を取ってもらわないと壁門を通すわけにはいかない」



 アルナは小さくため息を吐いて、覆面を取って素顔を見せる。


 少し吊り上がった目尻、奥二重のまぶた。ブルーの瞳が美しい。

エルフの特徴である、小さいあご、小さくて可愛い唇が印象的だ。



「素顔を見せたわ。これでいいんでしょう!」


「これはまたきれいな嬢ちゃんだな。わかった。通ってよし」



 警備兵に素顔を見せた後、何も言わずにアルナは覆面をつけなおした。


 まだ街は夕方前で、街の大通りには露天商も並んで大変賑わっている。

デリントンの街へ入ったアルナは、人の多さに驚く。



「こんなにも人族の街は繁栄しているのか? 街とは大きなものだな」


「デリントンの街はエルファーレ王国の西の辺境地帯にある街だから、街の規模としては小さいほうなんだけどね」


「なんだと、これが小さい街だというのか。全く信じられないわ」



 確かに森の中で暮らしてきたエルフなら、この街の大きさでも驚くだろう。



「私達もデリントンの街へ初めて来た時は驚いたのよ。人族の繁栄ってすごいよね」


「そうですね。人族は集団で暮らすとは聞いていましたが、規模がすごいですね」



 スーラとウーラの双子もアルナの意見に賛同する。

初めてデリントンの街へ双子を連れてきた時、嬉しそうにしていたが、そこまで驚いていたとは思わなかった。


 そういえば十三歳の時に、生まれ育ったコールス村からデリントンの街へ来た時、キースも大きな街だと思って驚いた記憶がある。



「とにかく立っていても仕方がない。冒険者ギルドへ向かおう。アルナも冒険者登録が必要なことだし」



 そう言って、キースは大通りを歩きだした。

その後ろを双子とアルナが同行する。


 冒険者ギルドへ到着した3人は、受付カウンターへ向かう。

受付カウンターではロミンダが忙しそうに働いていた。



「あら、キース、今日は帰りが早いのですね。また人が増えているように思いますが、一体どうしたんですか?」


「ロミンダ……実は西の森でオーガ三体と戦っているエルフのアルナと偶然出会って、アルナがデリントンの街で冒険者をしたいというから案内してきたんだ」


「また西の森にオーガが三体も現れたのですか。これは緊急事態ですね。『シュトラウス』に依頼を要請しましょう。西の森を一度徹底的に捜索しなくてはいけません」



 『シュトラウス』の名前が出る度に、キースの心の傷がうずく。



「それでオーガ三体はどうなったのですか? まさかキースさん、戦ったりしていませんよね?」


「実はオーガ三体と戦いになって、何とか討伐してきたよ」


「あれだけ危険な行動は慎んでくださいと言っているのに、キースさんは言うことを聞いてくれるつもりはなさそうですね」



 そう言ってロミンダの眉が寄る。

これ以上、ロミンダの機嫌を損ねたくない。



「ああー……俺は支援魔法をかけていただけだし、オーガとの戦いはスーラとウーラとアルナが戦った。だから俺は安全だったから大丈夫だよ」


「何言ってんの。最後のオーガを倒したのはキースじゃない。剣で貫いて倒した時、凄いなって思ったんだからね」



 スーラ……ロミンダの前で、その事実を話してほしくなかったぞ。

なぜウーラとアルナも後ろで頷いているんだ。


「あれは、アルナに魔法障壁もしてもらっていたし、俺はただ剣を突き出しただけだから」


「そんな言い訳は後から別室で聞きましょう」



 ロミンダはゆっくりと微笑んでいるが、口元が尖っている。

不満があることがすぐにわかる。



「それではオーガの魔石と討伐部位を解体所のカウンタ―に置いてください。その他の魔獣も討伐してあれば、魔石と討伐部位を置いてくださいね。計算いたしますから」



 キース達はリュックから魔石と討伐部位を出して、カウンターの上に乗せる。



「オークの魔石と討伐部位が四つ。オーガの魔石と討伐部位が三つ。合計で金貨24枚の交換となります」



 金貨24枚がカウンタ―の受け皿の上に乗せられる。今までで一番の稼ぎだ。オーク四体の討伐金の額も大きい。オークだけで金貨12枚になるとは思ってもみなかった。


 キースはそんなことを考えながら、受け皿の上に置かれている金貨二十四枚を革袋へ入れる。



「Dランク魔獣オークを四体も討伐していますが、これもどういうことですか? キースさん達は確かEランク魔獣の討伐に行かれたはずですよね。このことも後で聞かせてもらいます」



 ロミンダの厳しい口調でキースに告げる。

そう言えばオークを討伐したことをロミンダに報告するのを忘れていた。



「それでは冒険者登録に移りましょう。覆面をしていますがエルフのようですね。」


「世界樹の森の里に住むエルフのアルナよ。よろしくお願いするわ」


「ここは冒険者ギルド、デリントン支部です。失礼ですが、覆面を外してもらえますか。素顔を確かめる必要がありますので」


「ここでも素顔を見せないといけないのか。エルフは高貴な種族。あまり素顔を人前に出したくないのだけれど」



 覆面を外すアルナ。その美貌が露わになる。

その素顔を見た冒険者達が、アルナの美貌に見惚れている。



「それではカウンタ―の上にある水晶の上に手を置いてください」



 アルナは水晶の上に手をかざす。すると水晶が光り輝き始めた。

それをロミンダが読み取って用紙に書いていく。そして用紙をアルナに渡す。



「必要事項を書いてください。冒険者カードを発行いたします。後、スーラとウーラも冒険者カードを渡してください。多分、ランクアップされているはずですから」



 アルナは必要事項を書いてロミンダに用紙を返す。

そしてスーラとウーラは冒険者カードをロミンダに渡す。

ロミンダはカウンターから離れた場所へ移動して作業を始める。

しばらくするとロミンダが戻ってきた。


 銅色の冒険者カードをアルナに渡す。



「これが冒険者カードです。Fランク冒険者からのスタートになります。これから頑張ってください」


「ありがとう」



 ロミンダはウーラとスーラに冒険者カードを返す。冒険者カードの文字がFからEに変わっている。



「スーラ、ウーラ、二人ともランクアップおめでとうございます。今日からEランク冒険者です」


「ヤッタね……ウーラ。これで1つランクアップしたね。キースに追いつくのもすぐだ」


「そうね……スーラ、これからも頑張りましょう」



 ロミンダはまだ膨れた顔をしている。

しかし、少し頬を赤らめて、喜んでくれているようにも見える。



「キースさんも冒険者ですから、冒険することもあると思います。今回は別室はなしとします。これからも危険には気を付けて冒険を続けてくださいね」


「ああ……ありがとう。これからも危険には気を付けるよ」



 キースが素直にお礼を言うと、ロミンダは留飲が下がったのか、花が開いたように満面の笑顔を咲かせた。

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