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27話 卵の行方

 獣人の隠れ里に近付くワイバーン。

マルガはワイバーンを獣人の隠れ里へ着地させるつもりらしい。

そんなことをすれば、また問題が発生する可能性がある。



「マルガ、隠れ里へ降りるなら、ワイバーンはマズイ。俺とマルガだけで降りていく方法はないか?」


「なるほどな。ワイバーン達は攻撃し過ぎているからのう。わかった。我がキースを連れて飛ぼう」



 マルガは空中へ両手を広げて舞い上がると、キースの両腕に自分の両腕を絡ませ、二人で空を滑空する。

マルガは人の姿でも空を飛ぶことができるらしい。

キースはマルガに抱えられながら空を段々と降りて、獣人の隠れ里へ着地した。

するとそれを見ていた。双子、アルナ、リタがキースの近くまで歩んでくるが、マルガを警戒しているのか、剣を抜いている。



「スーラ、ウーラ、アルナ、リタ、もうワイバーンの攻撃はない。大丈夫だ」


「どういうこと? キースがワイバーンに連れ去られてから、すごく心配していたのよ」


「それは悪かった。俺は無事だ。赤竜を説得してきた。そして赤竜のマルガを連れて来たんだ」



 マルガが1歩前に出て、両手を広げて敵意がないことを示す。

それを見て4人も隠れ里の獣人達も剣を鞘に納めた。



「私が赤竜、マルガだ。私の卵を返してもらおう。そうすれば危害は加えないと約束する」



 里長のエメリヒが獣人達の輪の中から出て来た。



「私は獣人の隠れ里の里長をしているエメリヒと申す。私達は卵など赤竜様から取ってなどおりません」


「ワイバーン達が空から見ておったのだ。我の卵を盗んだ者達が、ここに逃げ込んでくるのを」



 マルガの言葉を聞いて驚くエメリヒ。

獣人達の間からも驚きの声があがった。



「誰か、獣人の隠れ里に、里の者以外が滞在していた可能性はないのか?」



 キースは大声でエメリヒを含む獣人達に質問する。

するとエメリヒの顔色が青くなった。



「思い当たるところがあるようだな。少し話をしてもらおうか」


「そういえば、ワイバーンから強襲を受ける前に、『シュトラウス』の幹部達が、獣人の隠れ里に滞在しておったのだ」


「『シュトラウス』の大幹部は何か言っていなかったか?」


「既に目標は遂げられたので、これでデリントンの街へ帰ると言って戻っていったが」



 目標が赤竜の卵だとすると、話が合致する。

『シュトラウス』の幹部達は全員Aランク冒険者、それぐらいのことはしてもおかしくない。

もし赤竜と交戦になったとしても、良い勝負ができると幹部達なら考えるだろう。

卵は『シュトラウス』の幹部達の手でデリントンの街へ運ばれた可能性がでてきた。



「赤竜の卵を『シュトラウス』の幹部達が盗んだ可能性がある。そしてデリントンの街へ戻った」


「何のために赤竜の卵など必要なんだ? 赤竜の怒うことを承知で卵を盗む必要が?」


「何に必要なのかはわからない。もしかすると闇商人に売るつもりだったかもしれないし、貴族に売りつけるつもりだったかもしれない。考えられる幅が広すぎて絞りこめない」



 卵を孵化させて、幼竜をティムするということも考えられる。



「何にしても我の卵を盗んだのは『シュトラウス』の幹部ということだな。それでは今からワイバーンに命令して、デリントンの街を廃墟にしてくれよう」



 赤竜の言葉を聞いて青ざめるキース。

赤竜は本気でデリントンの街を崩壊させようとしている。



「マルガ、デリントンの街を崩壊させることは止めてくれ。俺達がデリントンの街へ行って『シュトラウス』の幹部達に会って、真偽を確かめてくるから」


「真偽を確かめて何とする?」


「マルガの卵が『シュトラウス』の幹部達が持っていたなら、必ず取り返してくる。それまでマルガは待っていてくれ」


「それはできぬな。キースのことは信用したが、他の者達を我は信用していない。我にとって人族は敵に等しいのだぞ。そのことを理解しているのか? 我は魔獣だぞ!」



 確かに多くの冒険者達が魔獣を狩って生活している。

魔獣の側に立てば、人族は魔獣の敵ということになるのだろう。

しかし、それは魔獣達が森から出てきて、街を襲おうとするからだ。



「魔獣は人族を襲うし、人族もまた魔獣を狩る。 これは仕方ないことだ。そのことを我は理解している。だからこそ人族を信用できないのだ」


「それじゃあ、キースと私達だけでも信用してよ。キースのパーティメンバーの私達を」



 スーラがマルガに訴える。

マルガは双子、アルナ、リタの4人を観察するように目を細めた。



「それでは我はどうしていればいいというのだ? また火山でキース達が戻ってくるまで待てというのか。私がどれほど卵のことを心配しているか、お主達にはわからないであろう」


「火山で待つことが嫌なら、少しの間だけ獣人の隠れ里でいてくれてもいいぞ」


「こんな敵意ばかりの場所に長居できるはずがないだろう。我もデリントンの街へ行くぞ。異論は許さぬ」



 マルガはそう言ってキースのパーティの中へと入ってくる。

どうやら、マルガはキースのパーティと一緒にデリントンの街へ入ろうと考えているようだ。



「一緒に来てもいいが、マルガは絶対に人化の法を解除しないこと」


「わかった。人化の法を解除しなければよいのだな」


「それとワイバーンをデリントンの街の近くに出没させないこと。ワイバーンがデリントンの街の近くに現れたら、討伐対象になって、街の冒険者達が騒ぎ出すからな」


「わかった。ワイバーン達を連れていくこともやめよう」



 赤竜はデリントンの街へ一緒について来るつもりらしい。

これはキースも諦めるしかない。



「それではキース、私をデリントンの街へ連れていくのだ」


「わかった。デリントンの街へは連れて行こう。その前に腹ごしらえと、休憩をさせてくれないか。そうしなければ魔巣窟の森をぬってデリントンの街へ向かうことができない」



 赤竜との戦いで体力と精神力は回復しているが、疲労感は拭えない。



「それではキースが休憩を終えたら出発とするからな」


「ああ、そうしよう。今日中に魔巣窟の森へ入る。マルガ、俺が倒れている間、問題を起こすなよ」


「わかっておるわ」


「スーラ、ウーラ、アルナ、リタの四人はマルガの世話を頼む。エメリヒ達は獣人達に状況説明をしてくれ。それでは頼んだぞ」



 そう言って、キースは意識を失った。

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