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すっかりお昼を過ぎている。
「変な時間になりましたが、お昼休憩取ってください。えーっと、1時間です」
「そちら、使ってもいいですか?」
ダイニングを指さす。休憩室などとくにはないようなので。
「ええ、もちろんですが……」
社長が首をかしげる。
「お弁当なんで」
「お、お弁当!もちろん使ってください、あの、えっと、一緒に食べてもいいですか?僕もお弁当……」
「ええ、それはもちろん」
と返事をすると、社長が部屋を出て行った。
お弁当を取りに行ったのかな?先に食べていていいかな?
5分ほど待ったけれど、もどてこなかったから食べることにした。
「ただいま!」
「お帰りなさい。お先にいただいています」
社長は手にコンビニの袋を持っている。袋からコンビニ弁当をテーブルの上に置いた。
買いに行っていたのか。
「はい、これどうぞ」
社長が袋からプリンを取り出した。
「え?」
「プリンよりシュークリームがいいですか?」
と、ニコニコしてますが。
「福利厚生です」
……と、嬉しそうな顔をしている社長に水を差すのもなんですが……。
「社長、これ、福利厚生費で経費として認められないと思います……」
「なんで?」
「認められないこともないかもしれませんが、自由に飲んだり食べたりしていいよというものは普通の会社ではせいぜい給湯器や給茶機。コーヒーや紅茶になると、社員が個人的に用意することが多いです。会社によっては自動販売機が設置されたりもしますが、会社から補助として半額持つなどの福利厚生はあっても、無料で好きなだけということは少ないかと。食べ物に関しては、昨日のような歓迎会や新年会など年に何度かの名目のある特別な会の飲食費ならまだしも、毎日食べる食事までは出ないですね。補助費というのであればいいのですが。それから、会議中に出すお茶菓子程度、ランチミーティングとして行う食事の費用などは会議費として認められるとは思いますが……」
ぽかーんとして社長が私の話を聞いている。
「あの、私も専門じゃないので、そのあたり詳しくなくて、間違っているかもしませんが、何もかも福利厚生費にはできなかったというのは間違いないと思います」
社長が、袋から出したプリンとシュークリームをしょんぼりした顔で見ている。
「そうなんだ、あの……、じゃぁ、僕からの差し入れってことで……もらってもらえますか?あの、女性従業員にプレゼントするみたいなセクハラではないので……」
ふっ。
「ありがとうございます社長。福利厚生……それ以外のことは後で簡単に調べますが、詳しくは税理士さんに確認したほうがいいと思います」
「税理士?」
社長が首をかしげてしまった。あああ。今までどうしていたんだろう。そもそも商品の代金を金貨や宝石でもらっているとか、本当に、税金どうしてたんだろう。物々交換って、税金かからないのかな?今日みたいに日本円に換金して初めて収入になる?
「と、とにかく社長!一度税理士さんを探してお話ししてください。今後、その、福利厚生含め、給料だとか、そう、えっと、私って、年金どうなるんですか?厚生年金に加入してますか?」
社長が首を傾げた。
あああああっ!
「ほ、保険は?健康保険は?」
社長が首をかしげたままだ。
今までは社長とまりちゃんと家族経営みたいな状態だったから、誰も何も言わなかったのかな。
あ、ははは……。ははは……。おかしいな。会社を作る時にはいろいろあったと思うんだけど。もしかしてそのあたりまりちゃんなら知ってるのかな?
「わかりました。いろいろ調べて、必要な場所を回って勉強してきます。えっと、会社を作る時に相談した方いますか?現状どうなっているのかご存知かもしれませんので確認したいんですが」




