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一欠片の軌跡  作者: 皇 欠
二章~忘れられた出会い 新しい出会い~
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第十九話

更新遅くなりました。申し訳ありませんm( _ _ )m

私は校舎内で見つけた生徒一人を捕獲し、次の獲物を探す為に魔法を走らせて居場所を探る。私一人の魔力では大まかな当たりを付ける程度しか精度がないが今回は以外にも反応が強く返って来た。


「あと捕まえてないのは……厄介な奴が残ってるじゃない」


私は手元に開いたリストを見つめて呻く。印が付いてないのは辻村真、雪村由香梨、神代明菜、朝崎信の四人だった。


「委員長は弄り過ぎたせいで、実戦訓練時は若干暴走気味になるもんな~」


まぁ原因は私にないとは言い切れないからしょうがないか。腕時計で残りの時間を確かめまだ余裕がある事を確認する。


「さて、どんな策を弄してるのかしら」


私は頭の中で明菜がどんな策を施していても対処できるようにシュミレートしながら反応があった森へ足を向ける。今回は四人だし大胆な作戦組み立ててるかな。初っ端か亘を私にぶつけて逃げるほどだし、由香梨の力はまだ分からないけど、真の力の片鱗は放出された魔力だけで十分強い事は頭の切れる明菜だったら確実に気付いてるだろうし。意外性を突いて真と由香梨、信を前に置いて、後衛からのサポートをしてくるかしら。学生証の使い方くらいは教えるだろうから防御はできるはず盾役の可能性もあるわね。

いくつものパターンを浮かべては消しを繰り返していると私はいつの間にか森の入口まで辿り着いていた。


「負けてあげるのも優しさかもしれないけどそれは私のプライドが許さないから全力で潰してあげるよ」


愛刀〝清水〟を抜き気持ちを戦闘用に切り替える。準備を整えて森に足を踏み入れた瞬間、風を切る音を靡かせて私の肩目掛けて矢が飛んでくる。無意識の内に手が勝手に跳ね上がり真二つに叩っ切る。矢は空中に霧散するように光を散らしながら消えた。


「信による遠距離射撃、さっきのは確実に様子見の一撃なら次は更に強力なのが来るはず」


矢が飛んできた方向に全力で駆ける。魔法で軌道が曲げられている可能性があるが信はそういう器用な事が苦手だからおそらくないだろう。そう思考してる内に魔力の反応が大きくなった。私は対抗するべく凛と声を張り唱える。


【再生と生命を司る清き水よ

 我は仇なす愚か者を洗い流す水を欲す

 一雫 二雫 三雫 想いに力を宿して集い

 何者も逆らえぬ激流を生み出せ】


〝生命の奔流(フェス・マ・オーム)


私は手のひらに水球を留め、勢い良く振る。水球は私の眼前で弾け洪水もかくやという勢いで流れ信が放ったであろう矢とぶつかった。拮抗も一瞬、互いは互いを飲み込み喰らうようにして消える。

私はその横を通り大体当たりを付けた場所まで突き進む。そしていきなり視界が開け見晴らしのいい場所のほぼ中央に信が自分と同じかそれ以上の大きさの弓を携えて立っていた。信が口を開き詠う。


【我に集え 光の矢束よ

 百集まりて一となせ

 その矢災いを打ち消す破魔の矢なり

 その矢全てを砕く剛魔の矢なり

 我に仇なす者を射抜き貫き星屑となせ】


〝星が紡ぐ刹那の(フェル・ド・ルークス)


信が私に向けてではなく上空に向かって弓を引く。訝しみながらも足を止めずに進むがいきなり地面を踏む感触がなくなったと共に訪れる浮遊感。


「ん?」


結論だけ言うなら落とし穴に落ちた。


「古典的な罠仕掛けてんじゃないわよ!」


空中でバランスを取り着地に備える。だが頭上から先程よりも大きい魔力の反応、無事に着地を終え上を見ると狭くなった空を覆い尽くす矢の雨。さっきの詠唱はこれかと気付くのと目の前の事象をどう回避しようかという思考に至るのは同時だった。


「なめるなよ!」


右手に持った〝清水〟の宝玉に魔力を通しその姿を変化させる。刀身に蒼い線が走り蒼く色づいた水となる。気合い一閃裂帛の勢いを乗せて私は〝清水〟を上段から振り下ろす。


「喰らえ〝清水〟」


〝清水〟の刀身が伸び、幾重にも分かれ鞭のようにしなり矢を叩き落とす。落としきれなかった残りの矢を手首のわずかなスナップで枝分かれした鞭を全て制御し落としていく。神経を使う鞭の制御を何十回も繰り返してやっと全ての矢を叩き落とし終わった。安堵の息を吐きつつ私は穴から一足飛びに飛び出した。

後ろからバシュッと射出音が聞こえた。私は〝清水〟の刀身を薄い膜状に変え、覆う。膜の二か所に魔法の(ルークス)が命中し弾ける。


「真と由香梨か、戦力として劣る二人を奇襲要員として使ってきたか」


信がいつの間にか姿を消している。一度森に隠れたかそれとも……。


【光は闇 闇は光】


風に乗って詠唱が私の耳に届く。


「明菜の魔法!」

 

全身に気を張り巡らし辺りを注視し、森の中の一際高い所に立つ明菜を見つける。


【二つは一つ 表裏一体

 二つは交わらず 関わらず 共に存在を知らず

 全てを照らし出す光と 全てを飲み込む闇が出会いし時

 狭間に真っ白な無が生み出されん

 来よ 私の子供達(力) 全てを貪り狂え

 気の向くまま思うがまま暴れまわりて 喰らい尽くしなさい】


〝暴食の世界(イル・ン・アジェスティア)


私は魔法での対処は間に合わないと判断し、すぐさま森に走って逃げる。足元の地面が光を発し始める。更地いっぱいに広がる魔法陣。魔法陣の内にいるもの全て無情の光に晒し消し去る広域消去魔法。たった一人に使う魔法にしては大袈裟すぎる。私は〝清水〟を振って伸ばし木の枝に括り付けゴムの要領で縮め一気に森の中に離脱する。私が森に逃げ更地の方に目を向けた瞬間光が更に力を強め消えた。対象がいなかったため不発に終わったようだ。木の陰で荒くなった息を整えるのも束の間隠れている木の皮が弾けた。


「今日はちょっとハードだわ」


一つ嘆息し、もう一度更地の方に戻る。遮蔽物の多い森の中だと遠距離から撃たれてジリ貧になるのを見越しての行動だ。私を追うように由香梨と真、正面からは信と明菜が飛び出してきた。四方からの同時攻撃、戦術としては鬼ごっこの趣旨とは違うが有効なのは間違いない。私じゃなければきっと殺れていただろう。だけど、


「爪が甘いわ」


足に魔力を集中、そしてそれを体全体に広げ、動く!

四人には私が消えたようにしか見えなかっただろう。一瞬にして私は四人全員(ヽヽ)の後ろに移動し手刀を叩き込む。

手応えはあっただが腹に衝撃が走り、私はすぐに飛び退く。そこには回し蹴りを放った状態で止まる真の姿があった。他の三人はさっきの一撃で狙い通り昏倒しているようだ。


「良く防いだわね」


私の攻撃を防いで蹴りまで入れてくるとは思わなかった。

「消えたと思った時はさすがに焦ったけどさっき首を狙われたからもしかしてと思って保険を懸けておいたんだ」


首の後ろに小さい透明の壁、魔力により作られる障壁〝魔封壁(パールム)〟を展開していた。


「案外器用じゃない」

「委員長の教え方がうまかったからだよ」

「資質は十分ってことね。さて残りは真あんただけ、正々堂々一騎打ちと行こうじゃない」

「簡単に姿消せる奴のセリフじゃないよな」

「あら、あれは魔力で身体能力を強化しただけで魔法は関係ないわよ。私が習得してる流派の特殊歩法術。やろうと思えば真でも出来るようになるわよ。こんな風にね」


真の右後方に移動し、空いた手でタッチして決めようとするが、まるで予期していたように私目掛けて銃の引き金を引いた。咄嗟のとこで〝清水〟を跳ね上げ斬る。


「冗談。完璧に終わったと思ったのに」

「俺だけになったけど逃げ切ってやるよ」


真は両手で銃を握り銃口を向けてくる。


「ちなみにあんたで最後だから」

「鬼ごっこ始まってまだ三十分しか経ってないのに四十人近くいたクラスメイト全員捕まえたってのか……つくづく化物じゃないか」

「言うじゃない真。まぁ私に捕まってるようじゃ紗姫も助けられないだろうしね」


軽い挑発のつもりで放った言葉だったが、私は冷汗をかく破目に陥った。

放たれるのは殺気と魔力。皮膚が粟立つのを私は感じた。殺気を放たれる事は慣れてる筈なのにそれをも上回る純粋な殺気。殺気と共に放たれる黒く色づいた魔力が銃の中に吸収されていく。その膨大な量に世界が軋み悲鳴を上げる。


「俺は……紗姫を……助け……」


真が低く、呻くように口を開く。


「俺は必ず紗姫を……紗姫を助けてみせる!」


今回はどうやら意識を保っているようだがそれも危ういな。そう思ってる内に銃の前に黒い塊が現れる。


「そのためなら俺はどんな事でもしてやる!」


引き金を引いた。極限まで収束された魔力は銃の術式によって変換され莫大な破壊エネルギーとなって私を襲いにかかる。だが魔力は凄まじくとも私の脅威ではない。当たる直前に歩法を使い真の後ろに回り込む。砲撃はそのまま森を削り取り消滅させた。


「その心意気は良いけどまずはその感情に呑まれないようにしなさい。あなたが紗姫の事を大切に想っている事は十分に伝わったから。焦らずにここで学びなさい。私達も精一杯サポートしてあげるから」


そう言って軽くタッチする。そのわずかな力でも真は前のめりに倒れた。


「魔力の使いすぎね。いきなりだったけど頑張ったじゃない」


私は倒れる真の体を受け止め真の頭を撫でながら褒めてあげる。まぁ本人は気絶してるから分からないだろうけど。

ガサッと後ろで草を踏む音が聞こえ、こっちに向かって歩いてくるホタルとコウの姿があった。


「お疲れ様でした。みなさんは私達で運びますのでリンカさんは先に戻って少し休息を取ってください」

「ありがとう。そうさせてもらうわ」

「それでどうだった、二人は伸び代がありそうかい?」

「真の方は期待できそうだけど。由香梨の方はまだ分からないわね。魔力の保有量は高そうだけどうまく引き出せてないみたいだから」

「由香梨の方も心中穏やかには行かないだろうしね。紗姫の事と真の事その二つの事で葛藤してるんだろうね」


その意見には同意する。


「ですが人は何かを乗り越えた時、成し遂げた時、何か掛け替えのない物を手に入れる物です。由香梨さんには自分の力でそれを見つけて貰いたいですね」


ホタルが由香梨の隣に屈みこみその体を優しく持ち上げる。


「それじゃ二人共後は任せたわよ」

「あいよ」

真の体を抱え上げながらコウが威勢良く返した。

私は軽く体を伸ばしながら校舎の方に歩いていく。さて次はどうやって鍛えてあげようかしら。



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