第二十話
また時間が空いてしまいました。できるだけ時間は空けないように頑張りたいと思います。すいませんm( _ _ )m
目をゆっくりと億劫に感じながらも開く。目の前に広がったのは心配そうな顔をした由香梨だった。
「あっ起きた?」
由香梨がそうやって聞いてくる。その後ろには委員長と信の姿も見える。
「ああ……?」
体を起こそうとするが力が全く入らない。
「どうしたの?」
由香梨が困惑した表情を浮かべる。
「いや、体に力が入らないんだ。頭と体が別になったみたいに」
手を握ろうとしてもその命令が途中で止められているのかピクリとも動かない。
「どこか怪我したの!?」
「いや……そうじゃないと思うけど」
困惑してる俺達に委員長が説明してくれた。
「心配しなくてもいいわよ。魔力の使いすぎで体の中のバランスが崩れただけだから。しばらくしたら動くようになるよ」
その言葉に安心してリンカと対峙し、紗姫の事を言われた瞬間、体中から噴き出した俺の感情と共に心の中が虚ろになっていくのを感じていた。だがそれを不思議な事に怖いとかそんな事はなかった。きっとあの感覚が魔力を消費するということなんだろう。
「最初は感覚が掴めなくて結構やっちゃう物だからそこまで気にしなくていいよ。慣れていけば後どのくらい自分の中に魔力が残ってるのかも分かるようになるしね」
「なるほどな」
俺は体を動かそうとするのをやめ、全身を弛緩させリラックスする。
「所でリンカとか他のクラスの奴はどうしたんだ?」
「リンカはそこで休んでるよ」
俺の隣のカーテンで仕切られた方を指差した委員長は苦笑いを浮かべながら、
「一人で全員を捕まえたんだもん。疲れるのは当たり前でしょう。他の奴は反省文書かされてるわよ。私達は結構持ったから免除、安心して休んでていいわよ。この後普通に授業もあるし」
えっ、と由香梨が声を上げた。
「あんなハードな事した後に普通に授業もやるの?」
「ちゃんと高校の教育課程も終わらせるわよ。じゃないと向こうに戻った時困るでしょ。後、魔法の授業もあるよ」
「普通の高校よりもハードな気がするよ」
由香梨は弱音を吐いている。
「慣れればそうでもないよ。逆にかな~り濃い学校生活送れるもの」
「そのかわり結構命張ってる気がするがな……」
委員長の言葉は信の呟きによって危険度がアップした。
「それだけの事をしないと向こうに戻っても危ないだけって事よ」
シャとカーテンの開く音がし、ベッドに腰かけたリンカがこっちを見ていた。
「真、体の調子はどう? まだ動かないようだったらホタル呼んで治癒の魔法をかけてあげるけど」
もう一度手に力を込める。今度はゆっくりだが手は動いてくれる。それに体の感覚もちょっとは戻ってきているようだ。
「いや、大丈夫。徐々にだけど動くようになってきた」
「そっ。なら私は先に戻ってるから。あんた達は真が動くようになってから戻ってきなさい。最初にやる予定だった復習をするからね」
それだけ言ってリンカは出て行った。
「回復速すぎないか?」
「本人曰く『これくらい魔法使いだったら当然よ』だそうだよ」
「なろうとしてる俺が言う事じゃないかもしれないがつくづく化物だな魔法使いって」
「大丈夫、私も時々思う時があるからそれは正しい反応だよ。でもそれだけの力を持ってるリンカでも私達と同じくらいに、ううん私達以上に多くの悩みや苦しみを背負ってる。きっと何度も目を逸らしたくなるような現実を突きつけられて乗り越えてきたんだと思う。だから私は一人の教え子として、一人の友達として私はリンカの後ろを任せてもらえるくらい強くなりたいって思ってるの。真には紗姫さんの事ばかりじゃなく今ここにいる皆の事も考えられるくらいの気持ちを持ってもらいたいな」
俺と由香梨にそれぞれ視線を向け、優しい微笑を浮かべる委員長。
「まぁ今はまだこんな事言われても困るだけだよね。でも心の片隅にでも仕舞ってて。私の言ってる意味が分かる日はたぶんそう遠くはないと思うから」
そう言って委員長は由香梨に意味深な視線を送る。
由香梨はその視線を受け少し顔が赤くなったみたいだ。
「俺は……」
そこで一度言葉を切り、勢いを付けて体を起こし、真っ直ぐに委員長の瞳を見つめ返す。
「俺はまだ紗姫以外で戦う理由を見つけられない。だが俺がここで過ごすうちに俺の心が変化することを俺自身切に願ってる」
「うん、今はそれだけで十分だよ」
そこで委員長は口角をニュッと吊り上げ、笑みを不気味なものに変えて隣にいる由香梨に耳打ちする。
「由香梨、諦めちゃだめだよ」
委員長が何やら呟くと、由香梨は顔を伏せ、赤い顔で小さくコクと一つ頷いた。
「初心だね~由香梨は」
クスクスと笑う委員長を信が窘める。
「明菜いい加減にしろ。手加減を知らんのはお前の悪い癖だぞ」
「おっとついついやり過ぎちゃったみたいだね。ごめんなさい」
頭を下げる委員長。どうやら委員長には人を弄る癖があるようだ。弱みを握られないように気をつけなきゃな。
――――遅い気がしないわけでもないけど。
「さてさて気分を変えて、授業に行きましょうか。真の体も動かせる様になったみたいだしね」
「そうだな」
軽い委員長の言葉に従って俺はベッドから降り、節々を伸ばして調子を整える。まだちょっとした気だるさが残ってる感じがするが授業を受けるだけなら問題はないだろう。
「じゃあ二人共付いてきて、まだ校舎の中分からないでしょ」
委員長に続いて信も出て行く。廊下に出ると最初に入った木造校舎ではなくリノリウムの床にコンクリートの壁と今の校舎の造りをしていた。
「あれ? 何で違うの?」
由香梨も気付いたのかそう呟いている。
「ああ、俺達もよくは知らないが、リンカが言うには理事長の趣味だそうだ」
信もきっとそう思った事があるのだろう。それだけで由香梨が何を指して言ったのかすぐに察した。
「趣味って……」
「私達もちゃんと姿を見た事はないのよ。いつも放送で挨拶とか言うだけだし」
なるほど、この学校で一番謎の人物と言う事か気を付けないとな。
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