第2話 名前はまだない
「あなた、何を言っているのか、わかって言ってるんですか?」果歩が腰から外した銃を宇宙人に向ける。
その顔には嫌悪が混じっていた。
「やめときなよ。金属程度じゃ私を殺せないよ。」宇宙人は、銃を頭に向けられても、余裕の態度で椅子に座っている。
「撃てないとでも思ってるんですが?」少し怒りが入った声で果歩は言う。
「果歩さん。やめなさい!!」上司が叫ぶ。その声に反応して、果歩はゆっくり悔しそうに銃を降ろす。
「すみません。ただ教育がなっていないものでして。それでは少し聞いていいですか?」上司が堂々と相手に不快感を与えないように聞く。
「なんとなく呼ばれた理由はわかってる。デマだって思ってんだろ。死体がないんだからな。」
「…話が早くて助かるよ…」上司が苦虫を噛み潰したような顔で宇宙人を見ている。
「どういうことですか!全部ウソだったんですか!?宇宙人のことも、宇宙獣を殺したということも。」果歩が睨んだ顔で上司を見ている。
「わかったわかった言うよ。実はね僕はさ。デマだとしか思えないんだよ。10年前から続々と出てきた宇宙獣が今出るとも思わないし、それに拳で殺せるなんてフィクションの範囲だ。だから何かの宗教なんかと思ったけれど、そんなわけでもなかったし、あなたは一体何者何なんですか?」果歩はこの説明を聞いて納得がいく。たしかにそれだといろいろ納得がいくが一つ腑に落ちないところがある。
「じゃあなぜこの女性は嘘をつくんですか?」怒りと疑問が果歩の頭に浮かび上がっている。そして、女性が言葉を発した。
「さっき言っただろ。私は宇宙人だ。それは間違ってはいない。そして、私のことは名前で呼んでくれたまえ。」
上司は女性の返答違いの回答に頭を抱える。
「それでは、あなたの名前は何ですか?そして、宇宙人がこの星にどのような用があってきたのですか?」上司と果歩は女性の言葉に耳を傾けている。どのようなことを言われてもすぐに反応できるように、敏感になっている。
「私の名前は、んぢぇべらりぬだ。 やはりこの星の言葉だと言いにくいな。メシアとでも呼んでくれたまえ。それで来た理由ねぇ〜。説明が難しいな。」メシアが腕を組みどのように説明するか考えている。
「宇宙人にも、種類があるのもわかるか?」
メシアが問う。
「はい、わかりますよ。私たちを攻撃してきた星などはわかりませんが」果歩が腰の銃を手に持ちながら話を聞いている。もしもこの宇宙人が何かしてこようとしてもすぐに反応できるように。一挙手一投足を注視する。
「まあ、先にこの星で言うところの宇宙獣から、話そうか。あれは簡単にいえば不法投棄だよ。そして、私の星の生物たちはそれを倒すために活動しているんだよ。まあヒーローみたいなものさ。私は違うがね。」
さらにメシアが話す。
「私たちの星ではね、その不法投棄された宇宙獣たちを倒して、宇宙の平和を守っているんだよ。それが私は嫌でここまで逃げに来たんだ。」
「じゃあ、なぜ私たちの星を助けてくれなかったんですか?」上司の声が震えている。怒っているんだ。正義が私たちの星を助けなかったことに。
「遠すぎたんだよ。べつにその星の生物たちは神さまってわけじゃない。遠かったり広かったりしたら、助けられるものも助けられないだろ。だから助けれる範囲は絞っている。」果歩は我慢できなかった。遠いという理由だけで、救わなかったことに怒っていた。そして、果歩はメシアの胸ぐらをつかんで言う。
「じゃあ、なぜあなたはここに来たの!!」果歩の言葉が小さな部屋を包む。上司も果歩の怒りを見て、少し収まっていた。
「逃げたかったんだよ。どこでもいいからあの星から…それと、ここの星の食べ物がおいしかったからさ。」果歩はそのような理由に呆気にとられる。さらにメシアが続ける。
「私はさ、あの星ではおかしいやつ扱いだったんだよ。この星の人間のように欲があったり、あまり正義が好きじゃないんだ。」
果歩はこの宇宙人のことを思った。だがどんな気持ちなのかが分からない。憎悪?いや違う。嫌悪?それでもない。愛憎?論外だ。この宇宙人に愛など感じていない。この気持ちに名前なんてない。まだできてないんだ。こんな…こんな…
ドォォォン!!! 近くで爆発音がなった。この小さな会議室には似つかわしくないほどの爆発音だ。果歩は窓をのぞいた。
「宇宙獣…」果歩は血の気が引いた。あの宇宙人の話が本当だったとしてもなぜこんなにも早くまた現れる?
「宇宙獣はさ、侵略のために捨てられてるんだ。科学力を測るためだったり、そのまま生命体が死んでしまえば、その星を乗っ取ることができるんだ。だから送られてきている。それに、あんな獣、自分たちの星にだっていらないでしょ。」
「じゃあなぜこんなにも早く、送られてくる!最近来たのでも数十年前のことだぞ!」果歩がそう尋ねる。
「さあね。でもこれだけは言える。この星は狙われている。これからもまた来ることになることは確かでしょ。」果歩と上司は血の気が引いた。またあの絶望がこの星を襲うのか、そう考え終わる前にメシアが声を上げた。
「一つ約束してくれない?」そういって、メシアは上司を見る。
「私にさ、いろんなものを食べさせてくれない?この星を守るかわりに。」
「お前にこの星を守れるのか?人を、街を、」上司は言う。「わかった…応じよう…」メシアは笑った。そして、窓を空け、高いビルから落ちていった。
「契約成立ね。私はこの星を守るよ。」メシアは地面に着地して宇宙獣の目の前に立った。
宇宙獣は3m〜4mほどする虎であった。いや、虎のような生物であった。4足歩行で腰に巨大なヘビがいる。それに、尻尾にはサソリのような尻尾がついていた。神話に登場するキマイラという生物に似ていた。
対するは、身長は170cmほどもなく、白い髪を降ろしている、何の変哲もない美少女であった。
だが、決着は一瞬だった。いきなりメシアが空中にいた。地面にジャンプした跡がある。そして、いきなり宇宙獣の顔に蹴りを入れた。
その宇宙獣は顔の肉が剥がれ、骨がくだけ、目が取れた。即死だった。
メシアはその死体を持って、落ちてきた方向に投げた。多分返したのだろう。不法投棄した星に。
私たちはその光景をメシアが落ちて、壊れた窓から見ていた。メシアは終わったあと2人を見てピースをした。
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「こんなことでいいの?」果歩がメシアに聞きながらパキッという音でわりばしを割った。果歩の眼の前にはラーメンが置いてあった。
「いいの。いいの。私はこれだけで十分だからさ。」メシアがにこやかにしゃべりながら、ラーメンを啜っている。とてもおいしそうに食べるメシアに果歩は少し微笑む。メシアはそれに照れ、少し考え言った。
「今さ、私どんな気持ちかわかんなかった。この気持ちに名前なんてあるのかな?」メシアが不思議そうな気持ちで果歩に問う。
果歩が呆れた目でメシアを見る。(こいつ今恥ずかしいこと言ってるって自覚ねえのかな。)
「メシアさん。それは含羞って言うんですよ。あと思ったことあるんですけど、すぐに考えたことを表に出さないでください。」
その言葉を聞きメシアはがっくりしている。(さっきまで、宇宙獣を殺したなんて誰かに言っても誰も信じないでしょう。)果歩は静かにそう思う。
だが果歩も自分が考えていた気持ちが分からなかった。この宇宙人との会話をしている私がとても嘘みたいだ。なぜだろう。なぜなんだろう。
名前はまだ…出てくることはない。
感想お願いします。これから先の展開などが書いてあるとそれを参考にするかもしれません。




