013 AIによる大失業時代のコメリカに転移
投資の話がでてきますがあくまで小説でありフィクションです。投資は自己責任でお願いします。
アリタが丁寧に淹れてくれたコーヒーの香ばしい湯気を楽しみながら、僕はカップを少し傾けて口に含んだ。
「ふぅ……。さて、余剰資金の運用についてだけど……いきなり全額を投資に回すのは危険だし、まずは生活防衛資金が必要だと思うんだよね。二人はいったいどれくらいが妥当だと思う?」
僕が尋ねると、左手首のバングルから現れたジェミニが、空中を優雅に揺れながら人差し指を立てた。
『そうね。何が起きるか分からない異世界生活なんだから、急な出費や社会の急変に備えて、生活費の半年から1年分……だいたい3万ドルから4万ドル(約450万〜600万円)程度は、いつでも引き出せる形で確保しておくのが堅実じゃないかしら』
「左様でございます」
ソファの横に佇むアリタが綺麗にお辞儀をし、ジェミニの言葉に同意しながら付け加えた。
「生活防衛資金の規模としてはジェミニ様の試算で十分かと存じます。そしてその資金の置き場所ですが、ただ銀行の普通預金に預けておくのは勿体ございません。現在のコメリカの政策金利はインフレ抑制のために高水準を維持しております。そのため、短期の米国財務省短期証券(T-Bills)や高利回りMMFに資金の一部を置いておくのも、リスクゼロで年間5%近い利回りを確保できるため非常に合理的です」
「なるほどね」
二人の意見を聞いて、僕は深く頷いた。
「それじゃあ、生活防衛資金は現金とともに高利回りの国債やMMFで流動性を保ちながら運用しようか。いつでも引き出せて、しかもノーリスクで確実に利息がつくなら言うことなしだね」
僕が納得すると、ジェミニが『でしょ?』と得意気に胸を張った。
「じゃあ、その分が口座に貯まったら、少しリスクのある投資も始めようか」
僕はコーヒーカップをテーブルに置き、姿勢を正してジェミニのホログラムを見つめた。
「ジェミニ、AIがこれからさらに人間の職を奪っていくことを想定して、これから20年間のS&P 500とNasdaqの推移を想定してみてくれないかな」
『……20年間の株価指数の推移予測ね』
ジェミニは少し楽しそうに目を細め、ホログラムの指先をパチンと鳴らした。
『AIによる大規模な失業と、企業の生産性爆発が同時に起きる2027年以降のコメリカ市場……。面白いシミュレーションじゃない。超知性の全データ網を使って、これからの20年間の経済モデルを弾き出してあげるわ!』
バングルの光が怪しく明滅し、リビングの空中に青い立体グラフの幾何学モデルが浮かび上がり始めたのだった。




