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コウジマチサトルのダンジョン生活2  作者: 森野熊三
第十二話「コウジマチサトルは解決を望む」
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12・コウジマチサトルは○○したい

 目が覚めるとそこは見覚えのある天井だった。

 何度も世話になっているジスタ教の治療院の病室。傍には泣いたような怒ったような顔をしたアニスとルーの二人がいた。


「ルーは助けてもらった手前貴方を叱れないでしょうけどね、私は言わせてもらうわ」


 そう言ってアニスはサトルを睨みつけながら、説教交じりに何が起こったのかを話してくれた。


 まずサトルと一緒に黒妖精と戦っていた者達は、サトルを除いて全員無事だと言う事。むしろサトル以外は怪我らしい怪我もしていない。ニゲラが少々皮膚が赤くなる程度の火傷を負ったが、すぐに妖精が治したという。


「そうか……それなら、俺にとっては大勝利だ」


 一人も犠牲者が出なかったのならと、サトルが心底ほっとして言うと、ルーとアニスの二人は、ひどく怒った顔をしつつも、そうだろうと納得する。


「誰も死んでいないわ、貴方が死ななかったからよ」


「サトルさんが死んでたら、勝利じゃなかったですよ」


 サトルが意識を失った後、ニゲラがサトルを回収し黒妖精から離れた。

 黒妖精はサトルを、というよりもダンジョンの妖精を自分を倒すことのできる敵だと認識していたらしく、サトルが倒れた後に自分に纏わりついてきた大量のダンジョンの妖精に、それこそアーケードの入り口で見たモーさんのように、身をよじって逃れようとしていたらしい。


 サトルは、そう言えば全員連れてきてたんだよなと、倒れる前の自分の行動に苦笑する。

 ダンジョンの妖精たちは黒妖精に飲まれるとはいえ、それでも黒妖精が警戒するだけの理由があるはずだと思っていたので、すべての妖精をジャケットの内側に入れて連れ居たのだが、思ったよりも効果があったようだ。


 その後ニゲラとモーさんが時間を稼いでいる間に、応援のモーさんに号と三号が駆け付け、集合して巨大化したモーさんが黒妖精を押さえつけている間に、ニゲラがサトルが黒妖精の目に刺したナイフを使黒妖精にとどめを刺したという。

 ニゲラの火傷はその時の物で、黒妖精が倒れる際には必ず熱を発すると分かっていたので、断末魔の悲鳴の後は皆で座り込んだモーさんの陰に隠れてやり過ごしたのだとか。

 おかげで人間は皆無事だったが、墓地は惨憺たるありさまで、キャットニップは相当慌てていたらしい。


 一通り説明が終わると、アニスはいつになく鼻息荒くサトルに説教を始めた。


「もし彼女たちが貴方を助けようとしなかったら、どうなっていたのかわからないんですからね!」


 アニスはそう言って、サトルに反省を促すが、サトルは自分はそんなに割る事をしたと思っていないので、困惑気味にアニスに返す。


「妖精たちが俺を助けないはずが無いだろ、せっかく他所の場所からはるばる呼んできただろう人間が死んだからって、次をすぐに呼べるわけでもないし」


 それができるなら、下手な鉄砲も数を撃てば当たるだろうと、サトルより有能な人間が来るまで召喚を繰り返せばいいし、人海戦術でいくらでも人を呼んだ方が得だとサトルが答えれば、アニスは顔を赤くして本気で怒った。


「そういう問題じゃないでしょ!」


 アニスに続いてルーも目に涙をためて、サトルの無茶をなじる。


「そうですよ! 私たちはサトルさんにもっと自分を大事にしてほしいんです!」


「そうよ! 助けてもらえることはありがたいし、サトルでなければ駄目だったんだろうってのは話を聞けばわかったわ、でもね! それを踏まえたうえで私たちが言いたいのは、貴方ももっと自分のことを大事にしなさいよって話なの!」


「心配をする方の身にもなってください! 私にとってサトルさんは大事な人なんです! 貴方までいなくなったら私……私……」


「ちょっとサトル! ルーが泣いちゃったじゃない」


 交互に責められたかと思ったら、今度はルーが泣きだしアニスがルーを抱きしめながらのサトルへの抗議。サトルは勘弁してくれと頭を抱えた。




 べつに賞賛して欲しかったわけでもないし、名声が欲しかったわけでもない。ただ助けたいと思って行動したはずなのに、結局それで人に泣かれてしまった。

 ハッキリ言って理不尽だと思う。

 しかし、責める気持ちは痛いほどわかった。むしろ分かりすぎて誰かが必死になって何かを守るために傷つくくらいなら、自分が傷つきたいと思った結果が、今の自分の様な気がしないでもない。

 歪んだ英雄願望というか、誰かのために傷つくのは自分だけでいいと、呆れた思い上がりをしていたようだ。

 サトルは大きくため息を吐く。


 目の前にはルーが書いた黒妖精についてのレポートを読むローゼル。サトルは用意された椅子に座って、ローゼルがレポートを読み終わるのを待つ。

 いつもよりも考えることが億劫になっているサトルにとって、その時間はとてつもなく長く感じた。


「へえ、それでその傷跡なのかい」


 どの件を読んだのか、そう言ってローゼルはサトルの右腕に刻まれた、数列の縦に割いたような傷跡を見て嗤う。

 季節は初夏。少し歩くとすっかり汗ばむ陽気だ。サトルは別に傷跡など気にしなかったのでシャツの袖を捲っていたが、人から見るとそれなりに目立つ物だったらしい。

 自分の職場にはこれくらいよくいたけどな、と、ぼんやりとサトルは考える。


 どうも黒妖精戦後のサトルは、物を考える力が大きく低下しているようだった。

 理由として考えられるのは、失血によって脳にダメージを受けている可能性。もしくは体が完全には回復しきれていない可能性があるらしい。

 それともう一つ。アニスが言うには、普通の人間だったらモンスター化を起こしてもおかしくないほどの濃いダンジョンの悪素が体内に残っていたことから、その影響もあるかもしれないとの事。

 治療の方法は分からないが、とりあえず糖分を取っておくと多少はましになるので、最近サトルは朝からクッキーを食べるようにしている。

 バナナがあれば果糖がすぐに吸収できるので楽なのになとここ最近は思っていた。


 この思考がおぼつかないと言う後遺症に比べ得れば、男の腕の傷跡などあってないような物だと、サトルは考えていた。


「普通に動くんで、むしろ傷跡が無ければ怪我したことを忘れそうなほどなんですけどね」


 大したことではないのにと心底不思議そうにするサトルに、ローゼルは呆れたように返す。


「普通は忘れないだろう。手が取れかけたと書いて有る」


「まあ、俺の世界ではよくある事だったんで」


 ポロリと溢して、サトルは自分の失言に気が付く。

 しまったと天井を仰ぎ、呻くサトルに、ローゼルはそれはおかしなことだと問う。


「ほう、タチバナからはそんな事は聞いたことはなかったが? 手が取れるがよくある事ねえ……実は君、似たような別の世界の人間、という事はないかな?」


 サトルはどうしたものかと天井を見上げたまま答える。


「いえ、タチバナカオリは間違いなく俺の世界の人間で、どのような状況でこの世界に来たのかも全部わかってるんで、間違いなく俺の世界の人間ですよ」


 タチバナカオリが熊本に在住していたこと、崖崩れで家ごと土砂に飲まれ遺体が見つからなかったので、数年経ち死亡宣告がなされ死者として扱われていたことなどをサトルは知っていた。

 タチバナが自分の世界の人間だと言い切るサトルに、ローゼルは語るに落ちたなと苦笑する。


「君の世界に似た別の世界が存在していると、君は最初から知っていたのかな? タチバナですらこちらに来て初めて知ったと言っていたが……そう、前々から謎だったのだけど、ね、サトル……君気質ではないだろう?」


 サトルはもう一度ため息を吐く。

 今のは確かに失言だった。サトルがこの世界に来る前から「異界という存在を知っている」と言う事をばらしてしまった。

 頭がろくに働かない状態で、この人とやり合うのは無理なのかもしれないと、サトルは今の状態を悔やむ。


「一般的な会社ではないですが、一応民間人ですよ。知り得た情報は会社の機密なんでお話しできません」


 そもそも会社の話自体をしらばっくれればよかったのだろうが、サトルはまたしても余計なことを口走る。それをローゼルが逃すはずもない。


「どんな会社?」


 自白剤を飲まされた時以上に自分が物を喋りやすくなっていることに気が付き、サトルはどうにかしなくてはと頭を抱えて唸る。

 まさかこれが妖精の力を使い過ぎた場合のリスクだったりするのなら、今後クリスちゃんやパールちゃんの力を借りるのも難しくなるかもしれない。

 悩みに悩んで、サトルはとにかく自分の話でなければ、うっかり自分が喋ってしまう事も無いのではと思い至る。


「貴女が俺の質問に答えてくれるなら、答えるかどうか考えます」


 本当は今話を切り出すつもりはなかったのだが、自分が余計なことを言ってしまうことに比べれば、背に腹は代えられないと、サトルは別の話題を持ち出す。


 サトルが切り出す話題とやらに、ローゼルは乗ってくれるらしい。

 余裕しゃくしゃくの笑みだが、サトルとしてはそれが確実に引きつる事を分かっていた。


「おやおや、等価交換かい? 君すっかり商売人だねえ」


 商売人と揶揄されるのはどれを指し手だろうか。アマンド相手に取引を敷いている事か、それともタイムと一緒になって勇者考案と銘打ってニガヨモギのクッキーを販売している事か。

 どちらだとしても、ローゼルは自分を通さずサトルがしていると言うだけで、あまりいい気分ではないだろう。分かっていながらサトルは挑発をする。


「はは、商売やってる奴と友達になったもんで。ああついでに、アーケードにも貸しを作りましたよ。聖なる白い牛を助けた勇者、ってね」


 僅かにローゼルの笑みが凍る。


 聖なる白い牛は、アーケードにとって神の使いとして大切にされている存在であり、黒妖精は逆に悪魔の使いとされているらしい。

 その白い牛をキャットニップからの要請により、黒妖精から守ったサトルたちは、アーケードに恩を売った形になった。

 サトルに関する悪い噂がある事を聞いて、アーケードの顔役はその噂の払拭に手を貸してくれるとも言ってくれたので、サトルとしては思いもかけぬ収穫となった。


 しかし、ローゼルにとっては自分以外の権力や権威とサトルが繋がるのはあまり面白くはないだろう。


「……君、私と対立でもしたいのかい?」


 ローゼルの顔は笑みのままではあるが、サトルは細められた目が、瞳孔を開き獲物を狙う猫の目になっていることに気が付いていた。

 怒らせる、という程ではないが、苛つかせておいた方がこの先の話には向いているだろうと、サトルは口の端氏を持ち上げ返す。


「まさか? 貴女と対立したってメリットはない。それよりも話を続けませんか? 貴女が俺に聞きたい事と、俺が貴女に聞きたい事、それぞれこうごにといかけませんか?」


 ローゼルはわずかに考えるが、それでもまだ余裕があるのか、構わないよと答える。


「いいだろう。では、まずはどちらから?」


「俺が先でいいですか?」


「どうぞ」


 サトルもローゼルも表面だけは笑みのまま。

 サトルはいの一番に切り札を切った。


「あんた、ルーの母親だろ?」


 ローゼルは笑みを崩さず返す。


「何を言い出すかと思えば……はは、どこかにそんな物語でもあったかい?」


 それが質問でいいのならとサトルは返す。


「タチバナの手記の中にデッサンがあったんですよ、ルーを描いたデッサンが。そこの端にね……薔薇の愛し子って書いてあったんです。日本語でしたよ。ローゼルさんには読めない言語だ。薔薇ってのは俺たちの国でローズの事なんですよ、知ってましたか?」


 タチバナの手記を手当たり次第読み返していると、元々絵本作家という事もあり、頻繁にイラストやデッサンのような物が書かれていた。

 ほとんどはダンジョンについての物で、植物だったりモンスターだったり地形だったりと、多岐にわたっていたが、その中にタチバナの養い子たちのデッサンもあった。

 ダンジョンに関しての物には、他の人間が読むことも考えてか、この世界の言語での注釈がなされていたが、養い子たちのデッサンには、ほぼ日本語の注釈やタイトルが付けられていた。

 そこに薔薇という文字を見つけても最初サトルは特に気にしていなかったのだが、ローゼルが自らをローズと称したことから、もしやと思うようになっていた。


「それだけでは、ルーが私の子とは言えないのではないかな?」


 もちろんだとサトルは頷く。


「そうですね、最初は俺も薔薇と書かれているだけじゃ、ルーが貴女の子だとも思いませんでした。それにそのデッサンは白黒でしたし、何よりとても幼い、まだ乳児くらいの子供の絵でしたから」


 ローゼルは口元に組んだ手を当て、答えない。いつの間にか笑みは消えていた。


「けどルーはこの世界でも珍しい、三毛の毛並みを持っている。だから面影を探すまでもなく、間違いなくルーの絵であると分かりました。それと……その手記が書かれた場所は、ガランガルダンジョン下町ではないですよね? そ誰とは言わないが貴女が妊娠していた時期に、貴方を見かけた人がいる……ローゼルさん、ルーは貴方の従姉妹の家で産まれた子なんですよね?」


 ローゼルが子を産んでいる可能性があると、そうサトルに話したのはマロウだった。

 その当時マロウはガランガルダンジョン下町に移住するため、金を稼ぎながら旅をしている途中で、ある町でローゼルが妊娠している姿を見たのだという。

 当時マロウとその兄マーシュはローゼルとの面識はなかったが、臨月に近いのか腹が相当大きくなっていたローゼルを、たまたまマーシュが助けたことがあったそうだ。

 その時はまだマーシュは頭髪を蓄えていたこともあり、ローゼルの方は自分が転びそうになった時に助けてくれた相手がマーシュであるとは気が付かなっただろうが、人の顔を覚えることが得意だったマロウははっきりとおぼえていた。しかし再会してみれば、ローゼルにはまるで子供がいるという様子もなく、不思議に思っていたという。


 だがそれではバジリコが言っていた、ルーは自分の姪っ子かもしれない、と言いう話とは矛盾が生じる。

 それも気になりバジリコの親類を調べたところ、どうやらバジリコとローゼルは従兄弟という関係だったらしいことが分かった。

 バジリコはルーが自分と似た顔立ちである事と、産まれた場所で、たぶん自分の妹の子だと思っていたようだが、実は従姉妹の子供だったというわけだ。


 一通りの推理と情報を開示して、サトルはローゼルにもう一度問う。


「ルーは、貴女の娘、これに間違いはありませんよね?」


 ローゼルは明確には答えない、しかし顔を伏せくぐもった低い声でサトルへと返す。


「……私はね、あの子のためなら何でもするつもりだよ、君にこの気持ち、理解してくれとは言わないが、君を利用することを、今後も辞めるつもりは無いと、はっきり言わせてもらおう」


 その低い声には、普段のどこか人を小馬鹿にしたような余裕はなく、絶対に邪魔をさせる気は無いという強い決意が感じ取れた。

 だからこそ、サトルはすこしだけ安心して息を吐く。


 ローゼルの本心がルーを守る事、ルーの立場を支えることにあるのだとするなら、サトルとしては何ら問題も無かった。


「構いません。それ自体は俺の目的と一緒です。俺は助けを乞われたからダンジョンで起こってることを解決するし、ルーに恩があるから、それを返そうと思います。それで利用されるなら、問題はありません」


 あっけらかんと答えるサトルに、ローゼルは恨みがましく返す。


「だったらなぜ、黙って利用されてくれなかった?」


 隠しておきたかったことを暴き、言い逃れができないように証拠となり得る情報を突き付けた。ローゼルにとってはたまったものではなかっただろう。

 感情豊かな目や耳を持つ誰よりも感情を表さないローゼルでさえ、目がらんらんと輝き、耳の毛は怒りで逆立っているのが分かった。


「貴女が黙って俺を利用しようとしないからですよ。詮索されたくないことなんて、誰にだってあるでしょう?」


 そう返すサトルに、今度はローゼルの方が頭を抱えるように項垂れた。


「……とんだ藪蛇だった」


 つつかなければよかったと、そう呟く声は、しかしどこかスッキリしているようにも聞こえた。

 サトルはふっと、大様の耳はロバの耳という童話を思い出す。

 秘密を知ってしまった理容師が、自分の命がかかっていると分かっていてもどうしてもどこかに吐き出したいと思ってしまう程、秘密というものは抱えているのが困難なものだ。

 それはローゼルにとってもそうだったのかもしれない。


 大切な人を守るため、ずっと秘密を抱え続けることはきっと苦しい事だっただろう。

 共有してくれる人間がいなければ、きっとローゼルはとっくに折れていたのかもしれない。


 なぜルーに秘密にしたいと思っているのかはわからないが、そこまで詮索をすれば、今度はサトルの方がぶしつけになるだろう。

 サトルは今回に限っては、ローゼルを負かしたいと思ったわけでは無かった。


 秘密の共有と言えばと、サトルは今日ローゼルとしたかったもう一つの話を思い出す。


「分かっていただけたら結構です……ああそれと貴女に頼みがあるんですよね」


 にこりと微笑むサトルに、秘密を握られた側に立ったローゼルは、力なくそれは何かと尋ねる。


「ルーに、家族を返してやってください」




 本当はもっとうまい使い方があったかもしれないんだけどな、そう思いながら、サトルはルーの家、ガランガル屋敷へと帰って来た。


「ただいま……良かった、皆いるな」


 帰宅の挨拶をリビングに向けてすれば、ガランガル屋敷に住む冒険者たちはもちろん、ニゲラもルーも揃っていた。

 そして、サトルが呼んでいた三人もまた、その場にいた。

 サトルは緊張の面持ちで言葉を待つ面々に向け、笑顔で報告をする。


「上手く行った。ローゼルさんに、三人がガランガル屋敷に戻る事を認めさせたよ」


 とたんリビング中から溢れる歓声。


「本当ですか! サトルさん!」


「すごい! どんな手を使ったのよサトル!」


「よくやったサトル殿!」


「信じられない……本当に良いのですか?」


「よかったじゃない、ビビ、リズ」


「まあ僕は、サトルのこと信じてたけどー」


「リズ涙目になってるよ?」


 口々に喜びと歓喜の声を上げる面々を見ながら、サトルは満足げに頷く。

 こうやって喜んでもらえるのなら、骨を折った甲斐もあったというものだ。


 勇者という大きな名声よりも、何だかんだ、こうした身近な人間の喜びの声の方が、サトルにとっては嬉しい物だった。


 喜ぶルーたちを眩しそうに眺めるサトルに、ニゲラがそっと近づくと、他の者に聞こえないほどの小声でサトルに礼を言う。


「お疲れ様です、父さん……ありがとうございます」


 それがどのことに対しての礼なのか、サトルはあえて聞かなかった。

 代わりにサトルは、ニゲラの髪をかき混ぜるように、くしゃりと頭を撫でた。


長々とお付き合いいただきありがとうございました。

拙作ではありますが、最後まで各モチベーションを維持できたのは、読んでくださった皆様のおかげだと思います。

今回の話は時事的なこともあり、書いている途中何度か筆を置きそうになりましたが、予定を変えつつ何とか最後まで書きあげることが出来ました。

麹町聡さんの異世界生活はまだしばらく続きます。

次のお話が何時になるかはまだ未定ですが、また読んでいただけたらなと思います。

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