模擬戦−1試合目 旭vsレーナ−
バイトとパートで疲れていたのか、書きあがったのはバイトに行く10分前でした……。
今回はレーナ戦。
『旭君が無言で四神とハーデスを召喚したが……彼ら曰く演出らしいので、気にしない様に!!それでは……模擬戦1試合目を開始する!!』
ギルドマスターが高らかに宣言した。
俺が無言で召喚したハーデスと四神についての補足説明をしてくれるとは思わなかったが。
ちなみにゼウスを召喚しなかった理由は……すぐにわかると思う。
「パパ……。初手はこっちから行くよ?顕現して……【全知全能の神】!!それと……【眷属召喚:ハイエンジェル】!!」
『『召喚に馳せ参じました……主…………!?』』
レーナに召喚されたゼウスとハイエンジェルは、俺を見て驚愕の表情を浮かべている。
召喚されて対面にいるのは、本来のご主人である俺。
周りはコロシアムみたいな場所で、俺とレーナが向かい合っている。
なぜか四隅に配置されている四神と、いつのまにかギルドマスターと隣で机に座っているハーデス。
この状況を見てわかることは……ただ一つ。
『主……ついにレーナ嬢を怒らせてしまったのですかな……!?』
「いや、まて。その解釈はおかしいだろ。これは俺とレーナの模擬戦だ」
ゼウスは見当違いの解釈をしていた。
……大体俺がレーナを怒らせたとしても、こんな決闘みたいな状況にはならないだろうに。
というか……ハイエンジェルの数多くない?
少なく見積もっても200体はいる気がする。
「ゼウスさん。パパの言う通り、これは模擬戦だよ。……でも、本気で行くと決めてるから。わたしの魔法の準備が完了するまで……パパの相手をお願い。……来て、【ユニコーン】!」
レーナはユニコーンを召喚し、上空へ避難していった。
ゼウスとハイエンジェルを召喚した際に、【狂愛】を使用していなかったから魔力を回復させにいったのだろう。
『さて、レーナ君は【全知全能の神】であるゼウスとその上級眷属のハイエンジェルを召喚して、空中に避難しました。ここからは解説役として【冥府の神】であるハーデスに参加してもらおうと思う。この行動についてはどう思いますか?』
『ナチュラルに呼び捨てにしてきたな……。まぁいいが。レーナ嬢は本人の希望もあって、契約していなくてもゼウスとその眷属を召喚できる。ただ、バフスキルの【狂愛】を使用する前に召喚してしまったのは……痛いミスだな。魔力がだいぶ減ってしまったんじゃないか?ゼウスの呼び出しに加えてハイエンジェルを300体呼び出しているというのは……普通のエルフなら絶対にできないだろう』
俺が思ったことをほとんどそのままにハーデスが解説する。
というか、素の状態でハイエンジェルを300体も召喚できる様になるとは……成長したな。
『ご主人、状況は理解しました。ご主人に勝てるとは到底思えませぬが……レーナ嬢の為にも全力で挑ませてもらいますぞ。ハイエンジェル達よ!いつまでも呆けている場合ではない!レーナ嬢の準備が終わるまで……気を引き締めてかかれぃ!!』
『『『『はい、ゼウス様!!!』』』』
ゼウスの言葉にハイエンジェル達は【断罪の聖剣】を構えた。
後衛組は【銀翼の聖弾】をいつでも放てる様に準備している様だ。
どうやらゼウスを前衛として、絶え間なく俺に攻撃するつもりらしい。
「ふむ……。召喚魔法は禁止されたが……分身は構わないよな?【嫉妬】と【狂愛】、【紅き鎧】を使用。……【魔力b「【神々の黄昏】!!!」ぬぉぉぉぉ!?」
俺がゼウス達の相手をどうするか考えていたら、真上からレーナが放った魔法が降り注いできた。
神々の炎を模した魔法は膨大な熱量を放出しながら、俺を飲み込もうと迫ってくる。
炎に対して【聖域】を展開することも頭の中によぎったが……それは危険だとアラートが鳴った。
俺は急いで回避行動をとり、真上にいるレーナを見上げる。
「【聖域】を展開してくれていれば……【防御貫通】でご褒美がもらえたのに……。それはそうと、パパ?……悠長に準備はさせないからね?パパ相手に真っ向から挑んでも勝てないのは明白。……なら、乱戦状態に持ち込んでパパを狙い撃ちすればいいと思うんだ!……ご褒美は絶対にゆずらないんだから ……っ!!」
上空では【狂愛】を発動させたレーナがケタケタと笑っていた。
頭の中で危険だと判断したのは正しかった様だ。
俺が【聖域】を展開していたら、【防御貫通】の効果で模擬戦が終了してしまうところだった。
レーナは上空で【狂愛】を発動させたらしく、魔力はもう回復しているらしい。
……となると、言葉に出して魔法を唱えるのは危険か。
「……いい戦略だ。流石にゼウスとハイエンジェルを相手にしながら、レーナの魔法を避け続けるのは難しいだろう……。だが……」
俺は内心で【紅き鎧】と【魔力分身】を発動させる。
分身の数は……ハイエンジェルの半分の150で十分だろう。
俺の無詠唱での魔法の発動に伴い、コロシアムに真っ赤に光った分身が出現する。
「それは普通の人間なら……の場合だ。俺も今回はなるべく本気で行くと決めたからな。今、マウント取りに行くから……覚悟しておけよ?」
『ハイエンジェル!主が前に出るぞ!陣形を崩すな!身体能力も強化しておけ!』
『は、はい!!』
俺の言葉にゼウスとハイエンジェルが戦慄した。
これから何をするのか分かったのだろう。
ゼウスは170cmまで縮めていた身長を4mくらいまで大きくする。
巨人と戦うのは……何気に初めてかもしれないな。
「……このスピードについてこれるか?じゃあ……いくぞ……ッ!」
俺は分身にハイエンジェルを標的とする様に命令を出して、本体である俺自身もゼウスに向かっていく。
敏捷を強化した状態で全力で飛び出すとどうなるか。
答えは……人間弾道ミサイル状態になる……だ。
赤い一筋の光がハイエンジェル達に向かって突撃していく。
『クッ……!!主のスピードが速すぎる!!!』
『【断罪の聖剣】で分身の動きを誘発しろ!!!そこに【銀翼の聖弾】を打ち込め!!』
『ただ突っ込んでくるだけなのに、これほどの威力とは……!!』
「あ……あわわわ。これじゃあ、パパを狙い撃ちするなんてできない……!」
ハイエンジェル達の慌てた声がコロシアムに響き渡る。
分身達の突撃に対して、【断罪の聖剣】で軌道をそらしているみたいだが……その使い方はどうなんだ?
俺じゃなかったら剣に触れた時点で消滅してしまうぞ?
まぁ、分身は【聖域】を展開しているから数が減るということはないだろうけど。
レーナはレーナで、乱戦状態の分身を狙い撃ちできないみたいだ。
元々あの娘は、素早い敵に魔法を当てるのが苦手というのもあるかもしれないが……。
俺は嫁達の能力をある程度把握している。
長所と短所を見極めて動けば、負けるということはないはずだ。
「ゼウス。ハイエンジェル達は分身で行動を制限させてもらった。本体である俺は……お前とタイマンで勝負しようじゃないか。……その体格のままでいいのか?後悔しても知らないぞ?」
『主が言いたいこともわかりますぞ。しかし……これは実力を見せるための模擬戦なのでしょう?ならば、今の我の体格の方が都合が良いのではないですかな?』
「まぁ、そうしてくれるとありがたいのは確かにあるけどな……。まぁ、今はその言葉に甘えさせてもらうとしよう。お手柔らかに頼む」
『それはむしろ我のセリフなのですが……。では、行きますぞ。ヌゥゥゥゥゥン!!!』
ゼウスが叫び、その体格差からは想像できない素早い拳が俺を襲う。
あの巨体でここまで速いのは……恐怖でしかない。
俺は残像を残しつつ、ゼウスの拳を躱す。
『さすが主……。この拳すら容易く躱しますか……』
「いやいや、結構ギリギリだったぞ?……っと、危ない危ない」
「えぇ……。避けた瞬間を狙って魔法を放ったのに……あれも避けるの……!?」
ゼウスの攻撃を躱した瞬間に、上空から【太陽光照射】が襲いかかってきた。
レーナは小声で魔法を発動したみたいだが……上空にも気を使っているから意味はないんだよなぁ。
油断しているレーナに内心呆れつつ、俺はゼウスに攻撃を再開する。
「さて……と。ゼウスを相手にする場合は油断できないからな。これで終わりにさせてもらうぞ?」
『主。女神と同じ低階級といえども、我も全知全能を司る神。さすがに一回の攻撃で倒れてしまうことなd……』
俺は無言で【時間遅延】を使用した。
魔法が発動したことにより、周囲の時間が止まる。
ルミアとソフィア以外には使用するつもりはなかったが……ゼウス相手なら問題はないだろう。
「さて……ゼウスを一発で送還させるなら神霊魔法か禁忌魔法が一番効果的なんだが……。これは模擬戦なんだよなぁ……。せっかくだから自分の拳を信じてみるか」
俺はそう言って、バフスキルを展開していく。
だが、悠長に構えていると対策を取られてしまうだろう。
……よし、魔力を両手に集めるとしよう……!
俺は魔力を込めた拳をゼウスに打ち込んでいく。
そんなに力強く打ち込んだりはしない。
だが……【時間遅延】を解除すれば……。
『……どありませんぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』
俺が【時間遅延】を解除した瞬間、ゼウスの大きな体は吹っ飛んでいった。
時間の流れが動き出すことにより、蓄積されたダメージが解放される。
そのダメージは巨体であるゼウスの体を吹き飛ばすには……十分過ぎた様だ。
『……ゲホッ。主……どれだけの力を込めたのですか……』
立ち上がったゼウスが光の粒子になりながら呟いた。
俺はゼウスの近くに行き、実際に込めた魔力をみせる。
「いや、これしか魔力を込めていないぞ?【時間遅延】を使ったからダメージが倍になったんだろう」
『その膨大な魔力を込めた拳で……?主……もはやその拳は兵器です……ぞ……?しかし……時間は稼がせてもらいました……故……』
ゼウスはそう言って送還されていった。
そんなに魔力を込めたつもりはなかったんだけどなぁ……。
『キャアァァァァァァ!!女の子がッ!!』
そんなことを考えていたら観客席の方から悲鳴が聞こえてきた。
俺はバッと上を見上げる。
そこにはユニコーンの上でバランスを崩してしまったレーナが落下していくところが見えた。
「……レーナッッ!!!」
俺は急いでレーナのところへ向かう。
……【身体強化】の適用を開始……各種バフスキルを全開にして……間に合えッ!!!
「レーナ!待ってろ!今助けるからな!!!」
レーナはかなり上空まで避難していたらしく、まだその姿は見えない。
だが、そのまま落下したら……命が落としてしまうほどのダメージを負ってしまう。
俺は逸る気持ちを抑えて、上空に飛び出した。
風圧が邪魔をしてくるので【聖域】を展開する。
音速を超えた俺は数分もしないうちにレーナを抱きしめることができた。
そのまま地上に降下していく。
「……レーナ、大丈夫か?バランスを崩すほど……魔力を使ったのか……?」
地上を見ると俺の召喚した分身とハイエンジェルが消滅している。
どうやら俺がゼウスを攻撃している間に大規模な魔法を使用した様だ。
……音が聞こえなかったのが気になるところではあるが。
分身と意識共有していなかったのが悔やまれる。
「…………パパ」
レーナは下を向いたまま、俺の名前を呼んだ。
表情は見えないが、言葉は硬い……かの様に思われた。
パッと顔を上げたレーナは勝ち誇った表情を浮かべている。
「……この勝負わたしの勝ちだよ!【防御貫通】を付与して……【狂愛ノ束縛】!!!」
「……え?……えぇ!?」
ーーーーパリィィィン。
油断していた俺はレーナの魔法をもろに食らってしまった。
どうやら空中でバランスを崩して落下したのは……作戦のうちだったらしい。
自分が危ない目にあえば、絶対に助けてくれる……そんな俺の心理を突いた作戦だった。
「……これはしてやられたな……。でも心配するからもうこんな危険なことはしないでくれよ?」
「はーい。……パパ、騙す様なことをしてごめんね?」
俺にかけていた【狂愛ノ束縛】を解除したレーナは俺に抱きついてきた。
そんな上目遣いで見られたら……怒るにも怒れないじゃないか……。
……これも作戦の一つなのかもしれないが……。
『おっと!!旭君の【聖域】が破られた!!この模擬戦の勝者は……レーナ君だ!!!』
ギルドマスターが興奮した様にレーナの勝利を告げた。
俺の耳には会場の湧き上がる様な歓声が聞こえてきている。
まぁ、油断した俺が悪いな。
素直に負けを認めようじゃないか。
「えへへ……。やったね!!」
レーナは俺に向かって満面の笑みを浮かべながら、己の勝利を喜んだ。
……うん、見事な作戦だった。
俺は喜ぶレーナを抱き上げつつ、控室に戻るのだった。
次はリーア戦か……。
レーナとは攻撃手段が違うが、今回の様に油断しない様にしないとな……。
レーナの勝利で終わりました。
分身も【聖域】を展開していましたが、あくまで旭本体の【聖域】を突破することが条件です。
ちなみに誰がご褒美をもらえるのかは……決まっていたりします。
次はリーア編。
例の人物が出るかどうかも……併せてお楽しみに。
次回の更新は5/16or5/17の予定です




