最終話「さらば忌まわしき紺色の、旅立つ世界の白色へ その4」
「ほら私の言った通り、彼なら受け入れてくれるって言ったでしょう?」
「おあー、これは飲み会の名目は、スカーレットのお祝い会だな☆」
いつからそこに居たのか、病室の入り口から顔が二つ覗いていた。妙にしたり顔のシェーヌとにやけ顏全開のエクセル。
「オアアア!! あなたたちいつからそこに居たの゛よ゛お゛ぉぉぉ!?」
「うわ! スカーレットさんがまた泣いた! シェーヌさん達なに覗いてるんですかァ!」
「で、出た〜www病室でリア充奴〜www」
「リア充奴〜☆」
これが殺意というやつか。スカーレットとトシマは思った。
「じゃ、私たちはもう行くから」
「ドアは閉めとくから、後はお楽しみだね(はぁと」
「ま、待って下さいよ、俺も行きますって!」
慌ててシェーヌとエクセルの後を追うトシマ、前のめりになり転びそうになったが立て直し、振り向いた。
「俺、また来ますから、じゃ!」
「待ってるわ……ふふ」
軽く手を振り、トシマを見送る。その手はプルプルと震えていて、逆の手でそれをぎゅっと抑えた。ふと、横を見れば、窓から覗く景色の外は快晴だった。
「眩しい……」
そして、ゆっくりと目を瞑って、その表情は安らかだった。笑みと喜びの顔のまま、そして……眠りに落ちた。
「(トシマ……シェーヌ、ノドカ、ジャント、レイジ……あなた達と出会えた事は私の人生の誇りよ、この上ないったら……独りの私を助けてくれてありがとう、トシマ)」
病院より外、噴水と腰掛ける椅子、周りには住宅街。町の公園広場にアリシアはてくてく歩いていた。
「アリシアー! 俺だー!」
「アリシアー! 私だー!」
「なんだお前らそのノリ!」
ジャントとウツリが全速力で迫り、ノドカは一歩引いてついていく。エクセルをガレン達のところへ見送ったシェーヌとトシマも、その後を付いていく。
「あぁ、みんな」
アリシアは振り返り、皆の顔を見て、ほほ笑んだ。
「どーこ行ってたんだよアリシアっ! 辛気臭いじゃあねーか1人で消えちまうなんてよ、ビビったぜお前が消えたときは」
「そーですよ、あの時あの瞬間の冒険を共有できる人は少ないってなもんですよ、ね、ノドカ」
「あぁ、失ったものの価値を語りだせば無限大だが……あの時芽生えた俺たちの絆はかけがえの無い物だ、ところでアリシア、これからどこに行くんだ?」
「レイジに会いに行くの、待ってるみたいだから」
ジャント達に追いついたシェーヌとトシマ。アリシアの姿を見るや否や驚くわ喜ぶわ。
「おー! アリシアさんだっ、なんか雰囲気変わりましたね、羽根が見えませんけど……収納できる仕組みだったんですか? 髪もすっげぇ伸びてるっとにかく良かったー!」
「ははトシマはしゃぎ過ぎよっ、ところでレイジの奴も生きてたってワケ? ったくあんたら揃って辛気臭いわねー、顔くらい見せたらどうよ、もー」
シェーヌはアリシアの頭を軽く撫で、優しい笑顔でアリシアの無事に安堵した。皆がアリシアの無事を喜んだ。
「レイジの野郎に次会ったら、水クセェ奴だって伝えまくってやるぜ、アリシア急いでるんだっけか? じゃあまたな!」
「ええ……レイジ、お腹を空かせているはずだから、みんなありがとう、さようなら」
アリシアは軽くお辞儀をして、回れ右したのち、てくてくと歩いて行った。その風になびく金の長髪をノドカは見つめた。
「……あれはほんとに……アリシアなのだろうか」
「あ。アリシアさんに見惚れてる〜、ノドカ、アリシアさんがポニーテールやめてロングになったからか? 私も長髪にしたほうがいいか?」
「いや、ウツリはそのままで」
「ありがと!」
松葉杖をつき、振り返りみんなの方を見てノドカは軽く鼻で息を吸って、皆に伝える。
「じゃあ、俺たちはもう行くよ、派遣の冒険者の俺たちだったが、君たちが困ってる時はいつでもどこでも駆けつけるつもりだ」
「うんっ、私たちは能力者の味方だからさ、ぜったいぜーったい駆けつける! ジャントさん、またね!」
「おう、ノドカもな、派遣もくそもねぇ、お前らも俺たちのかけがえの無い味方だからな」
「困ったらいくらでも頼りなさいよ? ノドカ、とくにあんたはどー見ても不器用なんだから、ウツリ泣かせんじゃないわよ?」
「ノドカ! 俺さいしょノドカのこと取っ付きにくい奴だと思ってたけど、ノドカは誰よりも熱い奴だったよ、ずぇーったいまた会おうな!」
「あぁ」
そう言って、二人は街の出口へと歩いて行った。それを見送りながら、トシマは口を開く。
「さ、て、と……じゃ俺も行こうかな、ガレンとソニアさん達に追いつかないと」
「あっれー? 病院に戻らなくていいのかなァ〜? トシマくぅん?」
「あ? シェーヌなんだよ急に、トシマと病院になんの関係があんだよ」
「は? 気付きなさいよ、トシマとスカーレットがくっついてんのよ」
「はぁぁぁ!? うそこけなんでトシマとくっついてんだよっ! 俺ですらフラグ相手いねーんだぞ!」
「ちょっと二人ともやかましいですよ! スカーレットさんにはきちんとお別れを行ってきましたから戻りません!」
ジャントはトシマの肩を軽く拳でドンと押した。トシマが見上げた時、ジャントの顔は兄貴かのような大らかにこやかな表情だった。
「俺にも女分けろ」
セリフは屑だった。即シェーヌにひっぱたかれた。
「このポンコツは抑えておくから、またねトシマ。次に会える時を楽しみにしてるわよ」
「はい! 敵なんか居ない、平和な時にまた会えることを願ってます!」
深く頭を下げ、トシマは早足でガレン達の後を追いかけていった。
「てめえっいつまで抑えてんだよっ!」
「ふん、さて……私たちも行きましょうか、私も忙しいしさ」
くしゃくしゃになった髪を整えながら、襟を直すジャント。
「そうだなー、エルスの故郷に行くんだろ?」
「うん、結構歩くけどね、あんたも来るかい」
「いや、プロトスが別のとこ行きてェってさ、雪原とかが良いってよ、て誘われんの2回目だな」
「ふーん、断られるの2回目よ。相変わらずあんたらしいわね……」
シェーヌは病院の入り口に置いておいた、車輪のついた大きな、紐の付いた箱を引っ張り歩き出す。
「棺桶買った」
「なに自慢気なんだよ縁起でもねぇな、中にはエルスが居るんだろ?」
ジャントは棺桶にそっと触り、緑色の光が放たれた。
「俺からの弔いだ、エルス。シェーヌはお前のために頑張ってるぜ」
鬼神色の緑。植物がいくつか棺桶から生え、そしていくつか花が咲いたのだ。ジャントからの弔い、それは花による装飾だった。
「ありがとう、ジャント」
「気にすんなよ、あと、転ぶなよ」
「ふん、分かってるわよ、じゃあね」
照れ笑いして見せつつ、熱くなる目頭を隠しながら、シェーヌは棺桶を引いて町から出て行った。この町に残るはジャントのみとなった。
おもむろに懐からプロトス剣を抜き取った。
「さてと……じゃあ次はどこを冒険するか! プロトスよォ!」
そして高く剣を掲げる。夕日に照らされ輝く剣は太陽のようだった。
彼らの冒険は幕を閉じる。強大な悪を打ち倒したという確かな冒険は、彼らの中で伝説として名を馳せるのであろう。
突風のように訪れた戦いの伝説は、確かにこの世に存在する……冒険譚。そして、彼らの冒険はこの世界が存在してる限り終わることもあるまい。
戦争は終わり、プロトス以外のオーパーツは全て地下深くに封印され世界の危機は去ったのだ。五つの方向へ走る幾多の色で連なる冒険の数々は、闇の紺に負けることなく、羽ばたく未来という白色へと向かうのだろう。
「レイジ……ここを覚えてる? あなたと私が初めて出会った場所、人でも魔物でもない、その中間だった私はこの森でひっそり暮らしてた」
「……」
「他にも妖精の仲間も居たの、氷の妖精と電気の妖精……死んじゃったけどね、炎を使える私だけが生き残った。でもあなたに出会えたから寂しくはないの」
アリシアはレイジの頬をゆっくりと撫でて、大きなため息を吐いた。
「ここが良いのよね、レイジ」
レイジの顔色は真っ白に染まり、ぴくりとも動いてはいなかった。アリシアは、レイジの眠る場所を探していたのだろう。その言葉とともに、火炎でくり抜いた大穴にレイジを降ろし、別れを告げた。
「でも私、諦めない。この世界にはどんな能力もあるっていうなら、またレイジと会う方法もある」
アリシアはくるりと振り返って森の道を飛んでいく、彼女の冒険はまた始まったのだ。この異能だらけの世界なら、自分が望む真実に必ずたどり着けるはず。彼女の表情は希望に満ち溢れていた。
26つのオーパーツと異能戦争……完
最終話までご覧頂き、本当にありがとうございました!




